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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第2章 緋色たる烈火と紫水の彷徨へ
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53節 多脚戦車(アラクネ)


 安藤小物感が出すぎてますね……かと言って出番を増やせば第二章が60話を経過してしまうし。

 文字数を三十万いないで第二章を終わらせたかったんですよね……。


 因みに第三章は主人公がどんなことをやるのかなどの大筋は出来ています。


「ふざけるなよ。愚民の分際でっ」


 ゆずきが二人組の逃亡者を追跡しているころ。砂煙漂う中、突如として怒号が響き渡る。

 明らかな苛立ち。まるで、飼い犬に腕を噛まれたのではなく嚙み千切られた。そんな怒りを込めて高らかに部下に向かって宣言したのだ。


「殺せ!」


 従えるべき主の声を聴き、瞬間的に銃を構え精華達に向け銃弾を放ったのだ。

 だがしかし、視界不良の中当てられる技量もなく。銃弾は明後日の方向に飛んでいき、逆に銃声によって彼女たちを戦闘体制に移行させてしまったのだ。

 瞬時に手頃な物陰に身を伏せる。


「いい。相手は装備だけは最新の案山子マトよ。恐れず攻撃しなさい!」

「殺害してもだいじょうぶっすか?」

「問題ないだろう。何せここには警察官が居る。後処理は任せるさ」

「さぁ、最新装備のバーゲンセールだ!警察官のお許しが出れば私物化もしていいぜ!!」


 いやっほーと、重火器を携えながら駆け込む獅子王陸に対して、呆れながらも冷泉仁と水瀬直樹そして藍沢夏が援護射撃を行うのだった。

 狂乱し銃を連射する敵兵に対し、こちらは冗談ジョークを言い合えるほどの余裕がある。

 力量さに付いては客観的に見て明らかだった。

 最初は激しく辺りには火薬が炸裂する音と薬莢が地面に転がり落ちる音が響き渡っていたが、台風が過ぎ去るがごとく数分も経たずに鎮圧されていた。

 地面には事切れた死体と、負傷部を押さえ呻きながら転がる敵兵に対してこちらの損害は少ないが重症者が出たのみだった。


「何故だ……何故俺の思い道理にならない。お前ら平民何て、俺たちに金を差し出す家畜に過ぎないのに」

「よくそんなんで役人やってきたわね。いえ、そんなんだからこそ公務員でありながら成りあがってきたといえるのかしら」


 スーツを見出し尻もちを搗きながら後ずさる。右手には弾切れになった拳銃をカチカチと空撃ちをする姿は、先ほどの威厳や余裕はなくなっていた。


「ざ、小心者で子悪党。よくある権力にすがって自分が偉いと誤認したバカな男っすね」

「さて、色々は居てもらうぞ。何故、ロシア人部隊を入国させたことや街中で市民を捨て駒にした作戦の全貌をな」


 そう言い安藤の胸倉を掴み立ち上がらせる。そのまま、近くの木に叩きつけながら尋問を始めたのだった。


「何故スカーレットクイーンを入国させた」

「知らな……ゴハァ!!……そ、それは、クライアントが情報を集めるためだ。寄生体の情報は色んな組織が欲しがるからな」

「じゃあ、街中でのあれも寄生体を捕らえるためにやったと」

「そうだ。寄生体を捕らえるためにやった事だ。ただ、寄生体を渡すと取引したがロシア人には渡すわけにはいけなかったからな」


 へらへらとまるで、ゲームのような感覚で居るのか。或いは今までに引きずりこまれてない状態に現実感が無いのか……男は情緒不明ながらもペラペラと情報を喋った。


「そもそも、寄生体の出現率がここ日本に集中しているのは知っているだろう。世界二〇〇国がある中、狭い国土ながらも三割を誇る!だったら、少し位いいじゃないか」

「少しくらい……?そんなんで市民を捨て石にしたのか!」


 開いている左手の拳を握りしめ、男の顔面に対してストレートパンチを放ったのだ。

 いくら女性と言えど小鳥遊咲は、特殊部隊出身である。それ故に、しなやかに鋭く撃ち込まれた拳は容易に安藤の前歯を粉砕した。


「っ――あぁああああ!」

「いい気味だな」

「ぁ――っ!ごろず!殺して犯してやる。死んじまえよォ!」


 激痛に涙と鼻水と血が混じった唾液を散らしながら、倒れていた部下に向かって命令を下したのだ。

 偶然、幸運……いや不運にも何処かに引き金を引くほど余裕があった者がいたようで、放たれた銃弾は

咲の脇腹にと命中した。

 近距離で7.62x51mmNATO弾が当たり大きく仰け反りながら倒れこむ。

 瞬時に夏が相手に発砲。額を打ち抜いたのだ。


「大丈夫!?」

「何とか……、アーマーで防げたとは言え肋骨が逝ったかもしれん」

「ナイスだ。お前には墓を建ててやろう。さて、欲もやってくれたなァ!」


 車のそばに体重を掛けながら立ち上がる安藤。その手には透明な筒のようなものが握られていた。

 プラスチックで作られた試験管の中に薄緑色の液体の中に何かが浮かんでいる。

 ぷかぷかと何か黒いものが浮かんでいる。足が八本、まるで蜘蛛のような姿にサソリのような尻尾が付き胴体にはきれいな宝石のようなものが付いている生物であった。


「ふは、運は俺の味方だぁ……これを使えば俺は人間を超えた生物に成れる」 

「何をしている」

「止めなさい。寄生体を使おうとも男性であれば適合しないわ」

「知るかァ!俺はァ、神になるんだ!!」

「撃て」


 男が寄生体を掴む出すと同時にダダダっと、近くにいた夏が所持していた突撃銃がうなりを上げる。放たれた弾丸は腹部に吸い込まれるように弾着し、鮮血が舞い散った。

 そのまま、男は糸が切れた人形の如く後ろ向きに倒れ……。


「ごふぅ。バカが……遅いんだよォ!」


 吐血をしながら、あざ笑うように宣言し寄生体を負傷した腹部に押し付け、自身の首筋に黒い液体を注射したのだ。

 制止する間もなかった。

 貴重な情報源をみすみす永眠させてしまった。そんな後悔が一同に蔓延した時……風が瞬いた。

 まるで、ハリケーンに晒されたような突風。まるで、瓦屋根が飛んでいくかの如くトラックにひかれたかの衝撃と共に精華達は大空に舞ったのだ。


「がぁ!」


 無尽蔵に地面に打ち付けられる。骨が軋み、神経が痛みの信号を送る。

 苦痛によって歪む視界の中、腕を地面に付きかけ半身を起こす。一体なのがあったのかと、自分が吹き飛ばされた原因を探るために。

 周りを見渡せば同じように状況を確認しようとする仲間たち。自分たちが居た場所に視線を向ければ、漆黒の竜巻が出来上がっていた。

 唖然とする中、風の切れ目から鈍い金属光沢のような光がちらりと漏れ。……爆ぜた。

 ドカンと言う音と共に何かが空気を裂く、肉眼ではとらえられず。ただ、本能に導かれるまま奇跡を辿り崩れ行くビルを目にした。


「は?」

「え?」

「な!?」


 まるで、ダルマ落としで一番下を叩き飛ばしたかのように下層が消滅し……中層から上が地面へと突き刺さっていく。流れ星のように落ちていく……流れ星と唯一違うのは轟音と振動が感じるのであった。


「総員散開!遮蔽物に隠れなさい!!」


 バネのように立ち上がり瞬時に精華達は駆けた。確死の砲弾から。

 漆黒の竜巻を裂いて現れたのは黒光りする何かだった。それは、八本の足を持ち節足動物のような特徴を持つ下半身の上に、人間のような形の上半身。そして、最上部には砲塔のようなものが取り付けられていた。

 それは、ギリシャ神話に登場する蜘蛛と融合した人間であった。


「戦車型!?」

「あの八本足に人のような半身……。アラクネか!」


 ――アラクネ。

 機械生命体における戦車型に位置する。全長4.7メートル、全幅3.4メートル、全高3.4メートル、重量6.7トンをもつ。

 特徴は戦車型の由来となった高い装甲と攻撃力である。

 上部に取り付けられた砲塔は第四世代戦車の装甲を大破させ、48口径75ミリメートル砲を完全に無力化。RPG-7などの個人用対戦車火器ではダメージは上部を狙わない限りはまずない。

 また、八本の足はインフラが劣悪な所も難なく進行し、壁の垂直登攀や車三つ分の重量を生かしジャンプなど最大速力以外は戦車に勝っていると言っても良い。

 それ故に基本的には戦車型には戦車でもって対応するのが普通ベターなのだが……。

 近くにあった遊具に背を預け、通信機に向かって話しかける


「損害報告」

『こちら第一小隊副隊長藍沢夏っす。こっちは先ほどの風で地面に叩きつけられて何人か骨が折れてるっすね。せめてもの救いは砲撃に巻き込まれていない事と死人が無い事っすね』

『こちらは第二小隊獅子王陸。以下同文だ』

『こちらSS第一小隊の小鳥遊咲。そちらとほとんど同じだ』


 とにかく、死傷者が居ないことに安堵しながら少しだけ身を乗り出す。

 どうやら、アラクネはこちらを見失ったようで砲塔を違う方向に向けていた。

 さて、どうすればよいのだろうか?目的である情報は少ししか得られなかったし、逃亡している二人組はゆずきちゃんと彩さんが追跡中。正直、あれを相手にしないで退避してもいいのだけれど。


(かと言って、放っておくのも問題あるわよね……)


 まだ、勝利の可能性があるのは近づいて相手の背中に乗りゼロ距離で銃をぶっ放すことだが、不用意に接近すれば鋭い脚でくし刺しにされる。

 かと言って逃亡しようと身を不用意にさらせばビルを粉々にするほどの主砲が人間に対してぶっ放される。

 どうすればいいのか。思考にふけっていると、可愛らしい声が辺りに鳴り響いた。


「何ですかぁ!これぇ!!何か私が居ない間何が起こったんですかぁ」

「これは……戦車型。まずいっ」


 それは、ゆずきと彩の姿であった。

 攻撃音で何が起こったのか、確かめるために引いたのだろうが今はそれは悪手。

 彼女たちは広い通路の中心を走っていた。つまり、相手の視界を切る障害物がないと言う事だ。

 ビルすらも粉砕できる方途が二人へゆっくりと向けられる。


「走って」


 何とかこちらに気を反らそうと、遊具の影から身を乗り出し所持していたアサルトライフルを斉射するが、被弾軽視を意識した傾斜装甲と機械生命体特有のマナを使った防御力強化によって、5.56mmNATO(小口径高速)弾は豆鉄砲の意味すらなく。


 無慈悲に主砲が放たれた。



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