113節 甘酸っぱく
2023/04/09
一部漢字が間違っていたので修正。
一部描写が矛盾をはらんでいたので修正。
漢字にルビ振り追加。
連絡から暫く、日本ではあまり見たことが無い装甲車が一台……そして無数のパトカーを連れて公園へと入っていく。
あれは、パトリア?つまりあのSNSで流れてきた画像は本物だと言う事か?
装甲車がアネモネと名乗った少女の前に止まり、兵員輸送用の後部扉が開かれる。一体、どんな屈強な兵士が現れるのだろうと期待と想像に胸を膨らませていたが、車外に飛び出てきた容姿に唖然とした不安感を覚える。
それは、少女であった。緑髪と現在ではあまり珍しくない色であり三つ編みを後頭部にまとめるお嬢様ヘアーであった。只、格好が大問題。
明らかにビキニの水着なのだ。まるで赤外線自身が避けているかのように日焼けしていないのであろう白い素肌と、バランス良くたわわに実った胸と特徴的な脇と滑るような腹部。まだ、水浴が出来る場所ならともかく周りは草と木の海なし県。
そして、青色のスカートがシェイプアップされている特徴的なお尻をサラリと隠していた。
「は?」
「えっど!」
「舞……」
彼女はストラップシューズをはいたすらりと伸びた足で、コツリと戦闘でひび割れた地面へと降り立つ。
隣にいるアネモネと名乗る少女に少し目を窄めながら二言ほどしゃべり、エメラルド色の瞳をこちらに向けるのだった。
「貴方が傭兵さんですか?見た所学生のようですが」
リップが薄く塗られた唇が動き、聞こえてきた声はそうめんのように透き通る|ウィスパーボイス(吐息が混ざった声)。
どうやら、救援に来た魔法少女は彼女のようだ。
……なら、もっとパトリアに兵員詰め込んでおけよと、わざわざ一人だけを乗せるために一小隊(12人)入る装甲車動かしたんか?
だが、そんな会話をしたって意味がない。それにあの瞳は見透かされるようで早く逃げたかった。
あらかじめ用意していた学生証と免許、あと借りパクしていた拳銃のマガジンと薬室から弾を抜いて差し出す。
「はい、石竹民間警備会社所属であります。実吹海斗と申します、本業は学生を行っており非正規社員としてお手伝いをさせていただいております」
「なるほど……あの会社所属ですか。そう言えば、夏休み中に未成年者を大量に雇ったと報告にありましたが、貴方も?」
「いえ、自分はもう少し前です……ざっと4年ほど。交流はもっとありましたが……それと、こちらが銃器操作資格と学生証です」
「水乃内高校……あぁ、近くの。学生でそれで2年生なんですね。わかりました、後でお時間もらえないでしょうか。職員が伺います、緊急時とはいえ公務員の支給品を使用したわけですから」
「あ、はい。大丈夫です、只本日と明日は時間が取れないかもしれないです。今日は見ての通りですし、明日は本社の方で今回の件を報告しなければならないので」
差し出していた証明書を受け取り、ポケットの中にしまう。
礼とは違う美しさだ。気品を持ちながら儚くそして身を包む母性もあるそんな女性、こんな状況で泣けれな見惚れていただろう。
もっとも肌の露出が多い胴体に、視線を下げないように力を込めて顔を見ているからなのかもしれないが。
「で、どうするんだい。この惨状で……僕たちを戦闘員として起用するかい?なら、傭兵らしく支払ってほしいけど」
「礼ちゃん?」
「えっと、貴女は」
「彼女は礼です、ガールフレンドです。まぁ、言い方は悪いですがこちらも営利団体に所属してますから……ね?」
鋭く見定めるかのように貫く目にさらされながら立ち話をしていると、礼が一歩踏み込む話の腰を折る所かぶん殴った。
一刻も早くここから去りたいと言う意思をくみ取り、わざと顰蹙を買いに行ったのだ。
偶然にも見たいものは見えた、精華さんにも話をしたいし礼が感じた物を聞かなくてはならない。それに、彼女らは魔法少女で魔法が使える元凶を科学とかで信用してはいない。
舞を背中から下ろし、胸を持ち上げるかのように腕を組みながら礼は緑色の少女を睨みつけた。
その様子にイラついたのか、様子をうかがっていた警察官の一人が拳銃に手をかけながら前進してくるのを手で押さえ。
「わかりました、貴方方も避難をお願いします。この騒動が終わったらすぐに自宅に帰れるでしょう」
「わかった、貴女……」
「スノーホワイト、スノーホワイトです。私も未成年なので本名は開示できませんが、以降はそうお呼びください。あそこの警備会社所属ならまた会う機会があるでしょう」
そう言って彼女は踵を返して町の中心部に駆けていった。
その様子を見たアネモネも少し慌てた様子で追いかけていくのであった。
糸で拘束した機械生命体を時に一刀両断し、空中に浮かぶ高速型にはクモの糸のように張り巡らされたストリングを足場にし回転切り。
マナで強化された魔法少女だからこそ出来る動きだ。
「あの人達、傭兵さんだったんですね」
「正確には警備員です……傭兵の存在を日本政府は認めていません」
「もっと怖い人たちかと思ってました、それに若いですね」
アネモネは先ほどであった少年少女を思い出していた。
勝手なイメージだけれどこう言った荒事は筋肉ムキムキマッチョマンの元軍人変態か、汚物は炎で消毒するモヒカン世紀末な人間がやってるばかりと。
「……機械生命体の対応に多額の資金を支出する昨今、社会的弱者への対応はドンドン少なくなってきています。廃墟都市だってそうですし、傭兵だってそうです」
「生活保護予算も毎年減ってるんだっけ、苦労したなぁ」
「えぇ、結局上の人間は下の人間の事は見ていないんですよ。彼らも、私達も……。さぁ、暗い話はおしまいです!敵を倒しましょう、このペースなら一時間ほどで収束するはずです」
「がってん!」
少女たちは風を切りながらコンクリートジャングルへと駆けていくのだった。
へとへとになりながらもやや上り坂を登っていけば山の入り口に一軒家が見えてくるだろう。関東統合都市との境界線にあるこの道路は、細い道して大型トラックが芋虫のように或いはパールネックレスのように連なる事が多いが機械生命体のせいで若干道路ががらんとしている気がする。
いくら夏の日照時間が冬より二時間多いと言っても、すでに日は傾いて山に影と闇をほんのりと落とす。
チリチリと虫が鳴く中、ウッドデッキに腰かける一人の少女がいた。
「あ、おかえりです。何処ほっつき歩いてたんですかぁ?まさかぁ、お楽しみですかぁ」
右手で持つアイスを口に持っていき、いやらしい下使いをしながら瞳をこちらに向けるゆずき。
暑さからなのか、着崩し薄い衣服は汗が吸い込み柔らかい肌に張り付きラインを主張している。胸にある山まで薄く見えるのに気が付いて居なのかそれともわざとなのか、へにゃにゃっとした笑顔で左手を上げた。
「ブラジャーぐらいつけたらどうだい?」
「へ、この完璧なプロポーションと濡れ透け服に女子の甘さと汗の酸っぱさの融合……この完璧さはわたししかだせませんよぉーんだ」
「ピンク色が見える……丸!」
「……早く入ろうぜ」
「一番反応してほしい人が無反応ですかぁ、くっもればいいんですか!」
「キャラ被るぞ、しかし外へ出て待ってるとはめずらしいな」
「……まぁ、待つついでにちょっと考え事をね」
俺はふとした彼女が見せる雰囲気が好きだ。普段の小馬鹿にしたような口調も仕草も、きっちりとした線引きをもって仕掛けている。
その猫なく声であるが、決して不快感を与えはしないのだ。しっかり考えしっかりと思考し行動する……やはりお嬢様育ち故かそれとも前途多難な人生を少ない年齢で重ねてゆがんだ性か。
影を落とし、黄昏るゆずきに対して「そうかい」と話しかけながら持っていた水筒を軽く投げる。
それを危なげなく受け取り、水を口にのどぼとけが動き飲み込む。
「ほい、じゃあ暑いし中に入ろうぜ。エアコンも付けて」
「あ、エアコンなら付けてありますよぉ」
「なら、僕はシャワーを浴びようかな」
「ふーん、じゃあ私もかな。風引きたくないし」
「っわたしもぉ」
「……こっち見んな。あちょまて、お前ら神輿じゃねぇんだぞ!持ち上げるな、揺らすな、放せ!」
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