106節 お茶会
別に、お正月だからって誰でも時間があるわけじゃないんだよぉおお!(つまり内容がないよう)
まぁ、ぶっちゃけノベルピアにも出そうと思っててそっちの準備やってた。
「私の名前はぁ、大由里ゆずきって言います。そう言えば髪切ったんですね……フードを初対面で殴られ蹴った時には髪腰まであった気がするんですけど」
「おぉい」
いきなり踏み込んでいい内容かわからない物をぶち込んだゆずき。人の心にづかづかと足跡を付けて歩くさまは、長年のお嬢様学校で鍛えられた人心掌握術故か?それとも、性格ゆえなのか。
質問された翡翠は少し困った表情で前髪を触り。
「髪、切っちゃったんだ。こう、気分を変えたいと言うか……もともとは好きだったんだけどね。けど、嫌な思い出になっちゃったから」
「そうか、すまんこの小悪魔が」
「いいですよ。クラスメイトにも色々驚かされましたから……」
そう言って優しく微笑む。芯が強い女性なのだろう……荒波に一度飲まれボロボロになりながらも自暴自棄にならず、前へ進む。そうそうできることじゃない。
「で、話がしたいと言う訳だけど。俺も貴女の事を気になっていた」
「ナンパですかぁ?」
「は?知り合いが色々後遺症とかあったら嫌じゃないか。もっとも、こう……直接話が出来て元気そうでよかったよ。日常生活に支障は?」
「はい、無いです。強いて言えば、上がった身体能力と水泳の授業の時に胸のコアを見られるって事かな」
「それも、大丈夫ってわけか。こいつらから胸の宝石は寄生体にとって心臓や肺と同等の価値があるって聞いていたからな。そうか、でも使うのはやめてくれよ」
はぁ、と小さく息を漏らしながら持ってこられた特盛デザートを手に取る。いつの間にかに注文していたのだろうか……こんがり焼かれたハニートーストの上に山盛りのバニラアイス。味変のためかストロベリーソースが掛けられているが小学生がもらう30cm定規並みの山に対して雀の涙。
うぇ、と顔をしかめる俺と妹をよそに小分けしていく。前回の反省であまり食べ過ぎるとお腹が冷えてトイレに籠ることになり、お店に迷惑をかけてしまう事を覚えたので加減をしてよそろう。
「おぉ」
「これ、いらないんじゃないかな。主食並みにあるけど……僕はきついかも」
「私は別腹でぇす。女の子は甘いものを食べる時はカロリーが零になるんですよぉ」
「寄生体で体形変化しないからだろ……」
「あに、これ、投げよ。注文したの姉妹だから立て替えてくれるって流石に業務量の1kgはおかしいって!それも掛け2だよ!溶けるからタイム制限あり!」
ちらり、甘味は別腹女子たちを一目見る。彼女らは俺が手を付ける前に口に運んでバニラの豊潤の香りとハニートーストの触感を味わいながらも次々と消化されている。
まるでベルトコンベアーに運ばれ、破砕機で粉砕されるかの如くスピードだ。
こちらに気が付いたゆずきがわざとらしく唇に付いたバニラを舌でなめとる。ぷるりとした唇に視線が動くがあまり気にせずに自らの容器へと目を落とした。
俺が抱いていた懸念は机の上に置かれる空っぽのお皿のように拭い去られていた。
おんにゃのこはだてじゃない!と、姉妹が宣言しそれに続いてゆずきも食べていった結果普通にあの量を完食したのだ。礼も何だかんだお茶碗一杯分のアイスとハニートーストを食べていたようだし楽しんだだろう。
「そう言えば聞きたい事がある。トラウマを刺激するようで悪いが……魔法少女の事を知っているか?」
「魔法少女?ニュースでやったあれだよね……。私はわからないけど、なんかこう……雰囲気が嫌な感じがする」
「俺は、天使の技術で作られたものじゃないかって思っている。データはパソコンを丸ごと引っこ抜いた奴があって、手に届く範囲の武器と薬物も押収して半分は解析に出してもらってる」
普段であれば、ハッキングや解析と言うのは遠隔操作で舞が行うが……今回の物は電波が完全に遮断されているためPC本体をパクって来た。
これならば、遠隔操作がどうこうとか関係は無い。しかし、使われている暗号が非常に高度で難しくまるで意味が分からないそうだ。古代の言語を解析してるかのようと舞から零れ落ちる。
薬物ならもうお手上げだ。あんな風に乱れる薬など素人判断で色々いじくりまわしたら碌なことにならない。
「私は戦闘用に調整されて売りに出される事はほとんどなかったけど、利用者には有名政治家とか財閥出身者だって言う人が居たみたいだよ。飛び出たお腹を張って廊下で高らかに宣言してた」
「それに、派閥があるみたいな事を言っていたね……僕的には天使の教会の最大勢力の方が働きかけてるんじゃない?」
「まぁ、名称は多彩なれど基本構造はおんなじなのは世の中の摂理ですしねぇ。緑茶、紅茶、抹茶……茶葉と言う素材は違いますけどぉやってる事はおんなじです。それを葉の部分を女の子に変えればわかりやすくなるんじゃないですかぁ?」
元お嬢様らしい発言だ。こう言ったおちゃらけた口調であるが所々で育ちの良さが垣間見える。
何もなし……か。礼と初めて契約した際に見た夢もなりを潜めてしまった。
「わかった。ありがとう……じゃあ、難しい話はお開きにして会計でもしようか。俺は奢りだって聞いてきてるわけだけど」
「流石に二言はありませんよ」
「あ、まって。これ、私の連絡先」
「あ、ああ。ありがとう」
反射的に渡された紙をポケットに入れ店から出る。
「男性が女性におごられるってなんかかっこわるくないですかぁ?」
「うっせ、世の中男女平等。能力がある奴がやる、それでいいじゃん」
「まぁ、美少女との連絡先を手に入れたしぃ。ラッキーでしたねぇ」
「うっさ」