100節 後始末
本当なら次回の奴を収めようと思いましたが、作者が体調不良になりまして……。某吸血鬼みたいに「頭痛がする……吐き気もだ」っおろろろろろと。
と言う訳で、次回で色々動き出して本章は終了になります。
区切りになる際には、小説を見直して誤字やルビ振りや設定資料を加執修正するので新章が開始するまで少し空くと思いますがご了承を。
「あー、知ってる天井だぁ」
澄んだ空気が風と共にカーテンを泳がしながらほほを撫でる。揺れ動く窓掛けの隙間から、優しく包むように日光が起きてと瞼の上から転がし、目が覚める。
仰向けの状態だったのだろう。まず初めに飛び込んできたのは白い天井であった。次に認識したのは体重を支えるベットの柔らかさと鼻孔をくすぐる消毒液のにおい。
左腕の静脈には注射針が差してあり、ホースの先にはバッグに吊るされている点滴が。
心拍ように繋がっているコードがはがれないように腕を動かし、頭を触れば指先に伝わるのはガーゼ布地の感触。
とりあえず、俺のベットに顔をうずめている女の子たちを起こさないようにナースコールボタンを押した。
「お前は、夏休み中に何回入院したんや?あぁ!!3回やぞ!こちとら暇やないんやろがぁ!」
「……すいません」
「保険に入ってるからましやが、普通結構な額消し飛ぶからや!」
「はい。ごもっともです」
コールで駆け付けたのは医院長である純玲だった。
わざわざ、色々な仕事を対処しながら厄介な患者どもの世話をしなければならない彼女は、端的に言ってしまうとストレスが溜まっていた。
寄生体がいる何て漏れたら、誘拐どころか職員の首が物理的に飛んだり頭に穴が開くかもしれへん。
そもそも医者と言うのは人を治療する仕事ではあるが、直したからまた怪我をしていいとは言ってない!など、小一時間ほど説教をされるのであった。
「で、精華さんたちがお見舞いに来なかった理由がこれですか……」
「そうなのよ……コレどう処理すればいいのかわからなくて」
相変わらずうちの病床は有限や、傷が治ったならとっとと出てけ!をされ、向かいに来た夏の車に揺られ到着する石竹民間警備社内。そこでは、昨今見る光景になってしまった精華の書類風呂に漬かる姿が。
チラリと、散らばった書類を見てみれば消費した弾薬に教会施設の報告書など見てるだけで頭痛くなってくるぞ。
いや、まぁ……所詮は紙よ。こんなん、咲さんや夏さんが来るだろうから問題ない。
――問題として上がるなら、そこに寝っ転がってる女の子たちだろう。
「あの施設で売春された女の子たちですか……」
パソコンに映し出された監視カメラの映像へ振り向いた。
普段であればロビーとして使われている空間であるが、現在は所狭しと少女が並べられている。ソファーに、床にと軽く見て……ざっと60人ほどか?学校のクラスより明らかに多いな。
彼女らはあの多目的ホールと名のベットルームにいた少女たちである。どうやら知らず知らずのうちにここにコンテナで輸送されていたようだ。
マリアとかいうエセ修道女が……約40人と言っておきながらお代わりが入ってる。これだけ居たら純玲も誤魔化しきれないだろう。だからここで寝てるわけか。
「本来であれば親元に戻すのが正解なんでしょうけど……」
「まぁ、薬キメでアヘアへリアルエロゲー状態プラス人体改造済みとか野に放ったら色々とやばいし……何でも、行為の動画が裏社会では高額で取引されてるんだとー。はぁ、未成年女子が見るもんじゃないね」
「妹よ……いつの間に。いや、施設にあったデーターをハックしたのか」
「そーとーり。直ぐに保護者組が目を覆い隠したけど……生理がきついかい?妊娠知れば大丈夫だよ!とか……多分、何人かは腹の中にいると思うよ」
「そうだよなぁ……」
此処で放置されている理由は何個かある。
1つ。違法薬物を摂取してまともな判断ができないと言う事。まるで人形やNPCとしゃべっているようだと夏が言及。
2つ。保護者との問題。これは、咲さんが調べているが娘が知らずの内にこう言った事件に巻き込まれて尚且つビデオが露出しているのは、親御さんや彼女たちのバックアップがうまくいかない。特に妊娠している可能性が高いのも特徴だ。
3つ。これが一番深刻であり、彼女たちは半寄生体化している。
「正直に言って翡翠ちゃんなんかは何とかなるのよ……自我があるし。だけど、もし彼女たちの情報が洩れていや漏れてるわね。彼女を兵器として利用しようとする輩が出たのなら」
「これまでのトークで精神は受動的。基本的に言う事は聞くが無茶な事でもそれが人を救うためと言って、命を投げ捨てる事も辞さないっす。体のいいサンドバックになってる事を自覚しないまま……」
「はぁ、これが寄生体じゃなきゃ法的機関に任せるのだけど。法務省の官僚が天使の教会と繋がっている可能性が高いし……最悪人体実験のデータ取りよ」
サラッと、研究所で手に入ったであろう資料をもって入室してくる二人。
何度でも言うが彼女らは教会が言う所天使と言う生体兵器である。
只さえ寄生体とか言うよくわからない生物を半分にぶった切って取り付けた、頭イカれた科学者が作ったものだ。
これが、もし表座になってしまったら様々な事が起こるだろう。
人は誰しも十人十色の望みを持ち、そのうちの一人が不老不死とか俺は人間をやめるぞー!的な願いを持っている可能性が有るのだから。
「後から聞いたんだが、こう……なんか。ナイフをぶっ刺して治療する事が出来たんだろう?それはできないのか?」
「咲さんそれは難しいです。あれは例えるなら目隠しをしながら二つの機器に銅線はんだ付けをするような事ですから……。それにあれはコアがそろっているから出来ることですし、ナイフを刺して洗脳?を解いたとしても、精神崩壊する可能性が高いのでは?」
「そもそも、死ぬんじゃね?」
確かに、彼女たちの精神汚染が魔法的なもので処置されていた場合は解除は出来るだろう。
が、解除した後慰み者になっていた彼女たちが正気に戻った時……発狂せずにいられるのか?また、正気を保てたとしてもマナの修復は困難で、現代医学は使えないと言う災難がある。
「二次災害的な事を考えれば……処分するのも、考えなくてはならないな」
「ちょっと、撃ち殺す気?彼女たちは被害者なのよ!」
「まぁまぁ、お互いの言い分は理解できるっす。被害者でもありますが友人や知り合いを沼に沈めた加害者でもある……最終ラインの殺人を超えてないだけましっすが、それもいつ踏むかわからず踏んだら大爆発の大爆弾。制御棒がない原子炉みたいなものですから、爆発する前に壊してしまえと言うのもわかるんすよ」
はぁ、と小さくため息を付きながら精華はカップに入った紅茶を飲み喉を潤した。
その後、散らかった書類の中から目当ての物を取り出しじっくりと精査し。
「仕方ないわ。とにかく、情報が集まるまでこちらで預かるものにします。お金もある程度余裕があるし……秘密保持契約の範囲外なら問題ないでしょう。もしもの時は、咲にも手伝ってもらうわ」
「はぁ、やはりこうなったか……。いや、これが精華の美徳だから必然と言うべきか……私達も何かあったら擦り付けてしまえと思う事があるからな」
「えぇ、それは最初から決まっているのだけど……問題はご飯なのよねぇ。マナとかマソとかどうしようもないわ。人を襲わせるわけには行かないし」
「手に入れた報告書から、体液で代用は可能と書いてあるが売春させるわけには行かないな」
ポリっとお皿によそられたチョコチップクッキーを口に含みながら、精華さんたちの話を耳に傾ける。
なんと言うか、自分のせいではあるが凄い事になってしまったな。と、未だ疲労が抜けていないのか客観的に聞いていると。
「ねぇ、海斗君。貴方確かマナをわけられてわよね。それで、なんかできないかしら」
「え?えっとすごい抽象的ですね……」
ポロっと口に付いた欠片が宙に舞う。
言いたいことはわからなくもないが、それって俺の体は大丈夫なのだろうか?
確かに契約してしまえば、もう彼女たちにあんな事をさせなくても良くなるがそれで植物状態になるのはいやだ。
「……そうだね。出来るんじゃないかな?もし、不具合があれば僕たちが止められるし……それに無理やり切れるからね」
「まぁ、勝手に部屋に客が上がりこんでくる並みに不快感はありますけどぉ……人名救助のために仕方なく、仕方なく、仕方なく!許容しますかねぇ……悪人であったら速攻頭を撃ちぬくぐらいな価値観の人間ですけど、そこまで腐ってはないですしぃ」
「まぁ、明らかにテロの首謀者と言える人が居れば一撃一殺を入れない方が間違ってると思うけど。いいわ……じゃあ、下に降りましょうか……作業は純恋が来てからね」
そうして俺達は、一階にあるロビーに降りて行った。
あの銃撃戦から四日ほどたち、ある程度は綺麗になっている。もっとも、散らかった木片やコンクリートの粉やガラス片を掃除しただけで、壁や地面を穿いた弾痕はいまだ存在している。
大体一週間後に修理業者が来るようだ。もっとも業者に頼むのはあくまで表だけで、裏は機密があるから工兵部署にやらせるらしい。
完璧に修理が終わるのは学校が始まる後になるだろう。
小さくため息を付きながらハチの巣になった自販機の脇を通り過ぎようとしたとき。
「おはようございます」
「ぉっ!?」
「と言っても、もうそろそろでお昼ご飯と言った時間になりますが」
「あれ、かいちょーとその妹じゃん!こんな所でどったの?」
そこにいたのは、小奇麗な服装でおめかしをした二人であった。
白い色のブラウスにスカートをサスペンダーで止めた楔。紐がわきを通りその影響で胸が押し付けられ、清楚な中でも色香が混在している。
翡翠はこちらは紺色のワンピースに同じ色の花の髪飾りを左にしていた。
「えぇ、お礼と言うかなんというか……ともかく、貴方が寝ている間に起こった出来事を私は報告する義務があるので病院にお邪魔させてもらったのですけど。もう既に退院したと」
「あー、入れ違いになったのか」
「学校で話すわけにはいきませんし、それにあなたも当事者ですから……」
それから、様々な事を聞いた。
彼女達は無事家に帰る事が出来たようだ。だが、それからが大変だった。
無理もないだろう。愛する娘が人外になりつつも無事?に帰って来たのだから。
美しい髪や瞳は黒から緑色に変色し、胸には半分の宝石が植物の根のような物で固定され方や一人は犯罪の片棒を担わされていたとなれば波乱がない方がおかしいだろう。
けれど彼女達は、それを恐れず両親に真実を告白したのだ。
両親は暫く動揺し、一時の時間が過ぎた後で抱擁しながら言った「帰ってきただけで十分だ」と。
「別にそんな英雄みたいな感じで見ないでくれ。こっちも利益があるからやっただけなんだからさ」
「それでも、私たちはお礼の言葉を言いたいの……ありがとう」
そうして、頭を下げてくる翡翠。俺は……。
「頭を下げるんだったら、俺の通知表を改ざんしてくれないかな。数学と物理がやばいんだわ」
「そうだ、兄って計算系全部赤点だったんだわ」
「……。真面目に勉強をするという手段はとらないのですか?何でしたら教えてあげてもよろしくって」
「嫌だね。それと、自分の身は自分で守れよ。銃は返さなくてもいいが、後で会うやつ見繕ってもらうんだな」
「ご主人様照れてるのかい?」
「心配してるだけだ」
きゃっきゃとはしゃぐ子供たちを後ろから大人たちは見守る。
その様は近所の人が公園で集まって井戸端会議をしているようで。
「若いわね」
「青春っすね」
「学生だな」
ほほえましく眺めていた。
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