58節 暁の瞳を携えて
今回は前の話が短かった分若干多くなってます。
本当はこれを出す前にルビ振りとかしなくちゃいけなかったんだけど……。
別にPSO2NGSをやってたわけじゃないんだからね。久しぶりに楽しかった、あれだゼノブレイドクロス遊んでる感覚だった。
突如、着地の勢いをロール受け身をして殺しながら現れた少年海斗と、明らかに痴女な格好をした礼の登場で辺りは驚愕に見舞われた。
まぁ、実際に彼らに会った事があるのは精華率いる傭兵と咲だけなのだから……ほかのSS隊員やスカーレットクイーンに取っては戦闘中場違いな少年少女が空から降ってきたという状況なのだから無理もない。
だが、知り合いからは未成年なので出来るだけ頼りたくはないが即戦力となる二人組だ。
「海斗君!どうしてこんな所に」
「どうしてって、まぁ……家の小悪魔を連れ戻しに来た。まだ、無理やり買わされたイチゴアイスの値段帰ってきてないからな」
額に流れる汗をぬぐいながら返答する。
たっく、何が相談に乗った料金だよ……。一番高いカップアイスを要求しやがって。それに、こいつら報告連絡相談が出来ないのか?
はぁ、と湿気が混じった息を漏らし気持ちを切り替える。目の前にはなんかやばそうなやつ、周りには精華さんとSSのゆかいな仲間たちとゴツイ外国人兵士。
さぁって、なんなんだこの状況?
「精華さんこの人たちは?」
「ロシアから来たスカーレットクイーンの皆様よ。ほら、ちょっと面識あるでしょう?」
「一人しか無いんですが……」
少なくとも赤毛の少女以外にロシア人の知り合いは居ねぇよ!それも特殊部隊のな!!
しかしこれはこれで困ったことになった。
チラリと礼とゆずきに視線を向ける。スカーレットクイーンはどちらかと言えば部外者だ。精華や咲のようにこちらが寄生体を連れていることに疑問に思わないわけない。
それに、彼女らを連れ歩き制御している俺に関心の目が移る可能性がある。俺は今までいなかった寄生体を使役できる契約者だ。同時に体内には彼女らの細胞がある……実験動物にはされたくない。
どちらかと言えばこちらを見つめる彼らにはお引き取り願いたい……この世から。死人に口なしと言うし、精華や咲さんなど知り合いや交友関係を結んでいる人間ならともかく、名も顔知らぬ人間が目の前で死んでも動揺はするが精神的苦痛はない。
悲しいけど、ニュースで誰誰が死亡しましたって聞いていちいち黙祷とか涙を流したりしないだろ?
ただ、まだお巡りさんには捕まえられたくはないんでね直接手は下さない。
「君は一体何者かね?特に君の隣にいる少女について詳しく聞きたいんだが」
「あぁ、俺もアンタが何をやってんのか詳しく聞きたいね……ヴェロニカって名前の少女の事も」
「な!?娘の何を知っている?まさか、どこにいるのか知っているのか?」
「なんだ、家でもされてのか?まぁ、話す暇はなそうだけど」
拳銃に手を掛けながら何か紫色の光弾をためている敵に視線を見据える。
礼の全力スイングをもってしても吹っ飛ばされた事から威力は一貯前。魔眼を温存している暇はない。
一度目を閉じ、切り替える。まるで電気を付けるスイッチを押すかのようにカッチとパーツが嵌まる。パイプが切り替わるように移動し、大規模な活動を支持するように血液が瞳に集まる。
ヘッドマウントディスプレイ越しに仄かに眼を赤く灯らせる。
「もう一回受け止められる?」
「無理かな。マスターと繋がって何とか……ただ、暫く動けなくなると思う」
「だよなぁ。明らかにさっきと込められた魔力がちがうっぽい」
「なら、隠れるわよ海斗君」
「無理だと思う。魔力全開できたからね……暗闇の中で全身が光っていると同義」
「らしい。お?ほぇ、なるほど」
耳に付けたインカムから響く凛とした口調に傾ける。
そんな中でも周りの人間は退避をしようと駆け回っている。精華も撤退する前に海斗の事を性格上放っておくことができないのだろう。腕をつかみ。
「逃げるわよ!」
「待って精華さん!……もう少し、左かな」
「何を」
しているの!と海斗の方向を振り向いた。相も変わらずアラクネが砲塔を構え凶弾が迫り、紫色の光が瞬く寸前……遥か彼方から飛んできた焔が光弾に突き刺さったのだ!
ピチシュ!と、まるで絵具が混じるかの如く指向性があったエネルギーは暴走拡散し、ガギョン!と真夏の夜空に花開く打ち上げ花火のように盛大に爆発したのだ。
「ナイス」
『ふふ、良い所魅せられたかしら?』
「いや、襲った利息あるから」
「あの焔は娘。ヴェロニカがいるのか!?」
「娘?んまぁ、彼女とはここに来る前に色々あって。多分来るんじゃない?」
「ちょっと待ちなさい!警察よ。どうしてこんな所に未成年がいるのか色々聞きたいところはあるけれど、どうやって無力化したの」
相手を爆発四散させた相手に、ヴェロニカに向かって軽口を叩く海斗。
種は単純だった。単純な運動性能に負けるヴェロニカは追いかけるのに時間がかかる。つまり、後方にいるということだ。そして彼女は遠距離攻撃ができる弓と寄生体の強化された視力を所持している。故に援護射撃は容易なのだ。
ただ、問題点が一つ。それは、相手の攻撃の核がわからないことだった。
下手に撃った場合、装甲に当たるか砲塔に当たっても発射はされる。または、弾に当たっても威力が減衰するだけだ。
故に、確実に攻撃を無力化するために海斗の瞳が必要だったわけだ。
海斗の瞳、夢で語っていた少女が言う魔視の魔眼は読んで字のごとく機械生命体にしか見えないマナの流れを見て干渉することができる能力だ。
現実世界に存在するものは常に空間に干渉し続ける干渉点がある。それは、魔法と呼ばれるファンタジックなものにも例外はない。
なら、魔視の魔眼を持つ彼は流れが観ることができるのだから、干渉点を知覚することができるのではないかと。
答えはさっきの通りYES。
先ほどは海斗が砲弾の干渉点を確認しヴェロニカに打ち抜いてもらったのだ。
そもそも相手の視界が共有されていないのに左と指示を出したのかは単純に……。
「感」
「感って貴方ね。警察をからかうのを」
「はぁ、マスター様。行くなら一声かけてほしいですわ。捨て置かれてしまうと寂しくて、わたくしと一緒にいるように調教したくなりますわ」
よっと、そう言いながら言い合う二人の間に着陸するヴェロニカ。髪を手ですくいながらも凛とした口調で恐ろしいことをつぶやく。
ありがたいっちゃありがたかった。多分彼女は気が付いていたないだろうが、正直コンテナヤードでの際に真っ先に拳銃をブッパしたのが彼女だからだ。いきなり攻撃してきた女性に警察だからと言って好意を抱くわけないだろ。
そして、彼女に真っ先に反応したものがいた。
「ヴェロニカ?その恰好は……今までどこに?その姿は」
「あら、お父様ではありませんか?どうしてこのような場所に、ですか?それはわたくしがいるべき場所はマスター様の隣だからですわ。この格好もマスター様を思っての事……あぁ、まるで重責から解放されたような気分ですわね!」
ふふふ、と赤面し高揚した表所と明らかに変わった衣装に明らかに戸惑いながら、元凶がマスターと呼ばれる少年だと気が付き、腰に付いた拳銃(Udav)を抜き銃口を向けると同時に手首が強烈な力によって捻られる。
視線を向ければ空から少年と駆けてきた三つ編みの少女が胸の宝石を発行させながら掴んでいたのだ。
「貴様っ」
「……いくらお父様でもこれは流石に容赦をしませんわよ。彼女が手を挙げていなかったらわたくしが弓をむけていたことでしょう」
「待てって、警察の目の前で傷害起こすな。面倒だぞ。それに、そう言った話はあれ片づけてからやるもんだろ?軍人さん」
指をさして視線の移動を促す。指し示した先には爆発の影響で膝が笑っているクモの姿が。
たっく、あれで終わっていればいいものを。機械生命体は相変わらず枠をはみ出してるな。嫌になってくる……だが、視えた。さっきまで装甲を強化するために使っていたマナが切れたな。上半身、人間の所にあるのが見えてんだよコアが。
海斗の瞳には白い魔力の軌跡が見えていた。それが脈打つように全身に回ることも、相手の人間とクモのつなぎ目に鼓動するマナの塊を。
「さて、これで少しはましになったか?」
「……まぁ、いやぁ先輩のマナはおいしいですねぇ。しかし恋人繋ぎとは乙なもの、あ」
「さて……と」
銃は……無理か?そもそも俺が干渉できるのは体に触れているものだけだ。マナはマナでしか相殺できないから、発射された弾丸は体から離れ干渉力を失う。失ってなくてもそもそも装甲が厚いから上に弾かれるだけだろう。
「何をする気なの海斗君」
「何をですか。家の子を叱る前にやらないといけないことができたんです。なので援護よろしくお願いしますね」
「え?」
腕についているアームプロテクターを打っ叩く。そうすると止めてあったバネが緩み何かの柄が飛び出てきた。それを右腕で思いっきり引き抜けば夜空よりも黒々しくも、夜空に瞬く星のような神々しさを放つ一振りのナイフだったのだ。
「先輩それは!?」
「マスター様!まさか」
鉄の狼と名付けられた武器を構える。
相変わらずのしっくり感。これが初めて使うのに、すでに何日も一緒に駆け回ったかのような一体感。
本来であれば、こんな巨大な敵に薄板ナイフ一本で戦いに行くのは自殺行為だが。
まるで、学生がテスト中に気分転換にペンを回すかのように気楽にナイフを握り直し相手に向ける。トクンと任せろ!と刃の輝きが増す。
「礼」
「うん。マスター」
「お前が何なのか、知らないし、興味もない。けどな――ッ」
息をするのと同時に半透明な鎖が二人を結ぶ。物質じゃない決して切れない絆。
「家族を傷つけられた借りは返すのが主義なんだよっ!」
そうして、二人は勢い良く駆けだした。
スニーカーで地面を踏み込むたびに、脚力によってハンマーを叩きつけたかのようなヒビがコンクリートに出来ていく。
それを唖然としながら見送る兵士たち。精華は援護を頼むと呼ばれ銃を構えるが下手に撃てば海斗に当たってしまう。どうすればいいのか。
と、耳元の通信機から聞きなれた少女の声が響いてくる。周りを見れば一斉に手を当てていることから全員が対象のようだった。
『あーあー、マイクテスト。1、2、0、0。聞こえてるかな?』
「その声ま」
『今、貴方の通信機にオープン回線で語りかけていますぅ』
やや、ふざけながらもサラッとロシア軍の通信ロックをぶち抜いた少女である実吹舞は、ヴェロニカ操る装甲車の後部座席でノートパソコンを膝の上に置くというラフな格好だった。
例えるならそう、マッサージチェアーに腰掛けながら話しているような気軽さだ。
「君は何者だ?この通信機は特殊な仕様でいたずら電話はかからないはずだが?」
『らしいね。ノーパソ一台で抜くのは苦労したよ。まぁ、私の事は……ちょっとしたクラッカーだと思っておけばいいさ。で、貴方達にやってもらいたいことがあるんだけどイイカナ?断ってもいいけど、すでにぶち抜いてあるから回答は気を付けてね。ヴェロニカのお義父さん?』
「なっ」
『わかったなら早く行動で示してほしいね。理解した?それとも情報ブチマケ?別に簡単な事だよ。貴方の娘を守りながら気を逸らしてってだけ。あと、こっちを詮索しないでってこと』
「仕留められるのか?」
『信じて』
「……第一小隊、構え。まぁ、娘のために利用させてもらおう」
『それでよし。じゃあ、作戦開始』
ここにロシア人と警察、傭兵部隊が共同戦線を張る歪な戦線が出来上がったのだ。
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