142節
最近は、新しい小説を書こうか迷っているこの年頃。
「あそこか」
何度か戦闘を行い、人だったものを何十個も作っていく。ぺちぺちと小学生が作るような粘土細工のように散らかる。
後方で泣きわめいていた声はもうない。
慣れた?いや、そんな事はない。単純に現実と言う圧力に耐え切れず心が割れただけであろう……それが良い事とは思わないが、射殺に集中することが出来るため海斗には都合が良かった。
ボロボロになった路線、垂れ下がりショートしている電灯、まき散らされた消化機と強化プラスチック編を乗り越え時に回避し、襲ってくるテロリストを確実に殺害しながら突き進めばついに出口が見えてくる。
閉じた改札口を飛び越え後ろに続く弱った少女たちに手を貸しながら通り過ぎ、今シャバの空気を前身に浴びようと扉を開けて。
「あー……うん。だろうね」
飛び込んできた光景に避難民たちは唖然としながら目を見開いた。
「なるほど……リニアが突っ込んで崩れかけてるショッピングモール内で年端も行かない少女相手、おっぱじめて頭がいかれてると思ったが」
辺りには、人の死体が散乱していた。体に穴が開いた綺麗なものではない、人が強引に千切れ飛んだかのようなものではない……言ってしまえば捕食跡。
ぐっちゃぐっちゃと砂遊びをするように、裂いた腹から臓物をいじくりまわす異形がこちらを振り向く。
血化粧を施した白銀の鬼がこちらに手を上げて
「ッ!」
魔視の魔眼を即使い、展開された魔法を認知。魔力の流れから弾道を検知し、放出される前に放たれた凶弾を発砲した鉛玉でずらす。
ガキン、いくら攻撃が強力であろうとも当たらなければ意味がない。ピカピカと眩しい閃光は俺達の横を吹っ飛び後方の出入り口を粉砕する。綺麗に瓦礫で埋もれたのを見て、もう撤退は出来ない事は確定的であった。
「ワイルドハントのウル……だと」
「これは、また……。空中にマソがたんまりないと存在を維持できないバカ燃費機械生命体がこんな所に要るとは……紅茶を決めても厳しいかもね」
「何、どうなって」
「何って、簡単な事だよ……僕たちの地獄は終わらないって事――さっ!」
少年少女たちが持つ銃が一斉に火を噴いた。
『こちら、旧栃木警察署所属。機械生命体が出現し、対処困難至急増援を……がぁ!』
「っ、間に合わなかった」
無線に時たま流れる悲鳴と救難要請が少女たちを背を押し出す。
魔法によって強化された脚力をもってして、外壁ですら道路として利用する……その姿はまさに正義の味方。もっとも、格好がビキニだったりドレスアーマーであったり見る人が見れば頼りなさを感じるだろう、しかし少女たちはまさしく希望で唯一絶対の魔法少女であったのだ。
「霜ちゃん、これって」
「えぇ、たぶんあなたの予想通りでしょう。コンテナの中に入れてましたね」
テロリストの襲撃と共に現れた機械生命体。明らかに自然発生した量と質ではない……であれば何処からか持ってきたのは当然の摂理。
リニアモーターカーは戦車や装甲車はもちろん、対大型機械生命体用二足歩行兵器ドールすら積み込めるコンテナ車を兼用した車両だ。
超電導によって編み出された半浮遊状態は文字通り積み込み量を倍増させる。つまり、高度経済期で作られ老朽化したインフラでも小改修をもって重版物を高速で運搬できる。
また、前面に使用されているのはカーボンナノチューブで出来た新素材の軽量装甲であり重機関銃程度の弾丸は貫通不可の装甲を持つ。
そうであるが故に、大量の機械生命体を乗せても問題は無かったのだろう。
「乗っ取り、ハッキング、線路爆破……色々な事を想定した結果。現在、この地域に居るハナズオウは私達2人だけです。あと、サラッと本名を呼ばないように気を付けてくださいね?アネモネ」
「とっとと、ごめんなさいスノーホワイトさん」
両刃刀をクルリと回転し擦れ違いざまに羽虫を切り捨てるアネモネ。
遠距離攻撃が無い2人に対して、空中に浮かぶ敵は厄介極まりない。
スノーホワイトは、看板を引き抜き糸の遠心力でぶつけたり等をしながら叩き落しているが圧倒的に数が足らない。
「そちら、どうなってますか」
『こちら、機動隊。道路がふさがって車両が通貨できません』
「ヘリは?」
『SSが装甲ヘリを持っていますが……まだ機種転換が出来ていなく。我々も、1週間前に更新したばかりですので』
各地で、警察官による奮戦が起こっているのは鼓膜が届ける銃声から言われなくてもわかる。
やっとの事でダッシュボード内にアサルトライフルが配備されるようになったが、本体の配備だけで弾が無いと言う悲惨な状況になっているらしい。
急激な機種変換に予算も人員も足りていないのであろう……訓練もせず適当にばら撒いて散っているのが現状のようだ。
「傭兵は?」
『どうやら本部の連中が要請していないようです。大方、新しいおもちゃで遊びたかったのでしょうし縄張り意識が高い警察にとって助力を請うとか無いでしょう。もっとも、前線を傭兵に任せ後方でさえずるだけの奴らですので結果はお察しですがね。あ、今のオフレコでよろしくお願いします』
「……」
思い出すのはあの時、高校生の民間警備会社所属者を事情聴取した時だ。
助けられたのは我々だというのに守るべき市民に横暴な態度で、尚且つ所持武器を略奪しようとした姿……あんな事をしながら結果はこれなのね。
『軍は基本沿岸防衛に張り付いてますし援軍は最低4時間は掛かるかと』
「……了解、ではこちらで動きます。アネモネ!」
「ふっ、はぁ!何、終わ、よぉ。った?」
「えぇ、我々は後続の警察官を待たず中央部に……リニア終着点に向かいます。行きますよ!」
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