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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第4章 不毛に響く白鳥の歌
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127節 オリジナルコア

 

「さて、オリジナルコアについて話していこうか」


 話しながらテキパキと準備していき、タブレットを見せてくる。トントンとマニキュアを塗っているのだろうか、光が反射した指で画面を軽く叩く(タップ)

 もう、女性として順応してるじゃねぇか。

 と、俺は思いながら見せてくる画像に視線を動かした。


「オリジナルコアと言うのは9年前に各国に飛来した要塞型心臓部にある寄生体のコアさ。要塞型は……要はデカくて空に浮く舩、超時空要塞みたいなもんだよ」

「それ、兄と私しかネタ分からないよ?」


 確かに飛行するやつはいるが三段変形する機械生命体はいないはず。いや、何ジョークを真面目に捉えてんだ。

 けれど、空に浮かびバカでかい要塞か……。

 液晶に表示されている物に視線を落とす。有機的な肉壁を包むような無機質な装甲……窓のように無数に取り付けられた眼球に何故生えているのかわからない腕。ミミズが偶然集まって出来た絵画と言われ方がしっくりと来る歪さだ。でも、確かに俺は見た事がある。


「なぁ、それって黒くて表面に血管見たいのが浮き上がり発行してる2kmほどの奴か?」


 記憶の引き出しにしまっておいたものをひっぺり出して話す。


「あれ?知ってる?一応、秘匿情報なんだけど」

「見た事あるからな」

「えぇ!?よく無事だったね。絨毯爆撃直下で生きてるようなもんさ。実質的には振ってくるのは爆弾じゃなくて、魔法で出来た砲弾と機械生命体なんだけど……その内部で見つかったコアがオリジナルコアと呼ばれているのさ。もっとも、大事にしまわれていたと言うよりは吸い取られていたのが通説なんだけど」


 つまりは、寄生体はオリジナルコアをもとにした廉価品だと言う事なのだろうか?

 だと言うのであれば、それほどのスペックを持つ劣化版をばら撒く理由は何なのだろうか。マナを回収し充電するためのバッテリー目的か?だが、襲来当初には分解前のマソは存在しないはずだが。


「基本的にこの要塞型は、人口密集地から一定距離離れた場所に出現。一直線に進行していくんだけど……世界各国に出現したコイツから取れるオリジナルコアはそこまで希少とは言えないのではないか、そう思わないかい?」

「いや、思わんが。でも、そうか……基本的に1目標に1つずつ出現するのであれば人口が多く密集しているのが狙いなら、日本より人口が多い中国インドアメリカが多く持ってるのが自然じゃないか?アメリカだって東海岸にあるだろうに、わざわざ日本で……」


 9年前に被害を受けた都市は世界に多数あるが、日本では東京……茉莉が言う事を加味してより正確に言うのであれば東京神奈川沖だろうか。それ以外では実はあまり被害を受けて居なかったりする。

 つまり、日本が所持できるオリジナルコアは必然的に1つへと絞られるはずだ。

 だがニュースなどでは、世界各国の都市が焼野原になったり最悪核を使ったりと、ひっきりなしに報道されていたのを当時は妹で無かった舞と一緒に野戦病院で治療を受けながら見た覚えがある。


「さて、ピンチになった時に使う人類の切り札的兵器があるだろう?そう!水爆だね!基地(ICBM)海上(SLBM)とせっかく作ったのだから残すなんて勿体ないとばかりに、多数発射された其れは要塞型を撃破し無事……とは行かなかった。何故だかわかるかい?そこのボケっとしてる花嫁(れい)くん」

「僕かい!?そう、だね。核の集中運用によって文字通り、オリジナルコアが蒸発したからじゃないの?」

「理由の1つ目としては正解だ。後は迎撃場所が海の上で海中に沈んだり、地上であっても放射能汚染の影響で回収が実質不可能(200年後予想)とかで実はコアは10個しかない」


 それがこれだ、と画面に国旗を見せてくる。

 アメリカ、イギリス、ドイツ、ロシア、中国、インド、日本でありその中で米露中が二つずつ所持している。また英独は、欧州連合(EU)預かりとなっている。

 そしてオリジナルコアの一つが、国連常任理事国であるアメリカが作った国連組織機械生命体対策本部に自国の提出していたと。だが、その組織はのちに離反し天使の教会としてテロ活動を行う事になる。


「アメリカは露中の関係上もう失いたくはないし、EUもロシア内戦の影響で運用は慎重だ。そりゃ、原発10台分ぐらいエネルギーがあるからね」

「は!?礼が」

「うん、ドールに積まれているのもオリジナルコアの劣化コピー品だ。だから配備数が少ないって話が逸れたか。ともかく、ある程度危機感が無くて色々やれそうな日本に矢が立ったんじゃないかな?技術力もあるから、そこまで懐痛くならないでしょって」

「でもですよぉ、それが何で貴女達に関係があるんですかぁ?」


 と、今まで蚊帳の外であったゆずきが紫色のサイドテールを揺らしながら机に乗り上げる。

 聞いているだけだとアメリカが技術の試験的運用のために、日本の資金とオリジナルコアを利用しただけだ。青天の霹靂にはならない。

 疑問に思っていると、茉莉は皿の上にあるパンケーキをフォークで勢いよく突き刺し。


「そりゃ、裏で通じてるからね当たり前でしょう。この生クリームのようにべったりと……しつこく、ね」


 突き刺したパンケーキの上に、ナイフですくった生クリームを塗りたくりそのまま租借する。

 唇の隙間からフォークを抜き、ね。っと軽く揺らした。


「……そう言う陰謀はマスターとの経験で色々わかるようになってきたけれど、その根拠は?」

「ふむ、礼ちゃんにわかるように説明しよう。君は現代医療についてどのくらい知ってるかい?マソとマナの発見により再生科学は大いに発展し、既存のクローン技術を応用した再生医療なんかも出来た。実際に腕が生えてくるんだ、そりゃ負傷者が多い軍人にとって天からのニ物だろう?」


 それと同時に、再生における細胞分裂の加速。つまりはクローン兵士を作成、急成長させることが可能になった。一部の特権階級の持ち主は自分の予備パーツ作成はともかく、そう言ったいかがわしい目的で遺伝子改造された性奴隷があるとの話だ。

 もし、そのような事を可能にするならばきっちりとした設備が必要不可欠。

 だからこそ、テロ組織と認識しながら利便性が高いがゆえに切っても切り離せない関係があると。


「日本が持つオリジナルコアを使ったのは、ネームレスの主張。自らのみ進化し旧世代の人間を支配する……その支配者の器を作るためなんだろうね。保険くらいはかけてるんじゃないかと思ってたけど……初めてあった時様子はどうだった?」

「……そうだな。少し機械っぽい印象があったが」

「なら、本当に機械が入ってたんじゃないかな?機械生命体はその名称通りに無機物でさえ侵食していくからね……基地を襲撃したドローンも接続用のコネクターが少女の首筋にあったし同様なんだろう。道具は道具とし使う考え方だね。気味が悪いね」


 はははっと笑う茉莉に、俺はお前も性奴隷として使ってたじゃねぇかとと言う言葉を出そうと思ったが引っ込める。

 確かこいつは相対したときに、人形は人形だが自身で物を考え実行することを目指していたはずだ。マリオネットドールなんて大層な命名を付けて、必死に作った完成品が翡翠なのだろう。

 なるほど……それでは考え方が合わないわけだ。


 空になったお皿を重ね、立ち上がる。朝食もちょうど食べ終わったところだ。

 こちらの意図に気が付いたみんなも同様に立ち上がり、部屋を経つ。


「それじゃ、何処に行くかい?決まってるだろうけど」

「そりゃ、純玲さんがいる病院だよ」

「うん、じゃ善は急げだ。会計しよう」


 注文票一覧が挟んであるクリップボードを持ち店員がいるカウンターへと歩みを進め。


「あ」


 右肩から驚愕の声が聞こえてくる。瞬発的に振り向けば。


「お久しぶり!」

「一華、貴女はお店の中では走ら……あら。ゆずき」


 茶色い色をした髪を振りながら、少し駆け足で詰め寄ってくる。

 その後ろに慌てて追いかけたのか三つ編みのハーフアップにした緑髪と瞳を揺らし、ワンピースを着た少女を見て。


「……やっべぇ」

「ふーん、なるほどね……面白いじゃないか」


 後ろにいる茉莉に視線をよこしながら、魔法少女である一華と霜に視線を合わせるのであった。


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