51節 半翠玉
今更ですが、社会人になりました。
仕事も基本第四週目の土曜日は出社と、今日は無理かなぁと思って居たのですが……気合で頑張りました。
関係ないですが初任給で初めて買ったものエナジードリンクでした。
……。
社会人にはなりましたが、これからも小説投稿を頑張って行きたいのでよろしくお願いします!!
(なんで今まで気が付かなかったんですか私ぃ!)
フードを被った二人組を追いかけながら心の中で毒を吐くゆずき。礼ならいざ知らず、私がこんなミスをするなんてと焦燥に駆られていた。
寄生体は基本的に同士討ちをしない。それは、同類で争ってもマナが得られるどころか失う事が多いからだ。故に、基本的には体から漏れ出るマナの残滓を肉眼で見る事によって判断は容易にできる。
もちろん、対外から漏れ出るマナを隠蔽する方法はある。一般的なのは遮断する事だ。
しかし、そんなことをしてしまえば生きることは出来ない。人間に例えるならば、呼吸しないで走り回ってくださいと言ってるようなものだ。
(絶対に、人間が二酸化炭素を吐くように植物が体内に取り入れた水分を蒸散するみたいに……体内に取り入れたものは如何しても出てくるのに。契約をしてラインをつなげれば可能ですが。けど、隣を走る男は違うと感が告げていますねぇ)
そもそも、寄生体と同速で走る男も可笑しいのだ。
(正体を明かす相手は味方か、或いは消す相手にだけにしたかったのですが致し方ありませんねぇ。せめて情報は貰いますよぉ!)
地面を強く踏みしめ相手を上から周りこむように跳躍しながら、胸の宝石から黒い液体が放出されいつも道理の戦闘服が形成される。
そしてそのまま、空中にて紫水晶の礫を形成し相手の逃走経路を塞ぐように発射した。
地面に当たり砕けた水晶が双方の視界を初期化。そのままゆずきは二人組の進路上に立ちふさがった。
「こんにちは、今日はいい天気ですねぇ?晴れてますし風も強くないし涼しくて……ちょうど色々するのに向いていると私は思うのですが、どうですか?」
「ぉ、お!?その姿、マソ濃度。言葉を交わせる程の知性がある寄生体だと……っ!」
「何を驚く必要が?そちらにもいるでしょう?さて――」
胸のクリスタルに腕を突っ込み、引き抜くと同時に形成された鞭先を相手に向け。
「私どちらかと言うと首絞められるのが好きなんですけど……鞭を振るのも結構好きなんですよねぇ。さぁ、良い声で鳴いてくださいよ!情報と共に!!」
鞭を振るいながら高らかに宣言した。
空気を裂き弧を描き、撓ったムチの攻撃を危なげなく避けたバイザーの少女はバックステップで距離を取りながらフードの男を守るような位置取りを取る。
刈り取られた地面を視ながら、戦地にいるとは思えない程落ち着いた声色で話した。
「うーん、今後の制作の参考としてサンプルは欲しいんですけどね。我々の事は、他の方々に知られたくないんですよ。どうです?ここいらで双方抑めると言うのは」
「情報を喋ればいいですよ?」
「それはちょっと無理ですね……。あ、番は居ますか?居るとしたら一回お会いしたいのですが」
「だぁれがご主人に合わせるとでも!」
「えー。じゃあ、仕方ありませんね。マリオネットドール……目の前の障害を排除して逃走経路を確保しなさい」
「了解しましたマスター」
そうして、腰を引き拳を顔の前で構える少女。対してゆずきの方は舌戦で相手を挑発していたものの、焦りが包んでいた。
理由は単純、そもそも正面切った戦いが彼女の戦闘スタイルではない。
ゆずきの事を何かに例えるなら蜘蛛だろうか。自らの拠点に敵を誘い込み、準備していた罠に掛かるように誘導する事が得意である。
故に、準備も無しに正面切って戦う近接型には自衛能力的に弱いのだ。もちろん、鞭や蹴りによる迎撃は可能であるが……攻撃力は低い。
(認めたくないですが、礼とやり合って有利に運べたのは事前に罠を仕掛けられた事。地形を十分に把握していたこと。鞭を振るっても手軽に迎撃されるのは火に飛び込む虫並みに確実。そして……)
バイザーの付けた少女が姿を隠していた衣服を脱ぎ棄てる。
それは美しい少女だった。くすんだ白い髪は腰まで伸び、毛先に行くにつれ萌葱色になっていく。
服装は黒白灰色を基調とし所々に緑色のラインが入り、上はクロスホルタービキニの着用し下はレオタードで腰部分にはスカートのようなものが着用されている。
年相応の美しい体に、少女に似つかわしくない豊満な胸と尻。だが、腹部には何か丸い機械のようなものが取り付けられている。
ブーツにニーソックス。そして、ひときわ目立つ腕と胸の宝石があった。
腕に装着されていたのは籠手であった。黒を基調とし所々に緑色のラインが脈打つように夜空の元で発行され、甲部分には平行四辺形上の緑色の宝石が取り付けられていた。
これだけ見ればよく見る寄生体だろう。しかし、胸にある心臓と肺の統合基幹を持つエメラルドカットの形コア部分が半分に割れていたのだ。
(……なるほど、確かに半分にすれば感知も難しくなりますか。じゃないですよ!言ってしまえば肺と心臓の半分が無いんですよ!何で立ってられるんですか。病院で入院して点滴打ってる姿が似合いますよ)
あまりにも酷い姿に敵に同情してしまうゆずき、しかしバイザーの少女は止まることなく籠手にマナを纏わせる。まるで、脈を打つように緑色のラインが繰り返し発光し。
ゴウ、と音共に繰り出された拳はゆずきの顔すれすれの位置に繰り出されていた。
直観により回避行動をとっていたゆずきは拳に視線を合わせながらも警戒レベルを高く上げていた。
早い、それにマナの動きが見えにくい。
繰り出される拳を紫色のサイドテールが並み打つほど俊敏に躱し、桜色の唇をいらだちで噛みながら観察する。
(速い。スピードだけなら礼を超えていますねぇ。リーチは短いながらも間合いに入られたら回避に集中しないと捌くのは難しいですし……どうしますか)
鞭で受け流しをしながらとにかく時間を稼ぐ。
せめてもの救いがもう一人がこちらに対して観察しているだけで手を出したりしてこないのがすくいであった。
「いい加減ウザいですよ!子供なら今の時間は家にいるもんでしょ!」
「そう。本当なら家に帰らないと……お姉ちゃんの元に帰りたいよ。けど、ご主人様が足止めしろって言うから仕方ないでしょ?」
「はぁ?」
「これが悪い事だなんてわかってるよ。本当は私だってしたくないの……けど、私はマリオネットドールだからご主人様の命令ならやらないといけないの」
「思いと行動が一定してませんねぇ!犯罪だってわかってるなら早く倒れてくださいよ!」
間合いが離れた瞬間に鞭を振るい何とか距離を取らす。
お互い荒れた息を吐き、呼吸を整えながら相対する相手を反らすことなく見続けた。
こうして、見合いが始まろうとした瞬間に横から男の声が掛けられる。
「ふむ。寄生体ですから少しは警戒していたのですが……これは、私が混じった方が良さそうですね」
「混じる?ふ、人間のそれも男性の貴方に銃弾を受け止めれるほどの障壁を貫けますか?」
「出来るんだなそれが」
何?そう声を出すことはできなかった。何故なら気が付いた時には腹部に衝撃と共にくの字に空中を待っていたのだ。
アガ、と空気と共に口内の唾液が衝撃で漏れ出る。
何とか着地をし、腹部を押さえ嘔吐きながらも目を視線を上げる。
「うぇ、ぇ。ぅ、な……何で私の防御をぉ!」
「魔法は魔法で打ち消せる。それは、八年前からの周知の事実」
「ぅ、ですが、魔法を発動できるのは同じ機械生命体のみのはずで……寄生体は男性には」
「自分たちの知識だけが常識ではないのですよ?」
コツコツと二人が近づいてくる。死神の足音が大きくなってくる。
口を拭いながら歯を食いしばって立ち上がる。こんな所で死んでいられない、まだマスターと出会ったばかりで何もしてないのに。
生き残る強い意志を持って相手を見据え、二人組が歩を詰めた瞬間。
パンと火薬の炸裂音が切り裂いた。
「ぐぅ」
「ご主人様!?」
突如、フードを被った男が大勢を大きく崩す。
何が起こったのか、誰が介入してきたのか。自然と音の発生源に視線が向き。
「あれだけ挑発しておいてこの程度の実力なんですか?」
「援護なら、はやくしてくださいよぉ」
「ん?こっちも走ってきたの。銃撃戦をかいくぐってきたのだから誉めてほしいけど?」
点滅する外灯に映し出されたその姿は、黒い髪を腰まで伸ばした女性であった。
突撃銃(ACR)から噴煙を出し、警察官の格好をした杉野彩は透き通った声で宣言したのであった。
「さあ、善良な市民であるなら、投降してみては?もっとも末路は変わらず現実から解放いたしますが……」
そうして、犬猿の仲による共同戦線が今形成されたのだった。
次の話で一端ゆずき視点を辞めて、海斗視点に戻したいなぁ。
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