109節 唸れチワワよ
落ち着いて聞いてください……作者の多忙が重なり、内容が無いよう。
「おぃい」
「いいもん。うざいし、僕はマスターと一緒に居たいだけなのに」
アクロバティックな脱出方法を好奇心が抜けていない少年少女に見せた事を咎めようとするが、対象者は顔をむっとして俺の左腕を乳に挟んで先に進もうとする。
こう言った集団生活において平均から飛び出た行動をするか乱数に当たった物は標的にされる。わかりやすく例えるなら出る杭は打たれるだ。
礼ならば才能も容姿も美しいから、出すぎた杭は打たれない状態になるだろうが学生と言う閉鎖空間では出る杭をちゃんとしまえるならともかく、横からぶん殴ってくるやつもいる。
そこら辺の加減が社会経験を積んでない者には教育と虐待の線引きがわからんのだ。
「いいか、只でさえ俺と妹は……標的にされやすいんだ。性善説なんて信じるなよ」
「それは何となくわかってる。最悪僕が……ね?」
「知らんぞそれは、最終手段な」
こっちも、さすがに17年間の教育は無駄ではないと信じたい。
でも、あれか……承認欲求で馬鹿な事をやる奴はどんな年齢でもやるしな。結局バカは死んでも直らないと言う訳か。
2年生の教室は職員室と同階同館にある。つまりは、移動にそれほど時間が掛からないと言う訳だ。
礼の容姿と妖艶な肉体に目を奪われたのか、他学年の生徒に注目されながら職員玄関の前にたどり着き。
「あ、先輩ぃ。朝ぶりぃ」
「ゆずき?」
そこには比較的ラフな姿をしたゆずきの姿がそこにあった。
相変わらずハーフパンツとショートジャケットにお腹が見えるほど切り詰めたTシャツ。
室内ならともかく学校と言う、規律と教育現場と言う水には一切溶け込まない油。好期な目線にさらされながらも彼女は紫色のサイドテーブルを揺らし、肩に掛けていたバックを地面に下ろした。
「これ、忘れ物です。お弁当ですよ?せっかく作ったんですからぁ、ちゃーんと食べなきゃだめですよぉ?」
彼女はそう言いながらこちらの胸に抱き着いてくる。俺の身長は男性の中では低いほうだ、けれどゆずきは年齢的な問題で俺より小さい。
故に傍から見れば容姿端麗の少女が顔を埋めていると見えるだろう。と言うか、先ほどのセリフも俺や礼と言うよりは廊下を歩く教生徒に向けての威嚇に近い。
なんなの?狂犬チワワなの?いや、実際にはチワワの皮をかぶったティラノサウルスなのだが……年相応の小生意気な少女程度しか見られないだろう。
「いや、お前……最後まで寝てただろ?礼ならわかるが」
「ぶー、中に入ってるリンゴは私が切りましたぁ。はい、ろぉんぱ!」
「マス、海斗くん。そろそろ時間がまずいと思うけど」
腕時計を確認すればもう授業開始3分前。次の授業は苦手な物理で物理室に移動して行うからダッシュしなければ間に合わないだろう。
届けてくれたお弁当は最悪教室に向かって投げて、そのまま駆け抜けてしまっていい。
「すまん、ありがとう。じゃあ、授業があるんで」
「じゃあね。後輩」
「あ、ちょ」
そのまま、駆け抜けていく二人を眺めながらゆずきはポトッと残されたのであった。
……友人と話し合ってしまったこちらの方が悪いとは言えなんだか。
「仲間外れみたいじゃないですか」
はぁ、とため息を付き職員玄関から帰路に向かうのであった。
「やはり、これは鋭利な刃物で一撃に断ち切られたものだと断定できます。大体一か月前と言う憶測も正しく、我々が活動する前に行われたものでしょう」
「なるほど、しかし妙ですね。人間のように同族殺しを行う事は無いと言う検証結果がありますが」
「正確には飢餓状態の場合はです。満腹状態の場合、飢えた個体がリソースを奪おうとして襲う事がありますが……同族だとしてもここまで一刀両断は出来ないでしょう」
白く清潔感のある部屋。同じくらいの白衣をまとった一人の男性と一人の女性が向かい合って話し合っている。
外観から見れば病院にも思えてくるがここは研究所の機能も兼ね備えている。
機械生命体が出現した際には様々な研究機関が立ち上がっておりここももとは研究し施設であった。
政府と国連組織の融資によって出来た機関が提供できたのは、機械生命体が人類を超えた生物である事と魔法と言う物理現象を突破する機能を備えている事のみ。
いつしか、無駄飯食らいと言われ設備は表ざたには解散されていたのであった。
が、本研究施設は核シェルターが無い日本ならではの事情が重なり行ってしまえばちょっとした軍事基地と野戦病院が合体した前線基地と化している。
そこに、スポンサーの意向も相まってハナズオウがここに配備されているのであった。
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