64節 感が引き留めた
全開で4日休みがあるから大丈夫だといったな……あれは嘘だ。
何で木曜日出社しなくちゃいけないんだぁあああああ。完全にゲーセンに行く予定だったのにぃいぃぃ!!!
と言う訳で、ボリューム半分です。
ごめんなさい。
え?じゃあ、何で時間がないのにYouTubeに動画出してんだって?……コメント欄で続き待ってますって言われたからぁ……。
――どうか妹を探して下さい。
朝食を食べ、食卓を囲む朝には似つかわしくない必死な声がリビングに響いた。
突然の発言に対して礼も首を傾げ、対応に困っているのは必須。めんどくさがりながらも、海斗とその後ろについてきた舞が玄関に進める。
飛び込んできたのは、学生服を着た少女の姿であった。
半袖のワイシャツにリボンをきっちりと閉め、スカートと珍しい革靴をきっちりと履いていることから供用の高さがうかがえる。問題は、その学生服が普段なじみがあるもので。
「あれ、通ってる学校の制服……だよね?」
それは妹の部屋に掛けてある制服と同一のデザイン。俺たちが通っている水乃内高校の指定学生服であった。家事全般をやっていたから、妹のものを選択アイロン掛けをしたものだ。
水乃内高校は俺たちが通う公立の普通科高校だ。関東統合都市から少し離れていて偏差値も平均的であり、たまに部活動で関東大会に出場している程度の何の変哲のない学校。
交友関係もまぁうん、って感じで家に来るような人づてはないはずなのだが。
「あ、えっと。どちら様でしょうか?あと、いきなりそんなこと言われても困るんですが」
「楔、雨宮楔と申します。九月まで生徒会長をさせてもらってます」
「え、と」
戸惑うのは当たり前。
そもそも学年が違うし、会うと言っても全校集会で体育館で何か喋ったりする程度の存在だ。話なんて真面目に聞いているわけなどないし、生徒会に所属しているわけでもない。
接点がなさすぎる。
何故、住所を知っているのか……何故、いきなりそんなことを言うのか。
海斗たちの頭の中で困惑が膨らんでいくのは仕方のないことであった。
言葉に詰まる海斗の横から同性故、身を乗り出した妹が口を開く。
「で?そのせいとかいちょーさんが家に何用で。そもそもどうやって知ったのかを問いただしたいね……そもそも妹を探すってただの学生に探偵もどきは出来ないよ警察に行きな」
「――警察なんてっ!」
「うぉ、びっくりしたぁ。いきなり騒がないでよこっちは徹夜でゲームしてたんだからさ」
「申し訳ありません。ですが、ほかに頼れる人は貴方達しかいないのです」
「……はぁ、とにかく上がったらどうですか?外は暑いですし熱中症で倒れられても困りますから。ゆずきー、麦茶出しといて」
「そんな迷惑をかけるわけには」
「玄関先で話す事が迷惑なんだ。ほら入る」
「どなどなどーなーどーなー」
そう言いリビングに入るように促す。それでも、多少ためらったそぶりを見せたが妹と礼が無理やり手を引っ張て家に上がらせたのであった。
案内すれば、椅子に座りながらゲームをするゆずきの姿が。視線を向けられたのに気が付き小指でテーブルの上にある麦茶を指した。どうやら仕事はちゃんとしたらしい。
とりあえず、着席させる。
「結構大所帯なんですね」
「まぁ……で、どうして家に探偵じゃないんだそんなこと言われても困るし。どうして住所を知っている?」
「それは、話が長くなるので順番でいいでしょうか」
「問題ない」
「皆様は誘拐事件をご存じですか?」
「あぁ、なんか回ってきてるよね。ゲームのスタミナ回復したと思ったら学校から来てるし」
「舞さんって毎回思いますけどぉ、ゲーマーですねぇ」
「それで、私の妹が誘拐されてしまったんです」
話を聞くに、習い事をしていた楔の妹が帰り道に誘拐をされてしまったらしい。荷物はそのまま道路に放置、まるで人が消しゴムで消されたかのように跡形もなく消えていた。
それから、もちろん警察が動き事件は解決するかと思えば届けられたのは、捜査の切り上げ告知。
頭に浮かんだ言葉は「何故」であった。事件が経ってから一日もたたずの撤退は彼女は警察署にカチコミを決めたのだが、未成年それも非力な女性で何もできることはない。
「挙句の果てに威力業務妨害でしょっ引くぞと言われてしまいました。警察が頼れない中、私はどうすればいいかで頭がいっぱいで……その時小耳に挟んだんです。民間警備会社でアルバイトをしている学生がいると」
「なるほど」
「必死に言伝をたどりました。約一週間をかけて……妹の翡翠を探し出すために」
「じゃあ、直接頼めばよかったんじゃないかな。わざわざ僕たちに来るのはお門違いだと思うけど」
「民間警備会社といえど実際は傭兵ですから、頼むのにその」
「まぁ、わからなくもないな」
実際、民間警備会社の実態は傭兵組織と言ってもいい。
元々、民間警備会社が法律で認可された理由は単純に損耗率が高い自衛官や警察官の盾にするためであった。これは、東京が崩壊したことによる失業者の増加も起因している。
犯罪行為の増加、税金の浪費など……平時であればこんな事言い出すわけがないが、大きなダメージを負った日本はそんなこと言ってられねぇ!状態になっていたのだ。
武器を安くするために、市場を開いて量産効果を得るなんて昔じゃ考えられないだろう。
実際、銃刀法は緩和されていて資格を持っていれば銃を購入することができる。
で、だ。こんな状態で公務員の給料問題とか殉職した際の特進とか、失業者が銃をもってテロ起こしたらどうすんのとか色々な思惑があってできたのが民間警備会社であるのは理解できたと思う。
故に、荒っぽい人間が多い。日本人と言えど朱に混じれば赤く染まる。
結構、暴力沙汰も起こすし料金のつり上げだって平気でする。精華さんみたいな地域住人に受け入れられるような警備会社はまれなのだ。
と言う訳で彼女の認識は間違ってはいないのだ。
「かといってなぁ」
「多分、忙しいだろうね。私達が頼める暇あるのかな?」
「僕もあれ以上迷惑かけたくないしね」
「人が良すぎるって言うのも考え物ですねぇ」
ちょうど精華たちは咲さんと連携して警察内部のごたごたを片付けようとしたり、天使の教会と呼ばれる組織を調べたり、戦闘の後始末をしたりと大変だろう。
きっと今行けば疲労が局限化し育児退化した精華さんを見られるのは確定。
「わかり、ました。本日はご迷惑をお明かして申し訳ありませんでした。こちらが連絡先と妹の翡翠の顔写真です」
「わかりました。ですがあまり期待しないでください」
そうして彼女が懐から出した写真と電話番号を受け取る。
翡翠と呼ばれる少女が机の上に置かれ眼前に差し出されたとき……ゆずきは目を見開いた。
この体形に身覚えがあった。いや、他人の空似かもしれない。けど、感がゆずきを引き留めた。
『そう。本当なら家に帰らないと……お姉ちゃんの元に帰りたいよ。けど、ご主人様が足止めしろって言うから仕方ないでしょ?』
「その話、もっとお聞きしたいですねぇ」
ゆずきはゲーム機を置いて正面の楔を見据えた。
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