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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第4章 不毛に響く白鳥の歌
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125節 痴情のもつれ

「んっ、うーん」


 少女の朝は早い。ブーブーとバイブするスマートフォンを何処にあるのか手探りで探し当て画面をなぞる。

 目を軽くこすり体にかけていたタオルケットをどかし、息を吐き出しながら腕を伸ばし血流を促進していく。

 ぽわぽわとした気分ながら、ゆずきは立ち上がり洗面所にかけていった。

 歯磨きをし、シャワーを浴びて汗を流し、紫色の髪をとかし終わったのち右側にひとまとめにしてサイドテール。

 ドライヤーで乾かしながら、寄生体と言う人間より上位種の特権を生かしスキンケヤなどは行わない。


 胸の下やお腹など、タオルで拭き終わってからは衣服の選択だ。女性で、恋する乙女たる私は一番重要なものである。

 先輩である海斗さんは、服装などに執着しない。何時も迷彩服のようなものを着ているし、視力が弱くても日常生活で眼鏡はしない。

 だから、こそ。かわいい見せ場と言うものだろう。


 私は、フロントフォック式のブラジャーに両肩が露出しているオフショルダー。Tバックのショーツにホットパンツと。

 最後にサイハイソックスとシュシュをブレスレットにして、自分の身長を超える姿見で外見を確認したのち扉を開き廊下に出るのだった。


 6時半と言うのは社会人的には、平均的な起床時間だと思うが本警備会社では社内を動く人影は少ない。

 私のように早く起きた人用に食堂で準備をしている保護した少女たちか、住み込みで働いている人しかいないから。

 かわいい少女がもてなすレストランも警備会社の開店時間と同じ10時からの始まりだ。

 学校は昨日と同じで休校中だしここはひとつ、寝起きで襲ってしまおう!


 私は胸の宝石に手を当て意識を集中させる。契約している私達寄生体は、コネクターの居場所がある程度まで把握できる。精度は距離とか気象条件とかによって変わるけれど、同一上の建物であれば問題ない。

 居場所は……訓練所?確か、もともとは音楽ホールだったものを改装して体育館のようなものにしたんだっけか。

 少しヒールが高いショートブーツを鳴らしながら廊下を進んでいく。エレベーターを乗り継ぎ、両開きの扉をちょこんと押して瞳を凝らした。


「はぁ!」

「っと、あめぇ!」


 そこには、防具を着込み立ち会う偉丈夫にゴム製のナイフを突き立てようとした勢いを利用されて投げ飛ばされる一人の少年。

 クルリと受け身を取りながら立ち上がり、右手にナイフを左手は胸の前に少し出し構えなおした。


 そして、視界の端に見える礼は夏が持つサンドバックに鋭い前蹴りや一回転しながら蹴るサマーソルトなどを繰り返している。

 唖然としている私の手が触れたのか、ギィと元ホール故に音が響き発生点に視線が集まる。


「あ、おはよ。今日は家じゃないから早く起きなくてもいいんだが」 

「えっと?先輩何をやってるんですか?」

「なにって、訓練だが」


 チラリと組み手をしていた大柄の男性……確か獅子王陸と言ったか、ジロリと紫色の瞳を向けると大きく頷いた。


「まぁ、色々あったからな。元々、訓練自体は家でしてたんだ……銃の免許取得とかもな。で、社長は未成年を巻き込みたくないって考えなんだが、どうもそうは言ってられない雰囲気(うんめい)なんでな。しっかりとやっておこうと思ったさ」

「朝から起こされて連れてこられたのはびっくりでしたけど」

「だから、悪かったって。社長が起きちまう前に観ておきたかったのさ」

「で、僕たちの腕前はどうなの」

「そうっすね……海斗君は、正規兵1年目って感じっすか。礼ちゃんも鋭くなってますし、確実に尚且つ急速に成長してると思いますよ。前は訓練生としては一貯前って評価でしたからね」


 はぁ、と湿った呼吸を漏らす礼や海斗の周りには現代戦には似合わない武器が転がっていた。

 気になって持ち上げてみると……刀?こっちは薙刀、こっちは鎌と近接武器の嵐だ。


「えっと、何でこんなのがあるんですかぁ?」

「ん?あぁ、良く思い返してみたんだが寄生体が扱う武器ってのは基本的に接近武器が主体なんだ。まぁ、射撃武器にすると細胞を消費するからだと思う。要するにリアルロケットパンチを人間で出来るかって話」

「そう、だから最終的には物理だ。魔法でもいいんだろうが、やっぱり質量がある分()()()()()んだろうな」


 確かに、矢をつがえ炎を飛ばすヴェロニカさえ緋弓が本体であり、わざわざ魔法を矢と加工してから発射していた。

 寄生体は銃弾をものともしない障壁を持ち高い機動力もある所謂戦車である。

 それゆえに、銃は軽視されているし接近戦の間合いに持ってこうとするだろう。

 そして、先輩が持つ魔眼も手で触れている箇所にしか効果がなく無力化出来ないとなれば、双方有効打を与えられる接近戦になるがヒツゼン。


「はぁぇ」

「嬢ちゃんもやってみるか?」

「えっ!?……わかりましたよ」


 そうして私も否応なしに参加させられるのであった。


「あーぁー」


 寝転んで大の字に体を伸ばすゆずき。その表情は何処か高揚している。

 柔道の寝技をした際、きつく拘束したことが彼女の加虐体質と窒息におけるドーパミン中毒に火をつけ快楽へと変換してしまったらしい。リアルで縄くくった奴は違うと言う事なのだろう。


「まぁ、意外と動けるみたいだな」

「なんかやってたんすかね?」

「陸さん、多分バレエじゃないですか?親戚の人がバレエをやっていて幼いころ見たことがあるんです。戦闘服のヒールも9センチぐらいありますし」


 ゆずきの蹴り技にはどちらかと言えば荒々しさと言うか鋭さが無い。逆に優雅さに溢れていた。

 そう言えば、天使の教会施設との戦闘において戦闘員の頭部に横蹴りを叩きこんでいたのも、動きがオーバーなのもこの影響か。

 大方、お嬢様学校の際に箔をつけるために習っていたと言う事なのだろうか。


 ふぅ、身体にたまった二酸化酸素を吐き出し袖で汗を拭う。

 びくびくと体を小刻みに振動させ口の端から唾液をたらすゆずきを見下ろしながら、俺は壁に掛けられた時計を見上げた。時刻は7時、朝ご飯にちょうどいい感じだろう。


 あへぇと表情を崩すゆずきの脇を持ち無理やり立たせ、夏と陸さんに頭を下ろす。

 何となく、礼の頭を撫でながら扉を開くと……白衣をはためかせ仁王立ちをする純玲の姿がそこにある。


「で、わかったやろ?あの痴女を、いろんな液体漏らして仕事大変やわ」

「お、おう……」


 マジックミラー越しに見るタナトスの姿に俺達は愕然としていた。

 ベットの上でびくびくと震え、元研究者と聞かなければ危ない薬を決め込む少女か……或いは髪の色から発情期の兎を連想させている。


「僕も強いけど……あそこまではならないかな」

「なにこれぇ」


 余りにも外聞が無い醜態に、寄生体である礼もゆずきも上半身を引かせる。

 一体どうしてこうなったのであろう。


「君は、聞いとるんやろうが……もともと寄生体は子孫を残す欲求が強いらしいんよね。故に、身体にそう言った機能を施してたみたいってのは」

「聞きましたよ」

「うん、で。彼女は、胸のコアを見てもらうとわかるんやが色が混じってるやろ?つまり、元々性奴隷として運用してたものに無理やり魂を移したもんやから、こう……なんか変な反応を起こして性欲が累乗されてるんやと思うわ」


 はぁ、机の上に座りタイツに包まれた足を組む純玲。

 どうやら、このような醜態は捕らえられたすぐに始まっていたらしい。初めの方はコミュニケーションは可能だったが2時間ほどたつともう盛った獣。

 あの保護した天使たちを累乗させればこうなることも必然だったのだろう。


「それで、純玲さん。俺を読んだのは一体どのような理由なのでしょうか?」

「それはやな……達磨の女の子がいるやろ?それを、生き長らえさせるための装置がちーと複雑でな。故にこいつの協力が必要やねん」

「つまり理性的にしゃべらせるようにさせろと。どうやって」

「そんなん君が部屋に入ってマソ補給させたらええんとちゃうん?」

「「はぁ!?」」


 バン!とソファーを叩きながら前のめりになる少女たち。

 飢えたライオンの檻に入れと言われたらそのような反応になるのは必然だ。


「なにも、性交しろと言ってるわけやない。使えるようにさせろと言っただけや」

「同じでしょう!僕は反対だ」

「さっきも言ったんやが、彼女の性欲は食欲と合体した物や。マソを補給できる君ならとな。で、どうするんや?」

「……やりましょう」

「ちょっと!?」

「このままじゃ、何も進まない。それに、枯渇状態ならほとんど少女と変わらない。それに休み今日までだぜ、解決するんだったら今しかない」


 ……。はぁ、視線を見合わせ小さくため息を付いた彼女たちは自分が一緒に入るならいいと許可を出した。

 俺はゆっくりと扉を開ける。

 顔をベットに埋め腕を小刻みに動かす少女、ふんわりとした白髪は所々跳ねくちゅくちゅぺちゃぺちゃと犬が舐めとるようなみずみずしい音が辺りへと響く。

 扉の開閉音を感じ取ったのだろう。顔だけをこちらに向けるタナトス。

 だが、来たものが自身が恋焦がれていたものだとわかった瞬間、何処からそんな力が生まれていたのか跳躍欲を見せ海斗にとびかかった。

 もっとも、飛び掛かる前に首に取り付けられた鎖で引き戻されるのだが。


「ぁ、は。やぁっ!遅かったね!!待ってたよ!!時間が経てばたつほど、この思いは止められなくて!ねぇ私の事を使ってほしい早く。狂ってしまいそうだ!」


 ローズクオーツのような瞳の中にハートを作り犬のように立ち上がりおねだりする少女。

 チャラチャラと体に付けられたピアスに繋がれた鎖と、身体に掘られたタトゥーが赤らんだ彼女は子悪的にさせていた。

 蹲踞(そんぎょ)の体制で体を弄りながら待つ乙女に俺はゆっくりと近づき。


「ぁ」


 頭をゆっくりと撫でた。ペットにするかの如くわしゃわしゃと乱雑な動き。

 それでも、嬉しかったのかまき散らしながらニヘラと表情を崩す彼女に俺は……ナイフを握り。


 いや、持ち手ではなくナイフの刃の部分を握り出血した手を半開きになった口に突っ込んだ。


「うっわ、なにこれぇ」

「血を舐めるごとに鉄砲魚見たく下腹部から体液をまき散らしてるよ」


 無心になりながら、犬みたくぺろぺろ舐めるタナトスを少し離れた場所から見る礼とゆずき達は結構引いていた。


 原理は簡単だ。マソは人の体液からも取得できる。殺しても得れるが、水を得るためにわざわざ沸騰した水蒸気を飲むのは効率がわるい。そのため、売春行為をさせていたのだと言う。

 で、あれば。体液なら血液もいいのでは?

 礼のように無理やりキスをされ唾液を交換するかのようなディープキスでもいいのだろうが、そのまま食われると思ったのでやめた。


 現に、頬を紅葉させながらその瞳にはしっかりと知性の光が戻っていて。


「やぁ、御子様……君の血液って結構おいしいんだね。満たされた気分だよ」

「そっか、そっかー。俺はお前のせいで汚れたんだけど」

「あはは!ごめんね、そう言う風な身体なんだよ。とりあえず、色々ヌメヌメしてるし……お風呂に入らせてくれないかい?」

「お前が一人で入れ」「貴女が一人で入るんだよ」「一人で虚しく入ればいいじゃないですかぁ」

「ぁぅ」


 ……ほーんと無様だったやで。

 そう思いながら、純玲は精華に連絡するのであった。


 ブックマークは新着小説で投稿されたのがわかりますし、ポイントは作者のやる気にもなります。

 また、ご意見ご感想も受け付けていますよ!

 ブックマークは上部に、ポイントはお話を読み終わり『<< 前へ次へ >>目次』の下に入力案がありますよ!

 作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします。

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