46節 邂逅
本当はもっと心理描写とか駆け引きとか入れたかったんですけど……。44節の前書きに言った通り三月下旬から四月上旬まで忙しくなる都合、中途半端に切ってしまいました。
申し訳ございません。
2022/11/02
一部キャラクターの口調を治しました。
「隊長!」
駆け寄る部下のまぶしさに顔を背けながら咲は小会議室に訪れていた。
この場はわざわざ精華がSSのために用意した場所である。幸い、もともと市民ホールであった故かこのような部屋は多々あるためこちら側としても都合がよかったのだ。
やややつれてはいたが、それでも三日間も音信不通の尊敬する上司が現れたのだ。ざわっと息が漏れるのは必然だった。
まるで、胴上げをするかの如く揉みくちゃになる咲。その光景を見て、ドアの近くで佇む少女がぽつりとつぶやいた。
「感動の再開はいかがですかぁ?」
場にふさわしくないちょっと下っ足らずの声は異音。
咲以外の全員は、一斉に振り向いたのだ。驚愕と共に。
視線を向けられた彼女はブレザーを翻しながら後ろに並んだ精華達と一緒に入室したのだ。
「まずは精華さんうちの隊長を保護してくれた事に感謝を。けど、彼女は一体」
「あぁ、それなんだけど……」
「こんにちはぁ役立たずの公僕のみなさぁん」
「――っ!」
役立たずの公僕。それを耳にし真っ先に顔を顰めたのは副会長の杉野彩であった。
外見は完全に子供。言動には所々に此方をバカにしてくるような声色。
SSと言う特殊部隊員である事に誇りを背負う杉野彩は拳を握りざる負えなかった。
「ちょっとゆずきちゃん」
「しぃ……。事実じゃないですか?さっきの騒動何やってたんですぅ。これだから税金泥棒は」
「……治安維持法が現在まで成立してなくてよかったな」
言外にもし逮捕できるなら逮捕するぞと脅しても、目の前にいる少女は態度を正さず。寧ろ、唇の上に指を当てニヤリとほほ笑んだ。
「法律って……人間以外には適用されないと思うんですけどぉ」
「はぁ?」
「だぁかぁらぁ……ふふ。貧弱な人間に寄生体である私が手助けしてあげよっかなって」
「そっか」
寄生体。その単語を耳にした彩の行動決定は早かった。
まずは右足にあるホルスターに手を伸ばし、引き抜きながらスライドを引きセーフティを解除。その後、寸分構わず舐めた口を利くガキに|拳銃(G18C)をぶっ放したのだ。
パンと乾いた炸裂音が響き渡る。
ざわざわ……声が漏れる。流石に他のSS部隊員でもこの行動には動揺を隠せなかった。現にほとんどの人間が眼を飛び出さんとするほど瞼をかっぴろげる。
しかし、撃たれた少女は少し仰け反っただけで撃たれた箇所が腫れる事無く先ほどと同じように微笑み返した。
「ちょっとォ!?」
「……わぁお、人間だったらどうするつもりだったんですかぁ」
「別に装填してたのは非殺傷弾だから脳震盪でぶっ倒れる以外問題なし」
「おぉい。意志を伝達する方法に銃弾を使うんじゃない。コミュニケーションしろ」
「は。了解いたしました隊長」
小さくため息を付いたのちに拳銃を下ろす。しかし、ホルスターに収めているわけではない。すぐに打てるようにしているのだ。
紫色の瞳と黒い瞳が交わる。方や笑い、方や親の仇を前にしたかの決意。
「で?わざわざ来たんですから皮肉を言うだけじゃないんでしょ」
「おぉ、話が速くて助かりますねぇ。要件はただ一つ……私の数少ない人間の友人が大怪我しましてね。まぁ、命に別状はないんですけどぉやってくれた連中に挨拶しておきたいなって」
「なら一人でやればいいじゃん」
そう、一人でやればいい。
身体能力は相手は上、そんじょそこら寄生体より発達した知性。
カチコミなど勝手にやって勝手に死ぬがいい。
「そもそも、人間の友人がいるってどうせ騙しているだけでしょ。なら、私は警察官として民間人を守るため貴女を撃つわ」
「……やってみますかぁ」
そう一言ゆずきが言うと瞬時に胸の宝石から石油のような液体が放出される。それは、彼女の体を纏い瞬時に露出度の高い衣服が現れる。
そして、彩の首筋に硬化した鞭を添えた。
「止めろ。こんな所で争って流れ弾が待合室に行ったらどうするつもりだ」
「ゆずきちゃんもね。ここで怪我したら彼悲しむと思うわ」
咲が彩の銃を、精華はゆずきの鞭の上に手を置き引くように態度に示す。
縛らく膠着状態に囚われた後、銃を下げた事によって緊張状態は開かれた。
一方ゆずきはさっきの一連の行動を観察していた。言葉通りに銃弾を頭にぶち込まれたことはともかく、反応速度だけはピカ一だ。それに比べて……。
ちらりと視線を向け、彩の後ろにいる部隊員は平和ボケをしている。
銃を撃つ前ならともかく、私が人間じゃ無い事に気が付いたのならせめてホルスターに手を伸ばすべきだろうに。
(まぁ、それでも数が多いと言うのは純粋に力ですからねぇ)
ふぅ、ゆずきは小さく息を吐き踊るような動作でテーブルに腰かけた。
「聞きたいことがある。何故私達の助力を願う」
「あぁ、挨拶ぐらいなら自分で出来るだろって事ですかぁ。それは否定しませんけどぉ、ちょっと厄介なことになってるんですよねぇ」
「厄介な事?」
「まぁ、それで困ったらちょぉど同じような組織にブッパしようとする集団がいるじゃないですか。だから、利用する手はないって思ったんですよ?」
同じような相手ね。
彩は数少ない証言から、彼女が言いたい事を組み立てていく。
少なくとも機械生命体の中で最上級の戦力を持つ寄生体相手に、喧嘩を売り尚且つ一回は逃げおおせる技量。
そして、私達が現在敵対している組織と言えば。
「ロシアの特殊部隊の事?」
「んー半々ですかねぇ。いえ、どちらかと言えばバイプッシュみたいなものですけど」
「は?」
「だから、厄介なことになってるんですよぉ。嘘だと思いなら隊長さんに聞いたらいかがですかぁ?」
ジロリ、室内にあるほぼすべての視線が咲に終着する。
そんな、目線を受けても動揺せずに口を開く姿は流石は隊長と言うべきだろう。
実はな――。その口調で始まった説明で辺りは驚愕に包まれていたのだ。
確かにロシア軍部隊を小隊するだけでもこんがらがっているのに、警視監である板垣貴行以上に権力を持つ法務省が関わってくる何て。
「ほぉら、わかったでしょ?バイプッシュだって。まぁ、どちらかと言えば黒幕は法務省なんだろうけどぉ、簡単に国家権力に喧嘩は売れないしねぇ」
「情報は確かなんですか」
「それは問題ない。映像付きだ」
「私からも事実と言うわ。家の名前は伏せるけどサイバーセキュリティ担当に、クラックしてもらったんだから」
……、静寂が辺りを支配する。
それはそうだ。まさか、こんな敵が出てくるなんて。
ロシアの特殊部隊は分かる。倒したとしても、そもそも何故入国させたのかと言う論点にすり返れるからだ。
けど、法務省となれば話が別。
これなら尻込みする理由もわかるし、利害が一致し共闘しようとする思惑も解る。
「ね?怪しい物じゃないですよ」
そう言い相変わらず微笑む彼女に向け彩は右腕を差し出して。
「杉野彩」
「はい?」
「杉野彩、私の名前。貴方の名前は?」
「んー、そうですねぇ。じゃあ、大由里ゆずきと呼んでください。あやさん」
そう挨拶を双方し、硬い握手を……彩だけは相手の腕を握りつぶさんと力を込めて交わした。
「因みに君の友人はどこにいるの?良かったらこっちで保護するけど?」
「誰が先輩の居場所を教えますか!」
くぅ!時間が無い。本当なら最後のセリフで(先輩……?と言う事は彼女より年齢が上。ゆずきのプラス5歳まで入院していた人物を調べろ)ってセリフが続くんですけど。
本当に申し訳ない!時間が無かったんだぁ!
◆基本的に私が予定掲載設定をするときは時間が無い時と覚えていただければ……。
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