表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第4章 不毛に響く白鳥の歌
125/150

121節 データは移転しました

 あっちぃ。あっちぃよ。

 因みに本話は解説会。少しずつ敵がどのような人間か、寄生体の事に関してわかってきます。

 まぁ、主人公や精華さんや咲は戦闘職であって純玲は医者なので解体とか担当してません。政府が意図的に情報を隠していたのもあって、やっと深く踏み込んでいくと言う形です。

「ぐぇえええ」


 ぎゅーと白い視界の中、首を絞められる。精華さんからそう言った組技の格闘術を噛んでいた経験から、相手を落とすようなものではなく純粋な抱擁目的なのはわかるが。


 痛い!痛い!痛い!首から変な音なってんから!


 吸い付くように顔を覆う白い何かで息が出来ないのと、上から聞こえるであろう少女が出せないほどの出力が海斗を襲う。

 めきめきめきと男性にしてはか弱い骨が悲鳴を上げているのを、神経と響き渡る音で感じとり振り払おうと掴みかかる。その際、親指が何か柔らかなものに一瞬触れるがクビレのちょうど細い位置に手を置けたのか一気に突き飛ばした。


「と、とっとと」

「はぁ、はぁ、なんだぁ?」

「おっぱいクッションの感触はどうだったかな?」

「知る……知らないですよ」


 知るかと、出かかった言葉を飲み込む。何故なら目の前にいるのは見知らぬ少女であったからだ。

 それも、妹よりさらに10cmほど小さい。少女と言うより女児に近い。肌の上から少しあばら骨が浮き出て成長途中である事はわかるが、しっかりと胸やお尻は成熟している本来なら見られぬ相違点。

 そして胸元に光る2種類の色がぐちゃぐちゃに混ざった宝石……。

 とにかく、初対面のそれも女児に乱雑な言葉をかけるほど落ちぶれてはいない。出来るだけ柔らかく丁寧に、けれど舐めてないような態度を取り作らなければ。


「おっと、ふざけるのもこれくらいでいいかな?私は銃を向けられるのは慣れてなくてね」

「……慣れてないなら軽口を言えなくて?」


 カチャリいつの間にか隣に立っていたヴェロニカがPP-2000を構えていた。

 よく脅しで見るような片手を目一杯伸ばして頭部に銃を突きつけるようなフィクションしてる物ではなく、きちんと距離を3メートル半ほど取りフォアグリップを握りながら頭部に狙いを定めている。走って取りに行ったとしても、銃を掴むより引き金を引く方が早い位置だ。

 おとっと、そう彼女は言いながら両腕を上げ軽く跳ねるように後ろに下がる。ぷるん、円を描くように胸が揺れ、真ん中で乳房同士がぶつかりすとんと定位置に戻る。

 それで目を逸らすようなことはせず、しっかりと俺は全身を見据えながら脇に抱えたアサルトライフルを向けた。


「で、どちらさまで?あんたは俺の敵か、天使なんだろ?後ろからは切断魔が迫ってきてるんだ」

「ととと、敵対する意思はないよ。そして、急ぐ必要もない。次元を切ってその名の通り来れないようにしたからね」

「は?何を言ってるんですの?」

「追いかけっこに神経を尖らせなくてもいいと言う事さ。それに君たちの目的も達している……私が要救助者さ!」

「お前が……?売女か遊女にしか見えないが」


 うーん?と可愛らしく首をかしげたのち、まるで踊り子のように淫靡に体を見せつけながらクルリと一回転する。


 絹のように輝く髪をふわりと羽のように広げさせながら、膝ほどに伸ばした白髪。

 ローズクオーツのような淡く優し気な瞳に、花のようくどくなくされど主張はする唇。

 妹の舞よりも身長は小さいながらもきっちりと胸は飛び出て骨盤は開き、出る所は出て……引っ込むところは薄くアバラの筋が見えるほど引っ込んでいる。

 手足もすらりとしたもので、近年では女性の容姿の平均値が上がっていると言うのにそれを軽々と飛び越えていく姿は、女性が今まで買ってきた化粧品を投げつけてしまうほどであろう。

 もっとも、普通に見える所はだが。


 彼女は全裸でありながらも至る所で自身を装飾していた。

 左頬や鎖骨の下や肩、お尻の上には下品なタトゥー。ちゃらちゃらと金属音の正体は、胸やへそや股間部に取り付けられたピアスからチェーンが繋がれていた。


「おっと、不快な思いをさせてしまったかな?ごめんごめん、そういう風に作ったからさ……すぐに媚びてしまうんだ」

「そう言うのはどうでもいいんだ。僕たちはタナトスと言うイカレタ科学者を探してるんだ。雌犬を探してるわけじゃないから」

「ははは、だから私がタナトスだって言ってるじゃないか」

「……はぁ?」


 おまけに彼女は自分の事を要救助者とのたまう始末。

 確かに、あの時見た少年と見違えるほどの科学者も白髪であったが身長は同じ程度であり、顔も骨格も共通性はない。

 口調もほんの些細な事で飛び出す仕草も、違っていた。


「ふふっ、まぁ……色々と話そうじゃないか。この体になってから楽しくて仕方がない、ほら汗も掻いているのだろう……ぺろり」

「っ!?う”ぅ”ん!!……こいつぅ!」


 瞬時に後ろに回り首筋を細く柔らかい舌が、汗を舐めとる。

 柔らかくされど粘性がある液体と、舌に付けられたピアスの感覚が余りにも言葉に出来ないほど嫌だったから、海斗はすぐにバックスピンナックル(回転裏拳)を叩きこもうするが「こわいこわい」と軽口を叩かれながら距離を取られる。

 まるでワインをテイスティングするかのように口内を動かし、リップノイズ。

 唇に指を当て思考をしながら味わったあと。


「この位にしておこうか、後ろの3人も我慢の限界だろうしね」

「「「……」」」

「私が作るローゼルティー、味わってみたくはないかい?水分補給と共に、そちらのお嬢さんが研究資料を漁る時間も必要だと思うからね」


 どうしてこんなことになってしまったのだろうと俺は感じずにはいられない。

 ガラスで出来ているのか透明なしゃれたテーブルの上に、受け皿(ソーサー)の上に真っ赤に染まった液体が満たされたティーカップが置かれている。

 他にもメッキが施されているであろうフォークとスプーンを置く台(カトラリーレスト)か?

 そして、甘味としてデザート(ババロア)が置かれている。


 俺は何時の間にか、何処か洋風屋敷の客人として御もてなしされている?

 と言うか、ローゼルティーだったか。まぁ洋風のお茶なので紅茶判定でいいだろう、現実にあんな高くにティーポッドから注ぐ奴初めてみたわ。


 準備し終えたのち、良い出来栄えだったのか多少胸を張り揺らしながら海斗の対面の席に座るタナトス。

 英国生まれだったのだろうか?その、テキパキさからは普段家事を行う3人衆も右往左往。

 チラリチラリと左右に座るゆずきと礼……ヴェロニカは資料と薬の確保で離席中……どうすればいいのかと揃ったように困惑の表情を浮かべた客人に全裸の主人は首を傾げ。


「飲まないのかい?」

「すぅ……ぁー」


 と、微笑みと言うか期待した表情でティーカップを目線で指した。

 正直に言えば、喉は乾いている。先ほどの戦闘で緊張状態であったからか汗は滝のようにあふれ出て、赤熱するほど赤く染まった肌は、冷却水の補給を急かしていた。

 ただ、心情的には一度襲いかかられた相手。いくら友好的であろうとも飲みたくないし、食べたくない。タナトスも同じティーポットから注がれているとは言えだ。

 俺は、背中に付いてるハイドレーションから水を含んだ。


「そっか、まぁそうだよね。そりゃ警戒するか。待ってくれ今から飲むさ」

「……」

「ありゃりゃ、ダメか。仲良くしたいんだけどな……赤毛の少女も戻ったことだしそろそろQ&Aと行こう」


 ヴェロニカが帰ってきた事をしっかりと確認したのちに彼女は目線で指し示した。


 俺はどんな質問をするべきだろうか?妹の舞も黙っているし、他の三名も一歩引いた態度である。

 もっとも、俺以外が質問したとしても答えてくれるとは限らないし嘘を述べる可能性もあるのだが、その発言が嘘と言う情報は手に入るか。

 まず、自分の好奇心に従って行動するべきだろう。


「なぁ、何で女性になってるんだ?依頼人からも聞かされていないんだが」

「ふむふむ。それは例外的な処置の影響さ、突発的な行動ともいう。君たちは寄生体についてどれほど知っているかい?」

「いや、それほどは。人間に寄生して体を自分たちの都合のいいように作り変えるとしか……あと女性が多い」

「確かにその認識で一旦は違いないよ。けど、それは一要素でしかない。この際、きちんと解説しよう」


 そう言い、彼女はテーブルに吊り下げられていたバックの中からタブレットを取り出しツールを起動させる。


「寄生体本体は非常に小さく非力なものだ。もっとも、機械生命体の中ではの話にはなるがね。大きさは40センチほど、外観はサソリに似ていて胴体の中心部にコアとなる宝石がある……これくらいは知っているね」

「まぁ」


 そう言いながら彼女はタブレットに向け細い指を動かし絵を描いていく。

 絵柄はやはり海外みたいな感じだ


「まずは、しっぽでマナを注入し相手の意識を混濁させる。その後、足を肌に突き刺し固定化……細胞を送り同化しながら尾はクワガタのようにハサミを形成して、耳から脳をかき乱す。これを私達は()()()と呼んでいる」

「なるほど」


 次に書いた絵は、サソリが地面を掘ってるようなものだ。もちろんわかりやすいようにしているだけで、地面は体に足がすっぽりとハマっているのは突き刺していると言う意味であろう。


「そうして、細胞を融合させ体を最適化させながら尾はバイザー型に変化させ脳を侵食する。この時点で、すでに胴体部分は全てなくなっているし、バイザーとコア以外は外見で違いはない。では、何故寄生体は乗っ取るのではなく融合するんだい?」

「どういうことだ?」

「融合した寄生体は、人間だったころの感情記憶趣味嗜好……全て同じだ。確かに三大欲求は増加するけれど、人格が消えるわけじゃないし。人を襲うようになるのも、あれは一種の飢餓状態なだけだ。人格なんて消してラジコン見たく操作してしまえばいい。社会に溶け込めるだけの知識はすでに得ているのだから」

「……」 

「人がマソを貯め、それを得て分解する事でやっとエネルギーとなるマナが得られる。つまりは人を襲わなければならない……人間だったころの人格があるなら、食事に忌避感を持つよね?餓死するかもしれないのに」


 確かに、ゆずきと初めてあった時はどちらかと言えば独占欲と言うかなんというか。

 あなたと一つになりたい(物理)みたいな感じで、食料である俺に対し殺害ではなく捕縛を選んでいた。


「まぁ、ともかく寄生されたとしても人間の感覚はほぼ失わないと言う前提知識は今得られただろう?これを基本として、ね。ここからが質問の回答に繋がるんだけど寄生体が女性以外にいない理由はなんだい」

「それは、化け物に……人の形を外れた機械生命体になるからじゃないのか?」

「うん、寄生体の細胞が適合しないからね。理由としては、女性の方が生殖に有利だからっと脱線してしまったね。つまりは、寄生体に寄生されずに記憶とかをコアに移動できればいいんだよ。ほら、頭……弄るだろ?」


 そして次に書き下ろしたものは、寄生体が地面から浮いた状態でしっぽだけが繋がってる物だった。


「もともと、制御しやすいように天使用の物は半分にぶった切っていてね。人工呼吸器の役割をするマナの液体に突っ込んで死なせたいようにしたんだ。で、その状態で襲われて重傷を負った私は頭を突っ込んで移動させた」

「外付けHDDみたいな事か」

「まぁ……。で、ちょうど近くに商品である彼女と循環層が繋がっていたんだろうね。コアが半分半分でこう合体と。天使から生ませた赤ん坊をマナで急速成長させたものだったから、甚大なバグが起こらず今に至るってことさ」


 最後に爆誕と言う文字を書いて胸の下にタブレットを持ち、にっこりと笑うタナトスの姿であった。


 ブックマークは新着小説で投稿されたのがわかりますし、ポイントは作者のやる気にもなります。

 また、ご意見ご感想も受け付けていますよ!

 ブックマークは上部に、ポイントはお話を読み終わり『<< 前へ次へ >>目次』の下に入力案がありますよ!

 作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします。


2024/1/24

 一部文章がおかしいのを修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ