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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第2章 緋色たる烈火と紫水の彷徨へ
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47節 それぞれの思惑

 はぁ、はぁ。時間が無かろうが……無理やり時間を作って投稿してやるぜェ!


 ガクっ。(力尽きる音)


(先輩……ね?)


 目の前の化け物が初めてちょっと焦ったかのように口を滑らせた。

 今まで、こちらをバカにするような態度しかとっていなかったが、どうやら彼女のお友達は人種……いや、生物の枠を超えて硬い糸で結び付けられているのだろう。

 けど、私は咲隊長並みにお人よしではないんです。

 杉野彩は人々を守りたい……何て上品な理由で警察官になったわけでは無かった。

 東京生まれ東京育ちの彩はどちらかと言えば上流階級出身である。声優の父を持ち、モデルの母を持った明るい女の子であった。

 あった……過去形である。

 現在は東京と言う町は地図上から消滅している。故に、何かあったのは必然的だろう。

 だから、彼女は当時武器を持ち機械生命体に復習が出来る職業に就いたのだ。

 只、彩はかわいらしい女性ではない。仇が関わると冷静さを無くすがそれでも高い知力は健在であった。


(外見年齢からして中学生、高校生ぐらい。対して機械生命体が出現したのは九年前。外見年齢(見た目通り)満年齢(出現してから)かはわかりませんが、先輩と言う事は年齢が上かつ言動から商業地域での戦闘に巻き込まれた可能性が高い……そして重傷を負っている。後で付近の病院に入院している重症患者を調べてみるべきですね)


 少ない情報量から仮説を組み立てていく様は警察官と言うよりは探偵の姿であった。

 事実、大体あっている。ゆずきと海斗の年齢差はプラス二歳、大量出血に頭部損傷や腕骨折など彼女の推理はあながち間違いでは無かった。無論、現在手に入れている情報に照らし合わせだが。


(首輪が付いていたとしても操れなければ信用に値しない(意味が無い)。少なくとも友達を発見し|協力してもらえばリードを付けられそうですが)


 しかし、この場で何かしらアクションを起こせば不利になるだけだ。

 彩は大人しく話に耳を傾けることにした。


「それで、こちらに何を求めているのでしょうか?あいにく私たちは武器すらないのです。出来る事と言えば……送り迎え(車の運転)、とか?」

「うーん?戦力目的なんですけどぉ」

「無理だな。前にも話した通り我々SSは武器が無いのはゆずき君も知っているはずだろう?」

「咲さんの言ってることも解りますが、元から計画してたんでしょう?確か……あなたが開始する前に一週間準備くださいって。くれたらじゅんびかんりょーって聞いたんですけどぉ」

「それは、問題ないです。あと二日で準備できますが」

「なら良し!」


 むふふん、とほほ笑みながらポケットから取り出したブルベリーサンド(お菓子)を一口。中心にある円卓テーブルに腰かけながら食べた。

 どうやら彼女に危機感は存在していないらしい。会議中に一声かけずに飲食をする様子はとても義務教育を終えている姿には見えない。

 とにかく部下に対角線上に移動してもらい、彼女と対面しながら話をする。


「それで?貴女先輩って言いましたよね。恋人なのですか?わたした――」

「こ、恋人だなんてそんなぁ。強いて言えば将来の旦那さんですかねぇ。きゃ!」

「……。すぅ、んん”。私達と共闘するのですよね。大切な方と離れ離れになってもいいのですか?」

「あー、そうですねぇ……そりゃ嫌ですけどぉ相手に寄生体がいるんじゃ仕方ないじゃないですかぁ」

「は?」


 あーそう言えば話してなかったですねぇと呑気にしながらもゆずきが語る。

 友達の少年が怪我をしているのを感じ駆け付けた所、弓を持った寄生体が暴れていたこと。法務長が寄生体を一体捕獲しているであろう事を。


「と言っても捕獲してる寄生体は人間に寄生する前の状態……外見は八足の虫みたいなのが最低で一体って感じですねぇ」

「つまり貴女が足止めしている間に本体と法務省を叩けと言うですか」


 確かに寄生する前……ここでは便宜上「幼体」と呼ぶが、幼体状態の寄生体は非常に貧弱である。

 しかし、人間に寄生した場合は話が違う。第二フェイズ(不完全寄生)時でも高い戦闘能力を持つし、既に救助不可能者として処理するしかない。


「そっ。悪くない案でしょう?因みにそこの石竹さんと咲さん既に協力してくれるって言ってたのでぇ……後は貴方達だけですよ?」


 その返答を聞きちらりと彩は入り口にいる隊長と精華に目配せをする。それに気が付いた二人はそれぞり小さく頷いた。

 つまり双方了承しているわけか。


「わかりました。その話に乗りましょう……ですが、貴女が不審な行動をすればわかっていますね?」

「はいはい。私もいちゃつきたいですし怪我をする気はありませんよ」


 そう余裕の表情を浮かべていた。


「よし。話がまとまったようだな……。現在我々は新しい情報を手にした。曰く捉えた寄生体を引き渡す――」


「兄?どうしたの」


 彼女たちが会議してから一日後の午後リハビリのつもりなのか、近くのスーパーまで買い物に出ていた帰り道。海斗が周りを見渡すような動作をする。

 人通りが少なくひび割れたコンクリートで出来た歩道をダラダラと歩いていた。


「そう言えば、ゆずきちゃんと連絡が付かないなと」

「そうだね。それに精華さんともつかないし……何かあったのかな?」


 礼に背負われている舞が背骨に顔を埋めながら呟く。

 確かに俺が重症を負って見舞いに来てから現在まで何も連絡が無い。精華さんの性格上、ちゃんと普段どうりの生活を全うできるかのアフターケアをするはずなのに。

 トコトコと歩いていると、礼が俺の手を握ってきた。


「どした?」

「誰か来る」


 そう一言伝え彼女は辺りを見回す。それにつられ俺も警戒し始める。

 まさかロシアの部隊か?日も落ちていないのに。

 耳を澄ませば微かにエンジン音が届く。どんどん近づいてくる駆動音に対して俺は拳銃に手を伸ばし、ガードレールに身を隠した。

 そして、交差点を右折し飛び出してきた車。社内に乗っていた人物がフロントガラス越しに映り。


「あ、ちょうどいいタイミングだね。ふふ……乗ってく?」


 ツインテールを揺らしながらいつも通りのイントネーションで問うノヴァの姿だった。

 ガーと窓を全開にし、腕を窓枠に駆けながらこちらを見てくる。


「あ、え……こんにちわ。そのちょうどいいタイミングとは?」

「ん?聞いてなかったんだね……君ナイフ壊したでしょう。だから、れいちゃんの依頼でナイフを作ってみたんだぁ」

「そうなのか」

「うん。僕も心配したんだ。だから、身を守るために頼んでおいた」

「それはわざわざすみません」


 確かにその理由だったら断る理由もない。俺たちは荷物を荷台に乗せ後部座席に登場していった。

 ノヴァさんが運転しているのは白色の普通自動車だった。いつものふわふわしている様子からは考えられない程堅実に運転していく。

 暫く揺られている俺は帰り道に話していたことを聞いてみたくなったのだ。


「ノヴァさん?」

「ん?何だい少年」


 バックミラー越しに視線を向けられるのを感じる。


「えー精華さんって今何をしていらっしゃるんですか?」

「しゃちょー?あー……商業地区での事件があったでしょう。そのさなか何か怪しげな組織が暗躍していたみたいでね……今日、日付変わるから明日かな、取引が行われる所にカチコミに行くらしいよぉ」


 その準備のためなら確かに連絡が無くなるのも解る。そう納得していると「後……」と言葉が続く。


「ゆずきって人も行くらしいよ」

「は?ゆずきって小鳥遊ゆずきの事か?カチコミって武力衝突起きますよね?」

「当たり前でしょう」


 やばい。確か寄生体って契約者から離れると戦力が大幅に低下するのではないか。

 確かに彼女と知り合ってからは短い、初対面では腹を鞭で刺してきたのだ。けど……。


『貴方が居るだけで私達の助けになっているんです』

(少なくともあんな顔をした彼女を死地に飛びこんでいくの指を銜えてみてるほど弱く話無い)


 思考にふけっていた海斗はバックミラー越しにノヴァに視線を返しこういった。


「場所……わかりますか」

「……何をするつもりかな」

「別に、ただ何も言わず出かけた奴を呼び戻しに行くだけですよ」

「ちょ、兄!?」


 それを聞いた舞は焦りながら前のめりになった。

 三日前に唯一の家族が重傷を負ったばかりなのだ。怪我が治ったとはいえ、傷つく姿は余りみたくわない。

 それに、自分だけ内情を吐露しといてゆずきの事は何も知らない。彼女の今まで過ごしてきた出来事も、何故色々と知っているのかを。


「礼。ちょっと手伝ってくれないか?舞も」

「「……」」


 そう呼びかけられる。双方とも彼には傷ついてほしくはない。

 特に礼はそう強く願っている。けれど、ご主人様と繋がっているからこそ決意が揺るがないモノだと理解してしまったのだ。


「わかった。けど、今度こそ僕から離れないでね!」

「え?……あーもう知らないんだからぁ!」


 二人……妹の方はやけくそ気味だったが、了承した二人に向け感謝を述べる。


「ん?盛り上がってるところ悪いんだけど、どうやって行くつもりなのかな?準備は?ナイフ持って行かないの?」

「あっと。よろしくお願いします」

「ふふ、じゃあ飛ばすよ。法定速度の方が付いてくるんだね!」


 その瞬間、キラリと瞳が光ったような気がして。

 直後、身を背もたれに叩きつけるような衝撃。キュキュッとタイヤが高速回転!そのまま時速は八十キロを超え山道を登り始めたのだ。

 突然の奇行に抗議する暇もなく、彼らは民間警備会社にお持ち帰りにされるのだった。


 今見たらポイントが10も上がってる!

 ありがとうございます。これからも頑張っていきますのでよろしくお願いしますね。


 ブックマークは新着小説で投稿されたのがわかりますし、ポイントは作者のやる気にもなります。

 ブックマークは上部に、ポイントはお話を読み終わり『<< 前へ次へ >>目次』の下に入力案がありますよ!

 作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします。

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