39節 緋弓
最近、面白い小説とかアニメとか無いですかねぇ。ランキングになってるやつはゼンゼン自分に合わないんですよねぇ。今季のアニメとかもそういう感じじゃないですか。(何故か街中でバッタが出てきたりとか、常識的に考えてありえないだろ……)
愚痴は置いといてやっと二人目、いや三人目と邂逅した海斗君。
一体どのような展開になるのか楽しみにしておいてください!良いですね!!
「……何が?」
どっと汗が出る。熱が廃棄され難い地下空間で季節は夏、汗が当然出てくるのは当然だが今海斗を支配していたのは蒸し焼きの様なねっとり感ではなく心臓を掴まれたような凍る震えだった。
どうしてだ!?口から出そうになった言葉を必死に口を押える事で留める。表情は……見られていない。揺れる瞳孔もやや湿り気がある呼吸も、背にした柱が壁になって摂られていないだろう。そう思いたい。
そんな心情をしらん態度で、ほんとうにわからないの?と声色で語りかけてくる。
「貴方、中が二人いるって言ってたわね。その中に三つ編みの子がいる?いるんでしたら直ぐにこちらに引き渡しなさい」
「……は、は?――こんな時に冗談をおっしゃるつもりですか。笑えないな」
ポーチからスポーツ飲料を取り出し口に含む。お互いに姿は視れない、だからこそ神経質に相手の出方を伺うのだ。
「貴方が落ちてきた際、腕を掴もうとしたのでしょう。フェンスから身を乗り出す彼女が視えましたの……一緒に胸で光るコアも」
「!?」
「あれは機械生命体の一種、寄生体で間違いありませんわ!あれだけの知性を持っているなんて……今なら間に合いますわ。貴方を保護して彼女を倒しますわ」
ヤバイ。バレている、それも最悪な方向でだ。
衣服を着用し直し立ち上がる。ホルスターに腕を乗せ何時でも相棒を抜けるようにしながら。
「倒すって?」
「正確には捕獲するが正しい言い方になりますわね。寄生体は貴重ですから……そうね、実験施設に送られるっじゃないかしら」
「へぇー」
「そうだ。貴方、彼女の場所を知っているわよね。案内もしくはおびきだしてくださる?」
「あぁ、それは――」
俺は柱の影から体の全体像を出した。優しい瞳が射貫く。まるで迷子の子供を保護する人みたいに、自分がダレかを救えると信じてやまない目。
けど、俺は礼を家族と認めたんだ。
俺は大切な人をこれ以上失いたくない。
大切な人と毎日を過ごしたいと凡庸な夢を持つことすら、世界のために犠牲になってくれと壊そうとするのならば。
俺が行う選択肢は一つだ。
瞬時にグリップを握り銃口を向ける。引き金に添え鈍い輝きを持ってして相手に狙いを定めた。
ヴェロニカは一秒ほど笑顔の状態で固まったのち、目を細めて淡々と「どう言うつもりですの?」と問いかけてくる。
「態度でわかるだろ?それとも口に出さないとダメか。……絶対にい!や!だ!!」
強い意志を持って相手の願望を衝く。
この宣言をしたと同時に彼女と俺は敵対関係に等しい状態になるだろう。けど、そんな覚悟は話を聞いてる間にしてるんだよ。
「貴方、言ってる意味を理解して発言してるのかしら?ロシア部隊を只の傭兵が相手をするつもりでして。狂いまして?一度精神病院に――ッ。く、ホントにぶっ放してきましたね」
「今、お前を黙らせれば済むことだ」
見た感じ所持品は大きなジュラルミンケース以外にはない。耳に金属光沢が無いからインカムも装備してないのは確認済みだ。
そして、あのふざけているとしか見えないコスプレ衣装にはポケットは無い。つまり、あの大荷物を開ける前に行動不能にさせればいい。
ちょうど聞きたい事があったんだ。情報を得るために生け捕りにしよう。そう思い、両手でガッチリとホールドし銃を撃つ。パンパンと子気味良い炸裂音と排莢された薬莢が地面を跳ね独特の金属を鳴らす。
圧倒的有利な状況。そのはずなのに。
『え!?躱した』
「やろ」
「いい加減にしなさいな!」
致命傷を避けるためとはいえ、腕足に向かって行った弾丸はキッチリと回避されていた。
ふざけ、湿度も一定で無風な近接空間内で視てから回避余裕でしたなんて現実的じゃあない。狙撃で光るのを目撃して伏せて回避できるのは、狙撃銃が発砲した際に発生する発火炎によって生じる光が放たれた弾丸より早く対象に届くからであって五〇メートルのない距離ならほぼ同着だ。
いや、まて。まさか……。
――秒速三五〇メートルで飛翔する鉛が視得て居るのか?
そんな人間離れ――ッ。
そう、叫ぼうとする瞬間ある可能性が浮かび上がったのだ。
いや、待てと。言動からみても外見でも違う。けど、俺は体験してるじゃないか。
銃弾を体を反らすことで回避した鞭を使う寄生体を。
脳内会議で結論が出てから行動に移すのは早かった。瞬時に射撃を辞め、再びコンクリートで出来た柱に身を隠す。
「やっと大人しくなりましたのね」
「弾の無駄だからな。誰だお前」
ちらりと物陰から頭を出し相手を視る。ヴェロニカは絹のようにきれいな赤い髪を揺らし、まるでしてやったりとした態度で仁王立ちしている。
「で、無駄だと理解してもやめないのかしら」
「辞められるのか」
「そんなわけないでしょ」
そう言いドカっとジュラルミンケースを地面に置いた。そうして彼女はダイヤル錠を蹴り壊す。
反動なのか初めからそういう設計なのかはわからない。しかし、内側から内容物を支えるクッション材が展開。中身を持ち上げたのであった。大事に保管していたものが俺の目にも飛び込んでくる。
「弓……?」
それは装飾された長弓であった。一メートル三〇ほどの大きさで造花が所々にちりばめられている。戦術的有利のない飾り。いや、そもそも銃社会である現在において即応性、量産性、練性ともに劣った紀元前の武器。
もし、ここに一般人が居るのならば彼女の事を嘲笑しただろう。銃相手に弓が敵うものか。
それは正しい。いくら避けれると言えど重く取り回し難いエモノでは閉所では不利になるのは当然だ。
だが、そんな事お構いなく虚空から生み出したオレンジ色の矢を番えた。
弦が矢を絞るほど力強く発光し、反作用で放たれる。
俺に出来ることは、全力を持ってして顔を引っ込める事だけだった。
バシュンと綺麗なホームで矢穿とうと前進してくる。ヴェロニカの手から離れた瞬間、矢じりが不自然に延焼してのだ。まるで、たいまつのように轟轟と燃えるそれは柱に着弾し。
爆ぜた。
グレネードランチャーをぶち込まれたみたいに派手な音と爆風を持ってして柱に大きな凹みとヒビを与える。
「くうぅ!」
背中から伝わる衝撃を背を丸めてしのぐ。
光の矢?いや、どちらかと言えば炎の矢か。あれは科学的なものではない。実物があるわけでもない。
けれど、幻覚とは言えず実際に干渉する能力を持ち得ている。つまり……魔法って奴か。
いやな事ばかり起きる。
左腕に取り付けられたプロテクターを叩いて展開。ナイフシースルが開き柄が現れる。
大型のサバイバルナイフ。通信販売や店でも売っているような一般的な材質で作成された武装。こんなものを今更取り出したって抵抗は出来まい。
普通なら。
「大人しく降参しまして。しないなら手足の一部が炭化することになりましてよ」
「それはもっと嫌だな」
「なら、仕方ありませんね。穿て!」
(……使うかこれを)
一呼吸。脳に酸素を取り入れ切り替える。気分をではない、視界を入れ替えるのだ。
まるで、チャンネルを変えるように今まで繋がっていた線が強引に外され違う回路に接続されていく。
鈍く痛む頭を振り切って放たれた延焼する矢に向け駆けながら、瞼を開き赤い瞳をあらわにした。
ゴッと開眼させたと同時に人には感じ取れない風が吹く。それは、まるで背中を押す手のように海斗の体を前進させた。
変貌とした視界の中、俺は冷静に矢に向かって焦点を当てる。本来ならば切れるはずもない、いや振れた瞬間に爆発する脅威に逆手で持ったナイフで光る点を両断するように振りかぶった。
「セィ!」
「な」
爆発して腕が千切れ跳ぶそんな未来が思い浮かぶだろうがそれは無い。刃が触れた地点から糸がほどけるかのように効力を失って矢は無力化されたのだ。まるでバターを切るかのように。
斬られるとは思って居なかったのだろう。思考の空白化が生まれる。その隙を逃すほど海斗は子供では無かった。肩から斜めに両断するためにナイフを持ち直し飛び上がりながら叩きこんだ。
がしかし相手も軍人。自身の眼前に迫った金属光沢のきらめきで正気に戻り持っていた弓でナイフの一撃を防いだ。
「ぐぅうぅぅ。何者なんですの貴方!私の緋弓を斬るなんて」
「只の日本人男性だよ」
「これは、貴方も確保しなければ無りませんね」
ヴェロニカは自身の身体能力を持ってして強引に海斗を弾き飛ばす。
お互い距離を取り仕切り直し。
両方とも姿を視界外に外すことは無く油断もなく見据えていた。しかし、海斗だけは視線の一部が弓に注がれている。
(弓に付けられた花を模した装飾品。あの中心部分に取り付けられた宝石から独特な波形を放つ光が視える。あれを壊せばいいのか)
先ほどの鍔迫り合いの際、海斗は否応なく彼女のエモノである長弓が眼に入っていた。魔眼を使う前ならわからなかっただろうが、今ではサーマルカメラのようにくっきりと見えていた。
もしあれが寄生体と同じものなら、鞭の奴と戦った時と同様に宝石にダメージを入れられれば戦闘不能に出来るのでは無いだろうか?
いや、もう悩んでいる暇などない。魔視の魔眼を使える時間は五分ほど、もし超えれば俺は激痛によって気絶し礼も囚われてしまうだろう。
だから、微かな希望へと走り続けなければならない。
「わかりまして。致し方ありませんが、少し本気を出させていただきますわ!」
虚空から同時に三つの矢を番える敵。ギギギと獣のように唸る弦から発射される矢をスターターピストルの代わりにして少年は駆けだした。
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