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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第4章 不毛に響く白鳥の歌
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144節

 ぜぇはぁ、荒い息を上げ発生した汗を自らの体温で蒸発させながら細い路地を走る少年と少女たちが居た。

 再開発されたと言ってもすべての住人が立ち退きを許容したとは言えず主道路をそれれば、無造作に作られた住宅地が現れる。

 本来であれば狭い通路に逃げるなど逆効果だ。建物が崩落する可能性があるし、火災などで袋小路になる可能性もある。だが、追われる巨人を撒くためには障害物が多く視界が効きにくい路地を進む必要があったのだ。

 ゲホ、唾液と共に水が喉から逆流してくる。走りながら飲水したがために気管に入ったのだろう。乱雑に拭い空になったペットボトルを宙に翻させた。


「ねぇ、そろそろいいでしょ。こっちには小学生だっているのよ?もう、立ち止まっても」

相手(バケモノ)が年齢で手を止めてくれると思うなら止まればいいと思うが?」

「でも、私はともかく……彼女達は日常をいきなり破られて男にレイプされた後休む間もなく追いかけっこなの。貴方たち強いんでしょう、ならちょっとぐらい」

「無理だね。僕たちは確かに身体能力に秀でてる自身はある……けど、あくまで人間だから。それと、派手に動けば動くほど寄って来るよ」


 そうだ、今この瞬間足を止めてしまえば比喩表現無しで津波となった機械生命体が寄ってくるであろう。

 奴らに嗅覚や視力や聴力が備わっているのは既に明らかになっている。

 既に断続的銃声を鳴らし、ましてや餌となる魔法を短期的にとは言え使ったんだ……先ほどの広場に集まってくるはずだ。

 そいつらを突破するほど、武器や弾薬や装甲車両等は持ち合わせてないし。仮に所持していたとしても天然の縦深防御を抜く可能性は低い。


 俺は寄生体や魔法少女を機甲部隊と例える場合が多い。

 マナを使った防御力、車すら壊す破壊力、車と並走できる速力、背丈が人間と変わらないため入り組んだ場所は重量制限が掛かる不整地でも進行できるのはもはや戦車を超えていると言えるだろう。

 だが、弱点が無いものなど存在しない。

 それが補給だ。食料、電子機器の電力、医療品、疲弊した場合の交代要員。特に交代要員の高さが愚を抜いて超えている。

 どれだけ強い存在であろうと、疲弊はする。いくら強くて固くて速かろうと、動けなけれな意味がない。

 本来であれば、その持久力をカバーする随伴歩兵が居なければならないのだが……こちらに居るのは随伴すら怪しい足手まといのみ。


「まぁ、安全な所に行くまでダッシュですかねぇ」

「安全な場所って?」

「警察が居る場所。出来れば……な?」


 さて、警察と言うのは縄張り意識が強い。

 もちろん、何かしら大きな事が起これば他の管轄と共同で動いたりするが逆に言うと事が無ければ動かない。

 つまり、俺達はこのエリアの警察がどのような動きをするのか知らないし……担当エリア外の傭兵が戦闘行為を行った場合どのような事を嚙まされるかもわからない。

 避難もただでは――。


「兄!12時方向下り坂」

「ッ止まれ!」


 ドローン索敵を担当していた妹が声を荒げる。

 北関東は山岳地形が多く、都市開発されたとしても高低差は激しい。

 坂道上にそれも下りなら死角になって見えない。


 ズサァ、いきなりの急ブレーキに脈拍が強く波打ち吐き気をも要すが堪え何とか止まる。

 先頭に居る礼と舞、それと茉莉もきちんと止まるが。


「おい!待て!!」


 後ろから追い抜く小さな影が一つ。

 荒い息を繰り返し吐き出しながら小さなポニーテールを揺らす一人の少女が、身を飛び出していた。

 横目で擦れ違う中、体力の限界なのであろう……必死に走る事だけを考え瞼を閉じ走り去ってる。

 唯一反応出来たのは警察学校に通っている隻眼の少女だけだった。

 必死に手を伸ばし、呼び止めようとするが指が背中を撫でるだけで。


「あ」


 少女を止める事はなく、逆に少女のバランスを崩しながら坂道を転がり落ちる結果を引き寄せてしまったのだ。


「おい!くそ、だから嫌なんだ引率は!」


 セーフティを下げ、飛び出す海斗の視界には……前方にうごめく中隊規模(30体)の機械生命体集団が。

 ごろごろ、と転がり仰向けに敵の前に止まる少女。


「っ!」


 こちらは気が付かれていない。運が無かったんだと見捨てて逃げた方がいい……だが。

 チラリと後方集団へと視線をやる。

 軍事訓練を受けてない素人集団に、見捨てる様を示したら指揮崩壊が起こる。最悪錯乱して暴れる可能性も。


「くそが」


 バンバンバン、セミオート射撃で性格に腕を狙って振り下ろされそうな脅刃を必死に抑え込む。

 やはり、5.56mmの射撃だけでは有効打を与えられない。

 寝転がる少女は動かない、ガタガタと怯え失禁する様はまさに蛇に睨まれたカエルだ。


「とっとと動け!」


 カチン、弾切れ。

 AKシリーズは弾切れになってもホールドオープンはしない。切れたのが理解できるのは軽くなった引き金を引いた後だ。

 万事窮す。

 無残にも、少女に向けて刃が振り下ろされて。


「私が、来た!!」


 る、前に化け物の上半身が泣き別れした。

 少女の前に立つのは同じく少女。

  黒髪に金色のメッシュが所々に入りポニーテールに後ろを流している。服装は胸元を大きく開いたレオタード風の衣装であり、青、黒、金の三色を基調としたファンタジー世界にあるようなドレスにへそ部分には花のようなリボン。

 そして、左肩にはマントのようなものが取り付けられていて右手に構えるのはまるで棒ロボットアニメのビームナギナタを連想させる。

 足にはスケートシューズのような刃が装着されていて左手を天に掲げ宣言する。


「魔法少女。ここに見山!」


 怪物から守るように自らの獲物を構える姿(アネモネ)は、まさしく正義の味方であった。


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