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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第2章 緋色たる烈火と紫水の彷徨へ
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55節 根を降ろす

 一話で終わると思った?残念、まだ続きます。

 あと、PC買うんですけど何かおすすめってありますかねぇ?


 ロシア大使館。ここでは、普段であれば入国したロシア国籍の住民を保護する事を生業としている。しかし、本日は普段の装いとは異なり職員がフロアを駆け回ってた。

 扉をノックされるのは何度目だろうか?頭を抱えたレオニードは机の上にある書類と睨めっこをしながらふと考える。

 キッカケは本国からもたらされた取引だった。

 日本の役員からの裏取引で寄生体を輸出すると……。

 ――寄生体。それは、非常に特異な生命体であった。

 機械生命体の多くは知性もなく本能で動き人の血肉を食らいマソを取り込み腹を満たす。なおかつ魔法とか数年前には非現実な品物で銃弾を防ぐ。

 だが、寄生体だけは人間の形を忠実に模擬し尚且つ、人と変わらぬ知性を示していたのだ。利用できれば、軍備増強として都合がいい。しかし、問題であったのは出現数であった。

 いくら機械生命体によって経済が低迷し合併或いは連合国家になろうとも、世界の国々は優に二百を超える。にも関わらず寄生体の出現率が一番高いのが日本なのだ。

 国土にして377,974平方キロメートルに対し、一億を超える密集した人口を持つ日本は寄生対象が豊富に居る証明であった。

 無論、寄生体などロシア政府も当初はハリガネムシのようなモノと考え駆除対象になっていた。けれど、ある事件が起こり軍関係者は大幅な方向転換をすることになる。

 だがレオニードの頭を悩ませたのはこの事だけでは無かった。ヴェロニカの怪我と精神的不安。

 彼は彼女と上司と部下の関係で済ますことが出来るものでは無かった。

 それは、五年前のほど……。


 レオニード大佐はシベリアの大地で自らが所属する部隊の訓練を行っていた。スペツナズに勝るほど劣らない対機械生命体特殊部隊育成のために。

 山道を行軍し、丁度昼時の休憩時に通信越しに凶報があったのだ。曰く、近くにある村が機械生命体に襲撃され重大な被害にあっていると。


「各員、傾注。先ほど我らに救援要請が入った。直線距離で五キロメートルほどの村に化け物どもが暴れているらしい。我々が現地に一番近く、幸いにも装備品は実戦想定を仮定して実弾だ。……機械生命体が居る事を考え警戒しながら前進するように。各員、進軍せよ」


 訓練は瞬時に実戦へと変わった。大佐の声を聴き、各員は戸惑うこともなく迅速に片づけをし銃と重いバックを持ち上げ、山を下って行くのであった。

 歩く歩く歩く。

 無限に広がる雪花の大地に足跡を残し進んでいく。

 辺り一面白銀で覆われ作られた世界で、ふと偵察兵が空に向け指を指す。一同の瞳には降り注ぐ雪の中に灰色の煙が混じっているのがわかったのだ。

 顔を見合わせる事無く、急げ急げダバイダバイ!!と声を上げ、スキー板を加速させる。

 坂を下り降りた先で見たものは……。硝煙漂う惨殺空間であった。

 家は燃え、人は雪に埋もれながらも赤い液体で白い地面を染める。苦痛に塗れていたのか恐怖に飲まれていたのか……倒れ伏せる死体から浮かぶ表情は等しく歪んでいた。


「通報から三十分でこれか……」

「隊長、どういたしますか?」

「各員、班を分けろ。少佐或いは大尉を班長とし、十人一グループとして分ける。その他の隊員は本部と連絡と安全地帯の確保を行なえ。では各員一層奮起せよ」


 ウラズミェートナ、と返事をし瞬時にバランスよく配員し村の中へ突き進んでいく。

 突撃銃(AKー12)を構えた、隊員が円陣を組むように三六十度警戒する。時々、機械生命体と戦闘がおこりながらも、行軍訓練を行っていたとは思えない程の迅速さで片づけていった。

 そんな中、ある建物が目に付く。広い広い屋敷のようであった。

 まるで、ロシア帝国以前の建物ような豪勢な作り。こんな山の中に何故……いや、こんな山の中だからこそソヴィエト連邦時代に解体されなかったのだろう。

 比較的に燃えた範囲が狭く、戦闘の痕跡がない事からレオニードは建物内に避難者がいるのではないかと推測したのであった。

 もし、住民が居るのであれば早く安全な場所に連れて行かなければならない。何故ならば、戦地に医療兵メディックは呼べないからだ。

 専門的な知識と装備を持つメディックが地に伏してしまえば、応急手当以外が不可能になってしまい巻き込みでダース単位の兵士が無くなるからだ。

 故に、早急に建物内に突入し救助者を確保するよう考えた。もし、いなければ増援が来るまでここを拠点にしてしまえばいいと言う打算もあった。

 三本指を立てレオニードはドアから少し離れる。扉のそばにはアサルトライフルで武装した兵士と、右手に細長い円筒をもった兵士が控えていた。

 指が一秒ごとに折りたたまれ、すべての指が落ちた今……アサルトライフルを持った兵士が勢いよくドアに向かって蹴りを叩きこんだのだ。扉の金具が壊れたのか、玄関が一望できるほどの隙間が生まれた瞬間もう一人の兵士が持っていたものを投げ込んだ。

 暫くするとバンと破裂音と共にキーンと耳なりをするよな感高い音が響く。

 そして、兵士たちは間髪入れずに建物内に侵入したのだ。

 玄関は、広々とした空間であった。明るめの色を基調とした内装に観葉植物、天井にはシャンデリアに壁には美しい風景絵画が飾られ、ここが戦地である事を忘れ去られるほどの美しさであった。

 ぉお、と息が漏れる。緊張が解れてしまったのか銃口が地面へと下がる。

 おもむろに壁を触ってみれば、硬いコンクリートの感触。この厚さならば暖炉を起動すれば外気の気温を完璧に防ぐことが可能だろう。

 いくら特殊部隊に選ばれるほどの兵士であろうとニンゲンである。生き物と言う都合上、何所かしらで疲労が蓄積する。故に、彼らは羽休めのつもりで壁に背を預けた。

 ……カタンと物音がするまでは。

 一斉に兵士が立ち上がる。立て掛けていたアサルトライフルも、ストックを掴み持ち上げ構える。

 物音は……上、だな。

 無言の合図アイコンタクト

 物音を立てない様に玄関横にあった階段を出来る限り物音を立てずに進んでいく。

 騒音の発生原因は人間かもしれない。故に、所持している手榴弾フラグはもちろん失明の可能性がある閃光フラッシュバンもダメだ。

 だから、隊員はアサルトライフルを構えたまま扉を蹴破った。

 そこにいたのは二人の人影だった。

 一人は血に伏し、もう一人は倒れる人間を座り込んだまま見下ろしていた。

 周りにはまるで地面に赤いペンキをまき散らしたかのような赤い色と、鉄がさび付いたような臭いが鼻孔を付く。

 飛び散った血潮からもう生きてはいないであろう事が見て取れる。

 せめて、精神的に唖然とし座りつくす少女を保護しなければと良心が湧き出てレオニードは廊下の境界線を踏み越えた。

 着用していた軍靴が部屋に接した瞬間、少女がこちらに気が付いたのかゆっくりと振り向いたのだ。

 美しい少女であった。年相応の肌に幼げな顔。まるで、中世間の貴族令嬢が目の前に現れたかのようであった。

 只の少女であれば見惚れで終わった。荒れた戦場の中美しい少女は兵たちに癒しを与えてくれるからむしろ歓迎されたかもしれない。

 だが、胸に付いた宝石と肌に突き刺さる黒い虫のようなものが兵士に正気を戻したのだった。


「まじかよ!」


 不自然に染まった赤い瞳と髪。肌に浮き出る黒い血管は胸に取りついた何かが、植物が地面に根を張るように少女を犯してたのは明白だった。

 寄生体……資料では見た事があったが実物で拝むのがこれが初であった。

 ゆっくりと、いやふらふらとまるでゾンビ映画の感染者のような足取りで立ち上がる。


「っ!」

「おい、待て!」


 瞬間、レオニードの後ろに控えていたライフルマンが銃の引き金を軽く引いた。

 パンと、AK―12(アサルトライフル)から放たれた弾丸は少女の胸の宝石に導かれるように飛んでいき、黒い液体を放出しながら後ろに地に伏したのであった。


「……、致し方あるまいか」

「申し訳ありません。隊長早まってしまいました」

「問題はないさ。とにかくずらかるか」


 いくら機械生命体であろうと少女の外見をしたものを撃って精神的動揺が無きにしも非ず。

 せめてモノ情け。顔にハンカチを掛けようかと近づいたとき。


「ぁ、ぅぁ」


 声が漏れた。

 驚く兵士たちを他所にレオニードはダンプポーチの中から拘束具を取り出し、少女を拘束したのだ。

 トドメの一撃を放とうとしている部下を手で止め。


「丁重に拘束しろ。寄生体のサンプルは少ない……ここまで弱っていれば暴れることもないだろう。手術で寄生体を取り出せるかもしれん」


 三十分後、ロシア連邦軍が駆け付ける。そのまま、少女は装甲車の中に詰め込まれ輸送されていく。




 ――そして、彼は一週間後保護された少女……ヴェロニカの養父となるのだった。



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