118節 落とし穴
どうも、体調を崩しましたぁ!
「ふぅ、それはそれとしてサラッとわたくしもお紅茶を提供いたしましたが、あの人。何ですの?」
「なんか、なじんでるし。家に来たの初めてですよね?」
「あぁ、あれはゆずきの生前?の友達らしい。今では魔法少女をしてるんだとか」
「ふぁ!?あの、魔法少女をしてるんですの!……わかりましたわお任せを、こちらでも探っておきますわ。こちらとしてもちょっかいをかけてこられても困りますから」
霜が退出し、カップの縁から唇を話しながらヴェロニカが話し出す。
おめかしをしているのだろう。薄く唇には紅を差し、目元にもアイシャドウを流している。
そんな彼女にも魔法少女の事を話せば一転、今までのような気が抜けた乙女の表情ではなく仕事人に切り替えたのだ。
ヴェロニカも寄生体。狙われる可能性がある。
それに、彼女の母国であるロシアは今内戦中なのだ。大使館の外交特権の通用性は非常に低くなっている。
約一か月半前に、性能試験のため彼女は警察官と一緒に廃墟都市で戦闘を行ってしまった。故に、同じ力を持つのではないかと疑われている可能性がある。
もし、彼女に何かあったら芋ずる式に引っこ抜かれるかもしれない。
「お父様にも一声かけておきましょう。それはそれとして」
「なんだ?」
スマホを撫でていた指を止め、ツーサイドアップにした髪型をパサリと。
甘酸っぱさのにおいと共に美しくうなじがちらっと見えて。ぐっと、海斗の方向に向き直り机の上に身を乗り出してこういった。
「ここに来るまでに汗をかいてしまいました。シャワーを借りたいのですがよろしくて?」
「あ?あぁ、良いけどちょっと待て。タオルを」
「そして、わたくしの背中を流してはくれないでしょうか?」
「は?」
外の外温に焼かれてきたのだろうか。いや、どちらかと言えば恥ずかしさと興奮で頬を染め決定的な一撃を叩きこんでくる。
お風呂、背中、一緒に、全裸で?何で?
いきなりのフルスイングに動揺し、答えを出し渋っているとさらに決意を固め。両肩が露出しているほど首元が空いた服に指を引っかけ下にずらす。
ブルンと抑えられていた物が反作用で重力に抗い真上に上がりそしてバウンド。推定Eカップの胸が、フリルのついたブラジャーに包まれながら露出し。
「日本には裸のお付き合いと言う言葉あるとお聞きしました。わたくしは他の皆様と違い、国籍も異なりますし住む場所も違う。出会える時間も限られている……でしたら、その短い時間でより濃く濃厚に交流しないといけませんわ」
「どうしてそうなった?」
「あわよくば、そう言った行為もと思いましたが。初めてでは攻めすぎだと思いましたので、後ろからの胸直揉みからで良いですわ」
「何が?大丈夫か、ね、熱冷まシートはる?」
片頭痛の時にお世話になる熱冷まシート、何処にやたっけ?そう言えば封を切ってあるやつは自分の部屋にあったなーとわき目を振らず全力疾走。
が、寄生体の身体能力に勝てるはずもなく。
「なるほど、つまりぬちゃぬるプレイを望むのですわね!」
「どうしてそうなる!?」
「だって、羨ましいですわ。家族になるって言ったからにはそう言った行為もとーぜんね。他の皆様とはヤッてるのではなくて?羨ましいですわ」
「「やってないけど」ねぇ」
「ふぇ!?」
なんか、色々と話が零れていってる。
そう、学校帰りにいきなり土砂降りの雨が降ってきたかのように……もっとも、振って来たのは水ではなく女体なのだが。
目の光彩がハートマークに変化する。そのまま、神輿のように俺の四足と脇を掴んでお風呂方面へと向き直り。
「でしたら、協力してくださいまし。三人寄れば文殊の知恵とか言う言葉があるみたいですし、この際一人食いは諦めて性に目覚めさせますわ」
「舞、舞!?」
「ごゆっくりー」
「見捨てられた!?」
体をベタベタと、犬や猫のように触られながらもズボンのベルトが外される。
何とかして拘束を解こうとするが、その姿は陸に上がった魚のようにビチビチと滑稽に映るしかない。
ドナドナと三人の薄ら若い女子に、すっぽりと食われてしまう。いや、別にうれしくないわけではないが子供とか色々とお金が……なんて考えていたから。
「それは、ぜひ見てみたいものですね。御子の初めての狂瀾を」
「っ」
甘ったるく熱がこもった声、三人が発しているわけではない。こんなにもネバッとろい、食虫植物が分泌する消化液のような本能に警告が届く音。
俺は、すぐに放られ受け身を取り礼から転がってくる拳銃を拾いすぐに構えた。
礼もついでとばかりに大剣を胸から取り出し、ゆずきはすでに鞭を構えヴェロニカは室内だからなのかPP‐2000を構えていた。
騒音から静動。
お茶らけていた空気は一瞬にして換気され、最低限の戦闘が出来る体制が出来上がっていた。
「お久しぶりですね。御子様……きちんと荷物は不備なく到着いたしましたか?」
「マリア……だっけ、かぁ?」
そこには、あの研究所にいたマリアと名乗った少女だった。
フェイスベール越しに見える瞼は閉じられており、胸の前で祈るように腕を握る姿は確かに元ネタである聖母マリアにふさわしいだろう。
もっとも、首から下は黒を基調としたベルトボンテージ衣装で聖職者ではなく生殖者がふさわしい。
露出した胸にむっちりとした太ももや尻は、忌み嫌う七つの大罪の内一つ。色欲をがっつりとさらけ出していた。
銃を向けられていても、相変わらず焦りや緊張と言うのを感じられない。
それとも見えていないからだろうか?いや、それにしては足取りが革新的だ。何かしらの……そうギフデットのようなものを持っているのかもしれない。
カツカツと室内なのにヒール音を響かせながら、開いている椅子を引き腰かける。
そのまま、彼女は桜色の唇を動かした。
「今回私が来たのはあなた方に依頼を受けてもらうためです」
「は?本社通せよ本社!だいたい、兄に何させるつもりなのさァ!」
「残念ながら参加の是非を選択する余裕はありません。直ぐにです。あぁ、安心してください……もう既に、開いてますから」
は?と言う疑問の声はキャンセル。突如襲い掛かるのは虚空間、まるでポリエチレンを踏んずけたように地面が割れ。
暗闇へと吸い込まれていった。
「っ」
訳なく、いや結末は変わらないが……瞬時に構えていた拳銃を一発発砲。
狙いは頭部で無く腹部へとズレてはいたが、放たれた弾丸はシミのない肌を抉る……事はなく、人差し指と中指の間に挟まれてキャッチされるのであった。
やっぱり、解るじゃねぇか。
そう思った直後、尻に突き刺さる固い感触。
「むぎゅ」
「痛」
「みゅ!」
続いてバタバタバタと三連奏。後ろを振り向けば、礼とゆずきとヴェロニカの姿が。
妹がいない。俺は立ち上がりながら辺りを見渡せば眼前に飛び込んだ景色は海であった。礼たちの背には木造の建物と通路を挟むように狛犬の銅像が置かれている。
少し小高い丘の上にあるのだろう。夏の日差しと海風、そして海に続く社。
『兄、聞こえる?』
「舞?何処にいる」
唖然としてる最中、ポケットの中にあるスマホが主張する。
画面い表示されたのは妹である舞の文字。急いで通話をタップすれば聞こえてきたのは妹の声であった。
『私は家にいるけど。もっとも、ドスケベシスターが隣にいるけどね』
『突然の事で申し訳ありません。ですが……時間が無いのです』
「何を言ってるんだか。それにここはどこだよ」
『そこは、旧茨城県磯前神社です』
は?
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