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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第4章 不毛に響く白鳥の歌
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110節 交流

 そもそも魔法少女など未だ未知と言うか運用実績が無い状態。

 老人は新しい物に忌避感を抱き、国家を運営するものは基本時代に取り残された者どもだ。だから、厄介払いの意味でもあった。

 つまり、この場に居る物は優秀でありながら媚びを売らずに己が夢に打ち込み反感をかった者が集う場所であった。


「機械生命体はマナが通っている間は鉄板のようなものですから、歪みもなく切断すると言うのは不可能です。もちろん歩兵型なので戦車型などの上位個体になればありうるかもしれませんが、現れたら告知が行きますしそもそもあれは切断と言うより押し切りです」

「つまり、こんなものは不可能。人類にもできなのだから未知の脅威があると言う事ね」

「或いは寄生体かもしれませんが……あれは特異点です。何が生まれるかわからない」

「化け物が人と同じ知性を有するとはね」


 ペラっと渡された資料をテーブルの上に置き、ミルクティーを口に含む。

 何かしら手がかりが無いか、監視カメラの映像でも残っていたらいいがそちらは破損。周辺に人などいないし、あるとすれば巡回している警察官ぐらいなもので。


「そう言えば、ここ半年間でエリア内に居た警察は誰?何処所属?」

「一番新しくて一か月前のSSかと思いますが」

「SS……新関東統合都市都警所属機械生命体対策部隊。解散と言うか左遷されたと聞いているのだけど?」

「えぇ、あくまで予備としてあると言うだけですが。現在は持て余してると言うのが正しいかと」

「あぁ、確かにあれは有識者の身の安全のために設置された不本意な組織だからな。今だと退職金を払わなくていいPMCが居るし必要はないな」


 はぁ、と小さくため息を付きながら立ち上がる。


「どこに行くおつもりで?」

「少し出るわ。調べてくる」


 そう言い残し彼女は重厚な扉を開け廊下に出ていくのであった。


 礼にとって学校と言うのは謎の場所と言う所だ。どちらかと言えばご主人様とずっといちゃいちゃしたいと望むニート亜種の精神を持つ彼女。

 海斗とお世話になっている精華の助言を受けて仕方なく来たのだが、まぁ……そんなによくない。

 マスターと話そうとしようものなら肉の壁が付けられ、避けた物ならまたまとわり着かれる。

 はぁ、とため息ばかり最近漏れるようになった。


「どう?」

「どうって?なんだい?」

「学校生活は、なんか疲れてる風に感じたから」


 ロッカーに来ていた衣服を畳んで入れている最中、軽々しく声が掛けられる。

 此処には同性しかいないのだから少女にしか違いないのだが、今まで囲んでいた人よりおとなしい声。

 自然と、振り向けば同じく下着姿の眼鏡をかけた長髪の少女であった。和風キャラでよくあるような瞼にかからないようにぱっつんと切り、後ろには腰ほどまで流している。


「あ、と。そうだよね、軽くしか自己紹介してないし……一方的だったしね。私の名前は篠宮伊織(しのみあ いより)委員長をやらせてもらってるよ」

「そうなんだ……。僕の名前は文月礼、って昨日言ったから覚えてると思うけど」


 白い学校指定の体育着をそのまま着ようとすると、横からまったの声が掛けられ肌着を着るように迫られる。

 仕方なくキャミソールのようなインナーシャツに手を伸ばせばずーと視線を感じるのだ。


「文月さんってさ。すごく……大きいね」

「え?」


 まるで、腫物を触るかのように下乳を何かで押し上げられる。じゃっかん、指に力を入れ緩めしてる事から揉んでいるのであろう。

 もちろん、一般人であったのならほほを赤らめ振り向きながら胸の前で腕を交差すると言う羞恥心を隠す動作を行うのだが、そこんところ常識が無い礼は只ぼけーと見てるだけであった。


「……えと」

「どうしたの?」

「いや、うん。緊張をほぐすためにこう、ジョークと言うか。無反応だったと言うか」

「別に僕は同性に胸を触れようと発情しないよ」

「そういうことじゃないのだけど……」


 そうして、彼女が舐めまわすように目を動かしたのを感じる。

 同性でも羨むようなこのプロポーションは私の誇りだ。だから別に見られてたってなにも思わない。

 只胸を張り堂々と立ってればいい。


「けど、大変な時期に来たね」

「大変?」

「ほら、私達って高校2年生でしょう?夏休みも終わって就職か大学に進学か、今後の未来を自分で掴みとれって。自由を与えられてると思えばそうだけど、言っちゃえば放り投げられてるみたいで……。ごめん、ちょっとストレスでチャックが緩くなってたのかな?」


 あはは、とこちらが沈んだ空気にならないよう空笑いをし場面転換。

 最後に彼女はバレーボールがんばろ!と話しかけ髪を手でなびかせながら出入口に歩いて行った。

 その瞳には耳にピアス痕があるのをしっかりととらえていた。


 男子バレーボールが終わり、女子バレーボールが始まったころ。海斗は話し相手である敦史と一緒にコート側面で話をしていた。

 言ってしまえば思春期男性によるちょっと知性を溶かした会話だ。


「それで、さ。どうなん?ラッキースケベある」

「……あるが、正直こっちが気にしてもあっちが気にしないたちだから困るな。その、生い立ち的に」

「そか、そりゃ大変な。でも、ネタには困ら無くね」

「お前は俺が隣に居ても致すほどの度胸があると申すか?」

「……ねぇか!いや、お前の妹寛容だしワンちゃん行けるかなと」

「虚しくなるだけだぞ」


 パンと子気味よくスパイクの音が鳴り響き、それをアンダーハンドでしっかりと受け止め手を上げた。

 その際に、ボヨンと胴体に付いた二つの果実も力強くもっと私を見てと主張するかの如く揺れる。

 そのまま、礼は前に飛び出しオーバーで撃ちあがった球を跳躍力と体の柔軟性を携え綺麗なスパイクを撃ったのだった。

 一応、ブラジャーをしているのだろうがその程度では礼のメロンを抑える事が出来ないか。

 余りにも大きいから勢いそのまま自身の胸をスパイクしないか心配するのは俺だけだろう。


「そう言えばさ」

「なんだよ。そっち系の話はしないぞ」

「ハナズオウはしってるよな。リアル魔法少女」

「ニュースで見たからな」

「そいつらが元埼玉県添いで実戦をしてたって噂になってるぜ」

「なんだそれ」

「調べてみろよ。ダイジョブだって胸に興味が無い奴はいじってらぁ、バスケットゴールの影に隠れりゃいいさ」


 はぁ、と小さくため息を付きながら内ポケットに隠していたスマホを取り出してSNSを起動する。

 ……なるほど、一部界隈から関東統合都市外れに見えた装甲車から疑惑が広がっているようだ。

 パトリア?なるほどフィンランドの装甲兵員輸送車。確かに、不自然だ。

 そもそも、軍隊が使用するものは量産性と性能……そして価格が重要視される。

 特殊警察や国防軍に使用されていない、つまりは量産効果により調達価格低下を望めない物をわざわざ持ってくると言う事は無いだろう。

 一応、一定以下の火砲を積んでいないなどの政府の基準をクリアし認可されたPMCが持っている可能性は無きにしも非ずだが、活動中は自身の所属を明らかに目につく場所に記載しておく必要がある。

 個人が輸入したとか、そんなもの未だに9条を引きずってる日本でないだろう。


「それと、SSとの合併で少しもめているらしい」

「SSと?」

「あぁ、さっきの予算配分もそうだし。いきなり解散後全部よこせは違くないかと」


 そんな事になっていたのか……これは、早急に精華さんの所へ行かなくてはならないな。

 でも、とにかく今は怪しまれないようにスマホを隠して女子バレーボールの試合を眺めるか。

 何時も隣に居た礼が、自分と違うメンバーにしわくちゃになってるのを見ながら俺は思いにふけた。


「どうだったよ、学校は?」


 時刻は午後4時。チャイムと部活動で運動する生徒に背を向けながら帰路につく。

 隣を歩く礼に向かって俺は口を開く。

 大衆にもみくちゃにされるのがストレスになってないかとか、友達は出来たかとかそう言った事を聞き出そうと言うのだ。


「どう?うーん、難しい質問だね。まぁ、疲れた。樹液にたかる虫のように周りに集まるし、サラッと胸や尻を触ってくる同性がいるしで……耳が良いから胸がある王子様なんて呼ばれてるみたいだよ僕は」

「大人しく、気遣いが出来て僕っ子。あれ、百合物の乙女ゲーかな?」

「お前が知ってるのは、女装した男が護衛のためにお嬢様学校に入学する奴だろ……」


 へへへ、と苦笑いするのは礼に背負われている我が妹……舞の姿。

 体力ゴミ、太陽の光もダメと引きこもり吸血鬼もどきはちょうどいい乗り物に乗ってご満悦だ。

 と言うか、話を聞いてるのなら背負われている状態で運んでる人の胸を揉みこむのはどうかと思う。

 おほぉ、と言う声と共に押し上げられたワイシャツがピンク色の下着をかすかに透けさせる。それをしっかりと見ながら俺は自転車のかごから水筒を取り出し水を飲む。

 ごくごくと喉を十回鳴らしたのちふたを閉めてしまおうとするが、ヒョイっと横から取られ礼が水筒を口に含む。

 ふふ、関節キスだね。なんて思ってるのか楽しそうにこちらを見る彼女に小さくため息を付いた。


「一応、友人と呼べるような。利用できそうな人は見つけたね」

「りよう?」

「篠宮ってひと。委員長やってるし容姿もあれだし、人気が高い人だな」

「まぁ、責任感が強い人だから仕事が有ったら押し付けられるんじゃないかな。まぁ、真面目って割には遊んでるみたいだけど」

「遊んでる?隠れてゲームしてるってか?」

「違うよ、髪に隠れてたけどピアスをしてた後があったし毛先が若干傷んでたから染めてたんだと思う。後、かすかにあの研究所のあの部屋みたいな匂いがしてね」

「……おー、最近の娘はませてますなぁ」

「知りたくなかったそんな事!」

「後で裏垢探しますかな?どんな痴女かなぁ」

「やめないか!」


 きっとストレスが溜まってたからそっち方面で解消してたんだ。うん。

 友人の事を聞きたいと思っていたが、まさかこんな事を聞くことになろうとは……深い中ではないとはいえどことなく目立つ彼女の裏の顔に少し動揺しながら水筒を受け取る。


「安心してね、僕と、あー、本来なら入れたくないけどゆずきもそこんところは固いから」

「一回区切ったやんけ、掘り返すな!」


 重くなった足取りは9月だと言うのに降り注ぐ太陽光と、コンクリートによって反射された熱により体力が削れられたから、そう願いたかった。

 ブックマークは新着小説で投稿されたのがわかりますし、ポイントは作者のやる気にもなります。

 また、ご意見ご感想も受け付けていますよ!

 ブックマークは上部に、ポイントはお話を読み終わり『<< 前へ次へ >>目次』の下に入力案がありますよ!

 作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします。

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