115節 責任と責務
今回はちょっと重い話。
保護した少女たちがどうなってるかとか、伏線はりとか主人公の決意とかがちょっと足りないかなと思いましてねぇ。
ゴールデンウィークなのと、途中で切りたくなかったから文字数多めっす。
「いらっしゃい、連絡は来てるわ。……と言っても大変だったみたいね」
9月初めの平日、コンクリートで出来たビル中に入る少年と少女たちがいた。
海斗は身動きがとりやすい半袖短パンに運動靴。礼やゆずきは所々シースルーの透けた衣装を着ていた。
外見から学生であるとみられる彼らがこの場にいるのは誰が見ても場違いで、天高く地上を照らす太陽からは速く学校に行けと最速されているような気がする。
しかし、今日は学校などないのだ。
「昨日、機械生命体が現れたんでしょ。怪我が無くてよかったわ」
「そっすね、連絡と警察が来てうちの社員が特に学生が戦闘に巻き込まれたー。なんて、びっくりしたっすよ。その様子だと、電車も止まってた見たいっすね……わざわざ自転車で山越えとか若いっすねぇ」
受付をしていたであろう藍沢さんと待っていた精華さんが、こちらに駆け寄ってくる。
若いね……そう言えば精華さんは30代だし夏さんも20代後半だったなぁと思いながら、スポーツドリンクを受け取り喉を潤しながらタオルで汗をぬぐった。
壁に立てかけられた大きな電子時計は午前10時を指していて、薄いブラインド越しに朝日が大理石の床を照らしていた。
平日のこの時間と言う訳で、ロビーはがらんどうとしており冷房の音だけが耳に響いていた……はずであった。
「あー、精華さんあれは?」
「……メイド?」
「ん~、どっちかって言うと給仕ぽっく無いですかぁ?」
視線を右に向ければイスと机が等間隔に並べられており、衣装を着こんだ少女が見た所8名ほどだろうか……テーブルを拭いていたり、席に食事を運んでいる姿。
雰囲気的にはカフェに当たるのだろう。カウンターの上にはメニュー表が掛かれており、比較的お手軽な値段で色とりどりの食べ物が書いている。
「元々、ここが市民ホールなのは知ってるわよね?」
「えぇ、まぁ……小学校の時、合唱コンクールで2回ぐらい来た事あるんで」
「つまりは売店が入っていた事があったんすよ。機械生命体の出現で売られてから早8年……ずぅっと使われてなかったスペースを彼女達の収入源とするべく、カフェをオープンしてみましたっす。どうっすか?いいっしょ」
「なるほどね、彼女たちは兄が助けた人たちってことか。まぁ、見た目未成年に傭兵として働かせるのは無理あるか」
確かに、外見年齢的には良くて20代そして舞の身長より低い子もいる。
裏方の料理を作っているスタッフや、交代で来るものを加味すれば最低でも50人くらいはいるかもしれない。
初めて会った時のような、薬中で狂い乱れるような様子はなさそうだが……。
「学校もね……表社会に出そうと思ったのだけど。薬と調教によって変化してしまった精神状態だと、どうしようがないの」
「一応、メンタルスタッフはいるにはいるっすけど……強姦された娘なんて担当外っすから」
そうして、遅めのブレックファーストを運ぶ少女にはシュシュが取り付けられている。あそこは、無数の注射痕があった所だろう。
一部の女子は二の腕から下は袖だけ取り付けたかのようなデタッチドスリーブを着用している。ある程度服装は自由らしいが、隠すべき所は隠しているようだ。
と、こちらの観察している視線に気が付いたのだろう。一瞬にして全員が俺の方へ振り向き、ニコッと笑った。
「おぉ、スマイルスマイル。けど、ゲームのNPCみたいな動きすんな……」
「いや、あれは……。どっちかと言うとドロリとした目線を感じる。頬も上気しているみたいだし……早く上に行こう」
舞が少し引き、礼が同族故に何を考えているのかを瞬時に理解して話をしようと促す。
確かに、いくら人が居ないとはいえ機密性の話をする訳にはいかないと精華も賛同し海斗たちは階段を上がっていった。
一般人には入ることができないが出来るだけ広々とした空間……ここは、仮眠室が設置されている階層だ。
仮眠室と言ってはいるが実際にはホテルの部屋のようになっており、住み込みで働いている人もいる。
しかし、廊下に出ているのは自分たちと同世代の人間がちらほらと居る。
「あの、連れて帰った68人全員がここに住んでいるわ。元々、余裕をもって作っていたからよかったけれどね」
「いまじゃ、ちょっとした学生寮っス。あ、実際に勉学も担当してるっすよ。労働は午前8時から午後8時まで、3時間勤務の4ローテーション。後の4時間は勉学っす……小中高大といますし、薬で頭が飛んでるのが大半っすから学びなおさないといけないっす」
「それも付け焼刃なんだけどね……。直ぐにそう言った行為をしようとするから大変だわ」
確かに、多彩……うーん。個性的な衣装を着ている。
軽く見回してみても、脇や横乳が見えるサイドカットドレス。マイクロビキニの上にちょっとした装甲、股上をギリギリ隠すほどの長さしかないローライズなどコスプレ会場と見舞うほどの麗しさ。
容姿が全員よく選り取り見取りな印象を持つかもしれないが、ここが女の花園と似ても似つかない場所だと少女につけられた隈と注射跡と痣が物語っていた。
「あー、あ!お薬の件はどうなったんですかぁ」
「純玲が言うにはあれは、脳の一部細胞を破壊して疑似的なアッパー状態……つまり覚醒剤を摂取したかの状態にさせるのよ」
「問題は、一度壊れた脳細胞は直らないって事っす。本来であればストッパーの抑制物質が出るんすけど、それが出ないようになっててドーパミンならまだしも覚せい剤の元物質アンフェタミンが生成されるようになってるんす」
「アンフェ……あぁ、幻覚剤及びMDMAの主成分ですねぇ。崩壊都市では良く性行為用のドラックとして流通してるけどぉ、どうやって体が作るようになったんですかねぇ?C9,H13,N,だから人体でも作れなくはないだろうけどぉ」
「それが、寄生体の便利なところなんだろうね。僕たちは、ある程度体を変化させられるからその際に壊して味を覚えさせればってことだろう。炭素も水素ももとから人体にあるし、窒素は呼吸してるだけでも他に入る」
「つまり、ここにいるのは一見なんも変哲もなく生活してるけど今もラリッてるって事なのか」
「兄、言い方……」
「まぁ、アッパー系ドラックだからね。ダウナー系だと、寝込んでいたり口の端から唾液をたらしたりなんてわかりやすいだろうけど」
つまり、彼女たちは今なお薬物を摂取している状態にすぎないと言う事か。
事実深く観察をすれば、挙動不審に思うほど動きがある。暴れているとかそう言うのではなく、日常的な仕草……足や腕が細かく震えて居たりなどだ。
そんな彼女が一斉に、俺達。いや、俺に視線を向ける。
その濁った瞳と高揚とした態度でだんだんと近づいてくる。
「御子様だ」
「御子様」
「どうか私にお慈悲を救済の役目を」
「えっと、は。は?は?」
「私達の命は貴方のために、この顔も胸もそして子宮でさえも望むがままに蹂躙してもいいんですよ」
「あるははけ口として痛みも与えてくださいな、愛ゆえに」
まるで餌に群がるありのように俺は少女たちに囲まれる。
容姿端麗で多種多様な胸と骨盤を持つ女の子、駄肉は無くとも柔らかそうな体を見せつけようとなまめかしく服を脱ごうとする姿に俺は……。
「っ!?」
かすかに振るえていた。
なんだ、こいつらは!なんなんだ!?俺を見ているようで違うものを見ている。
反射的に自分の腰に手を回し拳銃のグリップを掴む。そのまま、半身になりながらバックステップ。
「射的?いいよ」
「私達は頑丈だから」
「肉に銃弾がめりこもうと」
「骨を砕けようとも」
「ちゃーんと床を赤く染めて」
「みっともない姿を見せてあげるからね」
銃をもってる男を見て恐れない所か、撃たれにくるだと。
いや、いやいや。軽く見たじゃないか……あいつらが生きたまま解体したり的にしてたのを。
彼女らにとってそれは残酷な事ではなく、道具として使ってもらえたと言う達成感を経ていたんだ。
だったら。
「いや、いい。片付けるのがめんどくさい……とりま、もう役割は彼女に聞いたからわかるだろ?する時に呼ぶ」
「……わかりました」
「御子様の語意に」
「………………はぁ」
そうして彼女達は俺が来る前の持ち場に戻っていった。
いつの間に止めていた呼吸を再開させながら、ジロリと精華さんを見つめる。
「……私達も初めてだったのよ。普段はお人形さんみたいな感じだから」
「多分、海斗君を見たせいっすね。薬と洗脳の影響は計り知れないっす……それを捌いた君のファインプレー」
「多分あれは、自分の考えることが相手の幸福であると……少し違うか。とにかく、奉仕する事によって相手が幸せになると思っているのだろう。あのまま止めなかったらマスターは押さえつけられて食われてたか、腕を抑えれて引き金を引かされてたかもしれない」
「嫌な事言うな……礼」
可愛らしいと言うより恐ろしいと言うべきか……。きっと、現実世界で初めて機械生命体と相対した自衛官はきっと同じような感性を抱いたんだろうな。
最悪、礼やゆずきが妨害してくれるだろうが。双方戦闘行為になる可能性があった。
天使と呼ばれていた者と言うか天使の教会は、全て御子の一言に集約されていた。もしかしたら、格別な命令権があるのではないかと思い付き収束したのは良かった。
「因みに自由時間はどうなってるんですか?」
「それは、咲たちSSがお目付け役としているのよ」
「咲さんが?でも、警察の特殊部隊のはずじゃあ」
「SSの活動は停止したんすよ。魔法少女部隊のせいで……まさか、完全に捨て置くとは予想外だったす」
定かではなかったがそんな気はしていた。何故なら、昨日戦闘エリアに来たのは普通の警官と魔法少女だけでSS所属の隊員は一目もなかった。
武装も持っていたのは陸自時代のおさがりP220と、マナによるバリアを持つ機械生命体を削り切れるほどの威力も持たずプライドだけは高そうな人たちだった。
聞いたところによれば、もう部署も追われ武器も装備も取り上げられとりあえずいると言うような状態。
故に、SS隊員たちは石竹民間警備会社に半居候状態になっているらしい。天使の教会被害者の彼女たちを上層部に報告しなかったことが信頼性のなさを示していた。
ある意味その放っておいてくれたおかげで、突入部隊に咲たちがいたのだけれどとは精華談。
「元々SSは女性多かったし……。あれでも寄生体もどきみたいなものだから、何かあった場合の護衛と言う訳になるわ」
と、話しながら歩いていれば社長室に付く。
相変わらずの書類にまみれた部屋で、俺達はソファーに座り魔法少女に関して思った事を紡いでいく。
映像もあるし、客観的な事実ならSNSで回ってる物があるから話し合いはスムーズに終わった。
「わかりました、それはこちらでも辿るわ。それと、もう一つ貴方たちが丸ごとパクって来たパソコンに関してなんだけど、ある程度解析が出来てね。どうやら、顧客に政府機関がいるらしいってのが分かったのよ」
「その取引も、2年前を挟んで低下気味でその金銭負担の軽減目的と戦闘員の補充的な兼ね合いで誘拐洗脳凌辱らっしいっすよ」
「ほかになんかデータとかあるの?私も解析を手伝ってたけど、学校始まるからあまり関わってなくて」
「そうね……ほかには何かしら。重要課題としてクルーシュチャ方程式なんて題名があったけど」
「ぇ?」
ガバっと礼が身を乗り出し、まるで取りつかれたかのように。
「見せて」
「えと、まぁ……これくらいだったらUSBでコピーすればいいと思うけど」
「舞、ちょっと見たいから付いてきて」
「ぬえ!?ちょ、ちょっと」
バタバタと退出していく礼と背負われた舞に唖然としながら、そう言えばゆずきの事をノヴァが呼んでいたわよと。ついでにナイフも見たいと言っていたらしいと伝えてくる。
俺はナイフを提出し、部屋から立ち去るのであった。
「一人になるなんて久しぶりだ」
正確には、一人になる事なんてたくさんあった。けれど、礼たちと出会って賑やかな日常を過ごし孤独と言うのも忘れていたようだ。
もっと言うには、発情した視線が無数に届いているのもプレッシャーとしてあるかもしれない。
下の階にあるカフェを利用してみてもいいかもしれないが……多分、働いているスタッフに彼女たちがいるから大変な事になるんだろうな。
しばらく考えたのちに俺は。
「ここの展望台でみるのも久しぶりだな」
最上階にある展望台兼図書室に来ていた。
民間警備会社に学校にあるような図書室?と思うかもしれないが、内では社員のストレス軽減のために休憩時間中に利用できる事になっている。
内容は持ちよりだったり、中古で買い取ったものであったり……もと展望台のスペースを使った豪華なつくりだ。
現在は業務時間だし、誰もいないだろう。
バックに入っていた水筒を取り出し水を飲む。本来であれば怒られるが咎めるのない。
そうして、壁一面外が見える窓ガラスごしに景色を見る……前に左側に誰かいるのが反射でわかった。
彼女はカウンターに座り軽く見た所、胸から上しか容姿は伺えない。
多分腰まで伸ばしている白髪のインナーカラーはライトブルー。瞳の色はピンク色だろうか?やや薄い桜色のリップと。
童顔で自身より年下な年齢と感じるがそれを覆すような身体的特徴。一瞬、肘置きのクッションかのように思えたがそれはよくよく観察してみればれっきとした彼女の胸部から生えている二つの膨らみだった。
礼よりも一回り大きいと感じるそれは、身体の小さい彼女にとって非常にアンバランスに見える。
視線を感じたのであろうか、本から目を上げ視線が合う。
「いらっしゃい?本の貸し出しかな」
「あ、いや。友人が来るまでここで待ってようかと思いまして」
「そうですか、何かあったらお申し付けください。私は、ここを担当してます戸鞠美兎です。よろしくおねがいします」
「あ、あぁ」
あんな人いただろうか?とにもかくにも、俺を見て「御子様」なんて反応をしないから別口なのだろう。
冷房が効いた図書室。出入口近くに設置されているライトノベルコーナーからいくつか本を取り出し、窓が見える席に着いた。
何度も見た本ではあるが、やはり物語を読むと言うのは非常に想像力が掻き立てられる。最近の本はあまり見なくなってしまったが、偶に面白い掘り出し物があるからそちらも忘れない。
二冊ほど積み上げ、一冊の本を読む。
基本的に速読をし、何度も読み込んでインプットするのが俺の読書だ。
ペラペラと紙と指の皮膚が擦れる音だけが、静かに響く。
「あの、すみません」
「はい?戸鞠さんでしたっけ」
「はい。その、余りにも速かったので」
「良く言われます」
「なんの本を読んでるんですか?」
「ラノベですよ、大したことのない」
気配と甘い匂いが近づいてくる。
肩に手をトンと優しく置かれたのが分かった。
「すごく、エッチな格好をした女の子がいますね?好きなんですか♡」
「はい?っと」
「私みたいな21歳の年層は使ってくれない、いいんだよ御子様♡」
「!?」
そうして背中に体重が掛けられる。
側を被っていた?そんな風に考えた思考は背中から伝わる3つの膨らみで消え去った。
ゆっくりと引きはがし椅子から立ち上がる。
んー、と唇をなぞるように右腕は動き。左手は下腹部に添えられている。
やっぱりと言うか、妹より小さい。本当に頭一つ分背が低いだろう。
プロポーションも、胸部と腰部が肉付きが良いのが分かるが……問題なのは盛り上がっている腹部だ。
夏だからか、薄いキャミソールを着用しているからその腹部が肥満によるものではなく……新たなる命を宿しているからだと安易に想像できた。
「お前……にんし」
「あぁん、もう♡中古品は嫌いかな?確かに御子様に初めてをささげられなかったのは残念だけど。もう直ぐ新しいのが出来るから……ね♡」
「そう言う、ことじゃ」
一歩、一歩。距離を詰めてくる。
くちゅ、ぴちゃ、と彼女が言葉を話すたびに厭らしいリップノイズが聞こえる
そうだ、そうだろ。想像が足りねぇんだよ。あんな奴らに常識ってのを期待する俺が馬鹿だった。
あれほど道具のように扱っていたんだ。当たったとしても無理はない。
彼女の手が肩に、そして俺の腹部に触れる。
もし、本当に。本当に妊婦さんだとするならば、このまま振り払うのはまずい。
どういう判断をすればいい?赤子を、こんなん想定できねぇよ。
「安心して♡初めてなんでしょ?なら私がきちんと食べてあげるから」
「――何してるんだい君は……っ」
テーブルに遮られぜったい絶命かと思ったピンチを引き裂いたのは一つの声であった。
俺は瞬間に、戸鞠はゆっくりと振り向いた目線の先には……表情に影を落とした礼の姿が。
ジーと光すら離さないブラックホールのような瞳が二人、正確には上にまたがろうとしてる少女を突き刺す。胸からレーバテインを引き抜きハイヒールを地面で鳴らし準備万端。
返答や態度次第では両断すると言う意思を言葉ではなく態度で示した威嚇行動。処刑宣告。
そんな大型動物すら逃げ惑う殺気を当てられた彼女は、普段と同じような態度で俺の上から離れたのであった。
「たぁすかった」
「浮気、じゃないよね?ならいいけど。誰コイツ」
三つ編みの髪を揺らしながら俺の手を握り踏み出す礼。
「ごめんなさい本妻の方でしたか……」
「あ、うんそうだけど。って違う。何勝手に食おうとしてるんだい、それは僕の物だ」
「はァ?何を張り合ってんだお前ら!?」
元々静かな図書室で微かでもとはいえ痴話げんかをしているのだ、音が響く。
事実、ある程度離れているエレベーターホールからこちらの喧騒を聞きつけて足音が近づいてくるのだ。
チラリと壁に隠れている人影はピンク色の髪と瞳を持つ長身の女性。そう、石竹精華その人。
明らかに「はぁへ?」と口を開くさまは風段のおっちょこちょいだけど頼れる大人の彼女からは珍しいリアクション。
しばらく観察したのち、問題の一つに教会から保護した少女の一人である事を認識しあちゃーと顔を手で伏せながら止めるべく一歩踏み出した。
「まぁ、色々と言いたい事聞きたいことがあるでしょう……。私だって考えたわ、まず一番初めにやった事は健康診断だったでしょう?その時に判明したのは6割はもう妊娠してたって事なの」
「ろっ!?」
あの後、近くの部屋に掛けこんだ俺達は精華さんから話を聞いていた。
俺は戦闘後には昏睡状態に陥っていたためそこの情報は知らなかったのだ。いや、考えればわかる事。
白い液体の元に沈んでいて何故生命が生まれていないと思っていたのか。多分、そこまで深く考えて居なかったか何とかなるだろうと思っていたのだろう。
精華達は、このまま生まれたとしても彼女達に育児は不可能だろうし寄生体から出産した場合、どんな生物になるのか等のリスクを精査し勝手ながらに赤子を下ろした。
けれど、一部の子は21週間を過ぎておりどうにもできない事を純玲から告げられたのだと言う。
「まぁ、あの娘たち。8割5分は出産を経験してるらしいんだけどね」
「え?子持ちなんだい……そんな風には見えなかったけど」
「彼女らが産んだ子供は、引き取るか或いは実験として使われるかで……まっとうに育てられてはいないのでしょう。裏を返せば、少女たちには子を産んだと言う思いもないから……そうね。工場で製品を製造してるみたいな感覚なんじゃない」
精華さんがわざわざこのような言い方をすると言う事はきっと、強く確証を持っているのだろう。大方、パソコン内のデータでも見たのだろうか。
しかし、同年代や自分より年下の少女たちが妊娠をし出産をしているとは唖然とするしかない。
俺は女性ではないが、出産と言うのは人生の墓場だと言える場所。そう言った事があるとは理解できるが、実際に見ると気分が悪い。
「で、そんなこんなで妊婦さんを出すわけには行かないでしょう……だから基本的に裏方作業をしてもらっているのよ」
「なるほど……わかりました」
救助した少女たちへ思いを馳せる。
縁が出来てしまった以上、見捨てるわけには行けないし……何より俺達を狙ってくる可能性も高い。
天使の教会や裏にいる人間を見つけるのが救助した人間の責任と責務なのだろう。
「だからこそ、あんな事をしてるからこそ。ハナズオウは怪しい」
「確かに、わざわざ警察庁ではなく法務省なのか怪しいし。事実、怪しい取引をしていたのが法務省傘下の人間だったのだから」
「やっぱり、もう少し警戒してみます」
「そう、わかったわ。彼女たちが活動をし始めたことだし自然と情報は出るでしょう。貴方たちは礼ちゃんとゆずきちゃんが寄生体だとバレないように行動しなさい」
了解(ヤ―)。そう、返事をしたのち俺は部屋から出ていくのであった。
そりゃ、あんなに乱暴されてたら(妊娠してるの)当たり前だよなァ!
なお、海斗はドン引きした模様。
ブックマークは新着小説で投稿されたのがわかりますし、ポイントは作者のやる気にもなります。
また、ご意見ご感想も受け付けていますよ!
ブックマークは上部に、ポイントはお話を読み終わり『<< 前へ次へ >>目次』の下に入力案がありますよ!
作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします。
2024/1/28
何故か、一部の文が繰り返されていたのを修正(原因不明、バックアップから戻したからか?)