116節 新たな武器と出会い
プロットはある……が、とある人物とどうやって合流させてハナズオウと明確な敵対関係を構築するか迷ってるこの頃。
「やぁ、帰る前に地下によってくれないか。ふふ、渡したいものがあるんだ」
二つに結んだツインテールの白髪を跳ねさせながらこちらに話しかけてきたのは、武器の整備や販売担当のノヴァラティア・アイヒヘルヒェンであった。
彼女に促されるように地下に行けば、椅子に座ったゆずきがうぃ!と敬礼する。
そのまま、ノヴァは机の上に置かれていたナイフをプロテクター一体型ナイフシースに収納して投げ渡してきた。
おっと、とキャッチし側面を叩けばカシュと内部構造が展開されナイフの柄がお目見え。
軽く抜き遊んでみるが今まで通り、重さも銃身も変わりはしない。
「アイゼンヴォルフ……あ、そのナイフに関してなんだけど。外見は変わってないけど機能を追加してねぇ、ふふ……なんとしなるようになったんだよ」
「しなる?」
「そう、鞭みたいにしなるから遠心力で音速超えて大ダメージを与えられるし伸びるからリーチも上がる。言うまでもないけど、今まで通りのナイフとしての使い方もできるからね。君がそうしたいと願うならそうなるってだけさ」
「前回の刺突爆雷みたいなものか?アレもスイッチとか無かったし。てかゆずきを呼んでた理由がそれか」
そう言う原理、細かい事気にしてるとはげるよ。そう黒いワンピースを着たノヴァが今度は壁に立てかけてある銃器を手に取る。
まるで長靴と思えるほどの巨大なストックでありながらもブルパック式ではない、弾倉が引き金の前にありながらも重厚的なフレーム。
トリガーガードをかちゃりと動かし、側面から排莢された空砲を見て。
「レーバーアクション方式のグレネードランチャー?」
「そう、よくわかったね。口径は40mmのよくある……と言っても自慢の改造と設計をほど越した武器さ。まぁ、重量が8キロとバカみたいに重いが一昔前の人間より今の人間はマソの影響で身体能力が平均1.33倍向上してるし問題ないでしょ。装弾数は6発……ほい」
「おぉおおおおんも!」
ひょいっと渡されたグレネードランチャーを赤子を抱えるかのように支える。
落下の衝撃と重厚な強化プラスチックとアルミ合金に、小鹿のように腕をプルプルさせながら観察すればストック後端に液晶が。
そこにはアイコンで装弾数と起爆距離が掛かれていた。
「あれ、これ。ゲームとかでよく見る奴じゃん」
「お、ふふ……ゲーマーの妹ちゃんならわかるよね。これは射撃管制システムが搭載されていてね、弾着もそうだけど一定距離で爆発できるようになってるんだよすごくない?」
「いや、おも」
「因みに起爆には火薬の代わりに寄生体のコアを仕込んでるから、魔法障壁も中和してダメージを与えられるすぐれものさ。なんと、ヴェロニカさんがやってくれました」
「ヴェロニカが?」
銃に下げていた視線をもどしノヴァを見る。
ヴェロニカと言えばロシア特殊部隊に所属する寄生体であり、なんやかんやありつつ関係を持ち契約した赤髪の弓使いだ。
人体実験の素材として使われる寄生体の本体。その出現数が最も多いのが日本であった。
そのため、彼女たちは特権を使用して武器を所持し不正入国をし作戦行動を行っていたがヴェロニカの暴走と取引相手が翡翠……当時はマリオネットドールとして持ち込んでいたこと、そしてアラクネの出現など。
とにかく多彩な事が起こり、現在はロシア内戦の影響によって大使館に待機している状態であった。
「なんでも、あれっきり関係がないって壁に指ドリルしてたよ。ふふ、高速回転。ホントにコンクリ穴が開いちゃったよ。家族になろうとか言ったっきりほっとくのはダメじゃない?そろそろカチコミしだすから行ったら、サロワンティーで作ったロシアティーを飲ませてくれるかもね」
「う、ほおって置いた事は確かに。……連絡先も交換してたし、今日の午後に家に迎えよう。そうしよう」
当り前ですわ!と声が頭に響いた気がしたがそんなことはどうでもいい。
ゆずきと礼に新しくもらったグレネードランチャーを胸のコアに突っ込んで、一人は快楽を得ていたが……とにかく用事は終わった。
昨日暴れたせいで警察が家に来るかもしれないから早めに家に帰った方が良いかもしれない。
俺はヴェロニカにメールをした後に地下から出るのであった。
精華さんとの報告が終わった後、俺達は駅近くのショッピングモールに来ていた。
ショッピングモールに来た理由は単純にお昼の時間であったからだ。趣味であるゲームをしようとしても平日の正午真っ只中、オンラインに人口など居ないだろし暇をつぶせるようなイベントは無い。
せめてもの理由としては、週日だからフードコートがそれほどこまないと言う訳で……俺達は比較的に苦労せず席を確保する事が出来たのだ。
思い思い1500円以内で食事をとり、ゆずきに食べかけのクレープを口に突っ込まれたりと和気あいあいとしたお昼を過ごし、トイレに行った礼たちを待っている。
はみ出した列からは彼女たちの姿が見えない事からもうそろそろだろう。いちいち便座に座っていたした後にはペーパーで拭く。
一度、礼が風呂場で放尿しその後始末をしたことがあるから女性の事情と言うのはある程度分かっているつもりだ。
通路の少し前に背中を預けて佇む。スマホに視線を落としていると。
「あ」
正面を横切る少女が小さく声を漏らした。何処かに忘れ物をしたとかそう言うものではなく、明らかにこちらに方向性を持たせた驚愕或いは驚きの音。
スマートフォンから目線を外せば、緑髪の少女がこちらを横目に見ていた。
肩を出した服装にロングスカート、靴はヒールが付いたサンダルだろか。全体的に押しとやさが出たかっこうだ。
「なにか?」
はて、通路の邪魔になった覚えはないのだが。と思いながら数秒の交差。
壁についていた背中を離し、少し右側にずれ距離を取ると彼女が少し慌てた様子で口を開き。
「貴方は先日の学生傭兵、さん?」
「ん?」
懐疑に思っているのだろうか、瞳孔を揺らしながらもしっかりと目線を合わせてくる。
初対面だ。いや、精華さんの所で働いていると言うのは同学であれば色々と尾ひれがついて噂されてるがこんな少女学校にいたか?
今の服装は普通にTシャツ短パンだし、何処かしらで動くときはHMDを頭部に付けていて……先日?
彼女の顔を体形を注視するのではなく、俯瞰的に観察すれば。
「……スノーホワイトさんでしたっけ」
須臾の間、俺は口を動かしていた。
あの、露出が多い衣装に思考が誘導されていたがあの容姿でわからないわけない。
名前を問いかけられた彼女は、おおざっぱに首を動かし少し視線を動かす。なるほど、人が多い所でしゃべりたくないと。
だが只でさえ美しい容姿を持っているのだから邪な視線でいっぱいだと言うことに何故気が付かない。礼とゆずきを侍らせているのだからそこら辺は俺にも理解できている。
わざわざ話しかけたのだから会話をしたいのだろう。もっとも、場所を移したところでこの目線は離れない。
交差する瞳に、割り込むように。
「おっまたせぇ!さぁ、美少女の凱旋でっ……ん?」
「うるさい。公共の場所なのだから静かにすべきだと思うけど」
ぽいっと背中に伝わる衝撃と押し付けられる二つの果実、無理やりわきの下に顔をくぐり表情を見せるために輝かせた笑顔は、正面に見える少女によって変えられた。まるで、目が4つ穴ボタンに縫われたかのように変容している。
どうやら魔法少女がいる事が分からなかったらしい。確かに身長は妹と同じくらいだし、俺は少しは精華さんに鍛えてもらっているからすこし大きい。故にちょうど陰になっていたのだろう。
だが双方の瞳は大きく揺れていて。
映るのは恥の念などではなくもっと、いきなり目に虫が飛び込んできたぐらいの焦燥感と驚愕で。
「ゆずき?」
「霜?」
二つの目線がアジサイのように混じった。
「なるほど、貴女は彼のお世話になっているのですね」
「色々あってねぇ、そんなとこ。親切だし不自由はしてないよ」
俺達は駅のホームで電車を待ちながら、ゆずきの学生時代の友人で会ったスノーホワイト……本名、松雪霜との会話に耳を傾けていた。
なんでも、彼女とゆずきは小学生時代の友人関係であり廃墟都市になる5年前に関わり合いがあった人物らしい。
小鳥遊の学生時代と言えば、昔はお嬢様学校にいたとか父親が没落して色々大変だったとかそう言う情報しかない。だからこそ、俺も彼女たちの会話の邪魔をしないように耳を傾けていた。
「先輩、なんですか。私ぃ、聞いてませんよ」
「俺も聞いてねェよ旧友だって」
と、言う会話を繰り広げられている。
双方と言うか全員の心根は一つ。どうしよう、この状況であった。
まず第一に、海斗は寄生体を匿っている。第二に霜は寄生体を倒そうとする警察側であり、警戒対象。第三にゆずきと友達であると言う事だ。
もし、ゆずきが寄生体だとバレてしまったらどんな反応が返ってくるかわからない。
ゆずきは、ゆずきの外見と記憶を持っているが生物としては人間をやめている。スワンプマンやドッペルゲンガーが入れ替わったに等しい。
災厄、大きな波乱になるかもしれない。
胸のクリスタルを見られたらアウト、かと言って認識阻害にマナを回しすぎると逆に気付かれる。
今の所、夏の暑さでバレてはいないがゆずきは胸の下まで汗を流していることだろう。
「そうだ、皆さんでお茶でもしませんか?私、貴方たちの事知りたいんです」
「いえあの」
「すまないけど僕たちは、警察が事情聴取に来るかもしれないし久しぶりに友達と家に遊ぶ約束をしてるんだ」
「なら、好都合だと思うんです。ガチムチ警官より美少女がの方が良いのではないでしょうか?私も、遊んでみたいと思うのもありますが」
どうすればいいのだろうか、霜は警察関係者でありここで不自然に突っぱねるのは逆にいい印象を持たれないのだろう。
只でさえ傭兵と言うのは警察関係者から侮蔑的な目線を向けられるのだ。
もしかした何かしら因縁をつけて銃を奪ってきたりするのかもしれない。今では傭兵の方が装備が潤沢だと言われており、エリート思想を持つ一部警官では揚げ足を取って分捕ると言う事件が何度か起きている。
来る警官と言えば昨日駆けつけた警官は明らかにそのような人間だった。もしかしら彼女の方がマシに、早く終わるかもしれない。
ぐるぐると思考を渦潮のように回すが、急かすように駅のアナウンスと白と赤の列車が目を留まる。
カシュと開き雪崩のように人間が出て、開いた隙間がさっそく乗れと手招きしていた。
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