101節 魔法少女部隊爆誕っ!?
一度、体調を崩してダレると何時もの感じに戻すのがすごくしんどい。
小さくため息を付きながら腰を下ろす。女の子の胸に腕を突っ込む回数計60回以上をこなし終えた俺は、バニラアイスを食べながら一息を入れていた。
懸念していたような嫌な事は起こらず彼女達は時期に目を覚ますそうだ。
「そう言えば兄、もう夏休み終わるよ」
「あ、そう言えば夏休みだったか……いろんなことがあって忘れてたな」
「夏休み?あぁ、先輩は学生でしたねぇ。まぁ、怪我して銃撃ってと休む暇もありませんでしたしぃ……何処か遊びに行きませんかぁ?海とか」
「何で遠出?そもそも、海ないんだけど南か東に行けと?休みたいのに?」
「僕も別にいいかな」
確かに、夏休みと言う行事はしていなかったが……わざわざする必要があるのだろうか。
そもそも、泳げる所など近くにない。市民プールは穴だらけになっているだろうし、川遊びとか水難事故を起こしたいのかってくらいだ。
余りやる気のない先輩の姿を見て、ゆずきはハーゲンダッツイチゴ味に舌を鳴らしながらゆっくりと礼と肩に触れ、耳と唇がくっつきそうなほどに近づき。
「ぃぃんですかぁ?肉体で篭絡できるチャンスですよぉ」
「!?」
「おい、なんかすごい吐息混じった声が聞こえたぞ」
3メートルも離れてないのに聞こえないと思ったのかよ。
それを聞いたのか、ガバっと三つ編みの髪が勢いよく舞うほどの勢いで顔を上げ急いで駆け寄り礼はこう言った。
「ねぇ――」
「やだ」
「なんで!」
「なんで?」
理由言ったし、そもそもだ……自分が寄生体だという事を分かっているのだろうか。
礼は胸のコアとか肩のバーコードとか下腹部の淫紋とか色々アウトだろ!ゆずきも然り。
「行くのはいいが後でな」
「……」
ふーんと口をすぼめ、目を半開きにした礼を見ながら海斗は持っていたアイスをゴミ箱に捨てる。
隣に置いていた肩掛けポーチとリュックを持ち上げ立ち上がったのだ。
「帰るの?色々疲れただろうし当然ね。送ってあげた方が良いかしら?」
「あー、どうする。俺ゲーセンに寄りたいから電車で帰ろうと思うんだけど」
「電車ですかぁ?まぁ、そこの礼さんに体験させるというのであれば良い事なんじゃないですか?田舎と言えど乗り方が分かりません!なんてあれですし」
「何かありましたら、お電話をかけてくだされば応答しますので……お疲れさまでした」
「お疲れ様」
「乙っす!」
そう言いながら海斗たちは駅の方向へと欠けていった。
先ほどアイスで急速冷却をしたとしても自然の力は強大で、すぐに体内温度が上がり結露で下げようと汗がどんどん出てくる。
近くの自動販売機で買ったスポーツ飲料を飲みながら交差点へと差し掛かる。
まだ信号が壊れているのか、警察官が手信号で車を誘導している姿の奥にもう二人……アサルトライフルで武装した軽装備の警官が警備している。
さすがに、配線関係は直っていないだろう。再開発計画で電線を土壌に埋め見栄えは良くなったが、外だけでちゃんと整備時の事も考えてほしいものだ。
しかし……まだ、アサルトライフルは全体に行きわたっておらずMP5が主武装じゃなかったのか?
基本、日本の装備は前組織からのおさがりがほとんどを占め戦闘が多い割には装備が更新されてないという体たらくをかましていたわけだが……流石に予算が下りたのだろう。
「……張り子の虎だね」
「ん?」
「何でもないよマスター。ついでに夕ご飯に使う食材も買ってきていいかな?うーん、鯖のトマト煮とか?」
そんな事を言いつつ俺達は駅に入るのだった。
室内はいつも通りの活気であふれかえっており、子連れの親子や学生など十人十色の人間がそこかしこに居る。
そう言えば、ゆずきと出会ったのもここだったか……確か、ゲームを遊んでいたら制服を着た彼女に話しかけられたんだな。
そんな時間は立っていないはずなのに懐かしく感じる。
「あぁ、先輩。ちょっと服買ってきてもいいですかぁ……私達も収入があるのでぇ。それに女の子ですから着飾りたいですしねぇ」
「あーいいけど。携帯もってないよなぁ……一緒に動くか」
そう言うと待ってましたと、それぞれの手をゆずきと礼がつかみ二階にあるファッション関連のフロアに引っ張て行く。
まるで大型犬に轢きづられるかのごとくエスカレーターを掛けていくのだ。
近くにある女性用衣類専門店に入る。結構な坪なのか、広々としており両腕を広げても誰かに当たる事はないだろう。
そのまま、夏用衣服のコーナーに差し掛かる。
俺はファッションの事などわからん。だが、露出は少ないがレース生地になっており機能性とおしゃれを両立している物だと言うのはわかった。
彼女達は思い思いに棚に掛けられたハンガーから服を取り更衣室に掛けていく。
「兄」
「なに」
「ふぇ、妹以外の女子洋服選びは長く多いんだよ。ガールフレンドが居ない私らには貴重な体験さ」
「説得力……っ」
ティーシャツにプリントされた鮭の切り身を胸で押し出しながら、妹が備え付けてある椅子に横になった。
腕から零れ落ちるほどの衣類を持っていった少女たちをおぼろげに、礼がおしゃれに気を遣うようになった事を感銘を受けているのだった。
長針が一つ過ぎるころ、試着室と売り場を仕切るカーテンの隙間からちょいちょいとハンドサイン。
俺は促されるまま何も考えず顔にかかるカーテンを優しく払いのけ。
「油断しましたねぇ。お色気がないなんて事ありませんよぉ」
「キャッチ、まぁそこで見てて」
そこには全裸で佇む礼たちの姿が。
程よい肉付きと大きな胸で圧倒する礼。スレンダーな体つきと美しいおわん型の胸で調和をするゆずき。
そのまま、俺は振り払おうと。
「いや、着替えるの遅くね?」
「動揺していない?僕たちの全裸を」
「何回もこれやってるから、別にね……お前ら喜んでやってるし目を背けずにいいかなと。男やぞ」
「そこはほらぁ、鈍感系主人公みたいに焦ったりしてくださいよぉ」
「2010年代のアニメか」
「まぁ、いいかな。だったらぁ私達の体をしっかりと目に焼き付けるんですよぉ」
「え、まさかそのかごにある分だけストリップショーやるの?自宅じゃないから早めに切り上げろよ……」
はぁーぃ、と気怠そうな返事をしながらもゆずきは脱ぎたてであろう黒色のオープンブラを後ろのかごに投げた。
……常用でセクシーランジェリーを使用するのはいかがな物かと思わんでもないが、男性である俺が言っても仕方がないだろう。
なんか、よくわからない気持ちになった海斗を捨て置き背中を向け着替えをする彼女達。後ろには全身を写せる鏡が固定されており、礼たちの肉体美を余す事なく見せつけていた。
途中で妹が顔を出し、全裸に興奮しながらも試着はちゃくちゃくと進み。
「どうかな?似合っているかい……マスター?」
「さぁ、私のセンス。どうですかぁ先輩」
「……何で肩に穴空いてるの」
「そういうおしゃれだからだろうが、空気読めよ兄」
ストリッパーどもを逆再生する事10分。彼女たちは姿を現す。
礼は白いトップスを着ていて所々にフリルが付いている。肩の部分には穴が開いてあり、なんともなまめかしさを醸し出している。後から妹に聞いた話だが、これはカットアウェイショルダーと言うものらしく学生たちの私服ではやっているのだとか。
そして、心配していた右肩のバーコードはデタッチドスリーブと言う取り外し可能な袖で、これで隠している。胸の宝石の部分は、自身の体細胞で紐を形成してネックレスに見えるようにしているのだろう。
そして下半身は黒いマイクロミニスカートで、むっちりとした太ももの絶対領域が光る。
「……似合ってるんじゃない?」
「そう、か。よかった」
「私は?こーはいですよ」
一方ゆずきは黒いハーフトップの上に半袖のパーカーを羽織り、ワンポイントの紫色が光る。ハーフなので、胸を隠すぐらいの長さで健康的なお腹とへそが露出している。礼と同じく胸のコアはネックレスのようにしているようだ。
そして、下半身はホットパンツにガーターベルトと露出度が高い。
逆にアクセサリーは充実しているようで、髪留めに指輪とそちらの方でバランスを取ってきたようだ。
ただ、主観と言うか……先入観と言うか。
「なんか、メスガキって感じ」
「メスガキ!?そこは小悪魔とかサキュバスって言ってくださいよぉ!!」
それは果たして褒め言葉になるのだろうか?
海斗はそう思ったが、何か言うとめんどくさくなりそうだなと判断しそのままレジに連れていきゲームセンターやスーパーに行くのであった。
電車に揺られる事5分ほど、窓から見える景色も灰色の人口ジャングルから黄色緑色の割合が大きく締めるようになったころ、ゆっくりと自動で扉が開いた。
まるで寝れるほどに空いた列車から無人駅に降りる。黄色い線もかすれた寂れた駅だ。
「そう言えば学校ってここから10分ほどに有るって聞いたけど?」
「あぁ、礼は知らないよな……確かにある。俺が通ってる水乃内高校だな……関東統合都市になってから資金が潤沢になったのか、数年前にはリニューアルしちまってピカピカだ。トイレはウォシュレットあるし、PCはコアI7で中学との雲泥の差だな。まぁ、前の市資金がごみカスなのが問題だったのだが」
「一山超えれば、老人6割と……シャッター通りに一定距離で介護施設と。まっ、私達みたいなかわいい女の子が見るべき所は無いと思うけど?」
「えぇ、いなかぁ」
シャッターに側面を囲まれた商店街を通る。ここも、バブルとか戦後の1960~80ぐらいまでは栄えていたのだろうが、今では名残の骸を晒すまで。捲土重来は起こらないだろう。
一応、おいしいピザ屋さんはあるんだけど……あれはどちらかと言うとデザートのパンの上にバニラを山ほど乗せたものが有名になったからであってな。
車道にまで伸びた雑草を鬱陶しく思いながら橋を渡り山の方向へ進む。
この山をちょっと上った所、これが我が家だ。今まで反対側からしか礼たちは視たことが無かったから新鮮なのだろうか?
庭に生えている野菜に適当に水を与えて、なんか良さそうなのを摘み取る。
「ただいま」
誰も居ないであろう室内に癖で返答をし、玄関で靴を脱ぎ放る。
妹が、トコトコと階段を登るのはきっと貯めてたゲームフラストを発散するためだ。これじゃ、夕ご飯が出来るまで降りてはこないだろう。
エアコンの電源を付け和室に寝る。顔をリビングに向ければ、美少女二人が買い込んできた食材を冷蔵庫に入れている。こっちは真夏で体力ボロボロなのに元気な事だ。
妹がそこらへんに放置したリモコンを探り当て、テレビの電源を付ければ料理中のBGMぐらいになるだろう。
よっこいしょ、状態を起き上がらせボタンを押し立ち上がる。彼女達ばかりに押し付けるのもあれだしな。そう思いながら和室から出ようとした時。
『速報です。日本政府が魔法少女による治安維持部隊を創設したと発表しました。繰り返します……日本政府が――』
「は?」
「ふぁ!」
「え?」
耳で踊った衝撃にレポーターの発言に、三者の視線がテレビに突き刺さる。
そこには、見覚えのある宝石を身に着けた少女たちが制服のようなものを着用して並んでいる姿であった。
「なんだそれは聞いてないぞ!」
「咲これは一体何?」
此処は石竹民間警備会社のロビー。テレビでは残酷で冷酷な真実のニュースが飛び出している。
少女たちの様子を一目見ようとSS隊員の彼女らは公務の隙間を縫いこちらにやってきていたのだ。
そこで飛び込んだ、魔法少女たち……思い出されるのは先日の実験施設。
「……確かにこれは、辻褄が合うかもしれません」
「彩?」
「体長、最近おかしいと感じませんでしたか?SSの活動の停止、有識者の援助なし……では、徴収した税金はどこに流れていると思いますか?ロシアのもみ消しの件は実際には使うから手を出すなと言う事ではないのですか?」
「あの取引は……そういう事か?」
「流石にすぐに解散はないでしょう。ですが、新たに嵐がやってきた事は確かです……一体進路はどこに向かってくんでしょうか……」
小さくため息を付きながらソファーから立ち上がる。
「お前ら……帰るぞ」
「ちょ、何をやらかすつもりなんすか!?」
「流石に、まだ何もしない……これは私達が考えている事よりもっと別の何かが動いているかもしれない」
彼女達は一斉に出口に向かっていく。その先には見えないが確かに、重くドロドロとした壁があるのであった。
とある建物の中一人の少女が座っている。まるで、王座のように……いや実際彼女にとっては王座なのだろう。豪華な椅子に足を組みながら座り、報告書へと視線を落としていた。
此処はどこかのビルであろうか?部屋を囲むガラスには遮る障害物は無く、飽きるほど広がる夜空と下々の足掻きが目に映る。
「売り込みは上場……ふふ。私達の力は行政を侵食するのはたやすい……これで、胞子は撒いた。私の夢の実現に一歩近づいたわ」
「巫女様……これからの計画はいかがなさいましょう」
「決まっているじゃない。選ばれた新人類が生きる理想郷……アヴァロンを作るのよ。そして私は世界を赴くがままの神になる。けど、手が足りないわ……まがい物じゃない本物の」
「では、寄生体の捕獲を命じておきます」
「それでいいわ。下がりなさい」
「はっ」
僕が退出していくのを横目に立ち上がる。
絹のように輝くプラチナブロンドの髪にピンク色の瞳、衣服は来ておらず女神のように整った美しいプロポーションが現れる。
もし、ここに芸術全盛期の画家や彫刻家が居たのであれば、ヴィーナスを投げ捨てて彼女の足に縋りつくほどの神々しさを放っていた。
「下等生物の公僕……それなりに優秀のようね。まぁ、アイツうざかったし生産拠点を潰してくれた方が得だわ」
読み終えた報告書を空中に放り投げ指を慣れせば、黒いチリが宙を舞う。
そこには紙と言う概念は存在しなかった。
サイドテーブルの上に置かれたワイングラス。血のように真っ赤な酒で桜色の唇を濡らし、舌をうつ。
喉元から換える匂いを鼻孔に感じながら、彼女は腕を伸ばす。
いや、正確には腕ではない。人間の形をしたものが可動域を超えた所で、触手へと変化し4mほど伸びたのだ。
コレクションの少女をこちらに寄せる。私の自慢の花嫁たち。
よく見れば、彼女だけではない。部屋の周りに棚に置かれたフィギュアのように少女たちが置かれていた。ウェディングドレスはほぼ布がなく、あくまでアクセサリーとして使用している。
「さて……私の世界が始まるまで、遊びましょうか……ゆっくりと」
そうして彼女は抱えた少女の唇を奪った。
と言う訳で、やっと第一部の超重要キャラの一人がやっと登場しました。
これから、主人公たちの行く末をどのようにひっかきまわすのか……楽しみにお待ちください!
ブックマークは新着小説で投稿されたのがわかりますし、ポイントは作者のやる気にもなります。
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