表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第3章 欠けた緑柱石
102/150

98節 拳に銃を

 小説内では、ヒロインは闇落ちっぽい衣装来てますけど……普段と言うか清楚な服装なのに実はもう堕ちてる。

 敵のビジュとして結構良いアイデアに、そして自分の性癖的にもいいのでは。

 風をまとった打撃を相手に飛び込むように避け、後ろ蹴りを放つ楔。だが、翡翠は後転をして避けていく。


「はっ」

「ふっ」


 今度は近くにあった管理しているであろうモニターを足蹴にし、跳躍からの踵落しを繰り出すが籠手で受け流され手甲で反撃される始末であるが、主武装ではないため吹き飛ばされただけでセーフ。

 めり込んだ体を起き上がらせ攻防の応酬を続けていくが、これじゃいつまでたっても埒が明かない、状況は拮抗しているように見えて時間は相手に味方している。

 俺が気絶してしまうタイムリミットは後二分も切っているだろう。倒れてしまえば、礼たちに魔力を遅れなくて戦線崩壊だ。

 ゆずきが俺に触れ傷を治してくれたお蔭か、立つために何か支えがいるほどの衰弱は回復している。が、それでも満足に動けるかどうか。


「行くんですかぁ?」

「……行かなきゃ無理だ」

「そーですか。私は……ちょっと無理そうなのでここで応援しておきます」


 そうして彼女は自らの足に視線を落とす。

 そこには、足首が完全にひん曲がった姿が。シミのない美しい肌は青く変色し、所々には皮膚と筋肉を突き破った穴があり生命の源が零れだし赤い水たまりを作っている。

 大方、メイスの奴に嚙まされたのだろう。あんな状態じゃ、健も骨もぐちゃぐちゃで自らの体重支えられない事は明白だ。


「……行ってくる」

「はい、待ってますからね」


 決意をもって俺はゆずきが作り出した結晶から身を乗り出して、左手に持った銃を発砲した。

 二人の応酬間に一つの弾丸が割り込んで、双方トビウオのように飛び跳ね距離を取る。楔は俺に真横、いや少し前に陣取って。


「よぉ、いい加減長くて飽きて来たんでな。そろそろ決めてやる」

「?」


 去勢と虚言を張り付けて俺は楔の前に出る。おっと、気が付いてくれ楔……俺はすがる思いでナイフの柄で後ろポケットを指す。


「そうですわね。いい加減決着をつけましょう」


 スッと柔らかな指の間隔と同時にポケットの中にあったアレが引き抜かれる。そのまま、彼女は後ろに引っかけて再び俺の一歩前に踏み出した。

 これは、行き当たりばったり。相手が挑発に乗らなかったりした場合は積みだ。

 今までとは違う、何時もは自分がピンチになった時は必ず周りに精華さん然り夏さん然り大人が一緒にいてくれた。

 でも、ケツ持ちが居ない完全な博打。人も情報も武器も何もかも足りない大博打。

 ――やるしかない。


「ほーん?そうですか、(ホラ)ではないことを祈っています。御子に使役された天使の性能も見たい所ですし……ここらで一発派手に決めろや!」

「了解」


 そうして各者一斉に踏み出した。俺は、拳銃を三発発砲するが籠手で弾かれる。

 その後、楔が助走をつけてハイキックで顔面を狙う。ファと飾りしか意味のないサイドスカートが揺れ、食い込(レオタードなので)んだ布(パンチラではない)が惜しげなくされされるこの一品。

 だが、大振りな攻撃など少し頭を引かれて避けられるだけ……。その後、身を屈めアッパーカットで足を潰そうとした瞬間。

 カッチャ!と迫る足によって隠されていた半身が、右手には黒光りするものが握られており。


「キャァ!?」


 パンと小口径弾特有の乾いた炸裂音。握りこぶしにあったのは黒い拳銃だった。

 SIGP220……まだ日本国防軍となる前の前身組織である自衛隊で使用されていた拳銃だ。古めかしく金属が使われたフレームにシングルマガジン。

 そして、間違って買ってしまったのか正式採用弾(9*19mm)ではなく大型拳銃用(45ACP)と明らかに予備武器として倉庫に封印されていたであろうものだ。

 これは、礼が囚われていた施設からパクって来たもので在庫もまだあり、楔を救出した際の護身用武装として用意していたもの。


(まさか、寄生体が銃を使うとは思っても見なかっただろ!)


 こいつらは、銃と言う最高傑作の殺戮兵器を甘く見ている。

 今まで何十億と人を肥やしにしてきたそれは、機械生命体においてはあまり威力を発揮しなかった。何故なら魔法障壁がありダメージが余り通らないからだ。

 だが、銃は今日まで継続して使われている。理由としては遠距離攻撃性と殺傷能力の高さ。

 飛び道具はと言うか攻撃の命中精度は距離と反比例し、距離が離れているほど被弾確率が下がる。それは、機械生命体相手でも同意で化け物を相手の間合い外から攻撃できる手段として優れている。

 そして、威力。確かに聞きにくいと述べたばかりだが効かないとは言ってない。食らえばダメージが蓄積するし、仰け反ったりする。


「……っ!なるほどぉ、猫だましですかぁ。機械生命体は銃を向けられても感情がないから動揺せずに行動が可能ですね。しかし、人間の知識と感情を持つ寄生体は人だったころの記憶で銃は危険なものだと知っているから、恐怖心で体が動く前頭で考えると言う動作が割り込んで来るから、アクションがワンテンポ遅れるって事ですねぇ」


 お前はずっとずっと、人形だとほざいている見たいだが……思考し自立し感情を持つそれは生物としての機能を失ってはいない。

 銃と言う明確な脅威を認識した身体は、機械のように動けるのか?もっとも拳を振るうより指を曲げる方が速いが。


 発射された弾丸は、頭部に当たるが貫通せず弾頭がつぶれ止められる。彼女の皮膚一枚削るのと大きく体制が崩されると言う結果を残して役目を終えた。だがそれでいい。

 そのまま、手首をつかみ足を一歩踏み出しながら拘束しようとする。

 体制が崩れた所で押し倒して、翡翠の胸にナイフを突き立てる。これが、俺がなすべきこと。

 が。


「っ!はああああ!」


 突如爆発。まるで、戦闘機が横切ったかのような疾風が彼女を中心に巻き起こる。

 こいつ、最後の最後でノーリアクションで魔法を使いやがったっ!

 そのまま、楔は竜巻で飛ばされるテントのように宙に舞い、後に残ったのは三メートルほど後方にいる俺。

 まずい、魔法は胸のクリスタルの光からマナ不足であろうことは目視できるが、相手の拳の方がやや早い。それに、倒れてくれないとじっくりと狙いが定められない。

 手甲が装着された手がこちらに迫ってきて。


「やらせないよっ」


 突如、黒い何かが回転しながら飛来し相手の腕を弾き飛ばしたのだ。その威力は、着弾した腕が本来想定されている可動域から逸脱した事から込められていた威力はそうとう。

 一見余りの速さで投げられてきた事から、視界の中央をゴキブリが横切ったかなっと一瞬思ったが身覚えがある赤黒い宝石にぱっちり瞳がこんにちわをしている。

 つまりこれは、レーバテイン!


 ちらりと視界の端に映った礼は、少し不服そうな表所でどこかに視線を向けた後こちらに気が付いたようで、桜色の唇を動かし「後で、一回言う事を聞いてもらうから」と。

 近くに転がっていた天使を邪魔だと蹴り飛ばしながら俺に微笑んだ。

 少し身震いをしながら目の前にいる翡翠に向かって跳躍。そのまま、彼女に馬乗りでのしかかり目を凝らす。

 ――寄生体はマナを補給してくれる人間に親愛や愛情を持つ事は何となくわかっている。けど、俺の瞳にはそんなものは映っていない。

 つまり、自身を人形と言っていたのは外的要因。そんな都合よくて便利な事が出来るのは魔法しかありえない。


 狙いはただ一つ、


「安心しろ……」


 ナイフをクルリと逆手に持ち替え、


「ちょっとばかし……」


 黒く濁った魔力だまりに、


「痛いだけだっ!」


 突き刺した。


「っ!?あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

「っ!?なんだこいついきなり痙攣して」

「この現象は私のデータには」

「翡翠、翡翠!」

「おい、下手に触るな」


 なんだ、突然!俺はナイフを刺した。少なくとも、すぐに死ぬことは無いような位置を見極めつつ相手の行動を阻害する場所に。

 だが、これは違う。痛みではない、もっと根本的に間違っている。

 近くに駆け寄ってきた楔が少しこちらに目線を向け手を握れば、白い靄のようなものが流れていく。

 そうか、本来心臓などを半分に分かたれて無事であるはずがない。大方、先ほどの黒い魔力が彼女を改造した際に出来た物なのだろう。


 あれは彼女を縛るくびきであったのと同時に命綱であったのか。

 楔から移されているのはマナ。機械生命体にとってはガソリンであり酸素であるそれを、過度に失ってしまえばどうなるのか。


「痛い、痛いよ。つらいよ。頭も心も……ごめんね、こんな妹で」

「翡翠!目を開けたまま、閉じたら」


 やっぱり洗脳状態は解けてるが、マナの流出がまずい。

 このまま、寄生体が死滅すれば彼女も死亡する。一体どうすればいい?今行ってるのはあくまで延命治療、出血している量と同じ量の輸血を行っているにすぎないし、こちらは医師なし在庫なしだ。

 手を離してしまえば、この命の灯は消え。


(いや、違う、だろ?物理的な距離は生存するにおいてあまり関係ない。後は、穴を塞いでしまえばいいだけだ。それも、魔法関係なら何とか出来るかもしれない)

「私、もう汚れちゃった。やっちゃいけないことだってわかってたのに。完全に価値観が壊れちゃってて」

「関係ない、たかがそんな事で私が翡翠を捨てるものですか!」

「でも、無理なんだ。アレが無いと私は生きられないんだって、そんな体に変えられたって。もう一度おねぇちゃんに手を出してしまうのならいっそ」

「おい、何話を勝手に進めてやがる」


 そう思いついたのなら早く行動しなければ。

 姉妹の感動の再開と永遠の別れ的な問答を押しのけつつ俺は前に出る。

 あぁ、勝手に進められては困る。俺は納得していない、この道筋も終わり方も。


「あな、た、は?」

「俺?巻き込まれた後輩だよ俺は」

「そっか、ごめんね。みっともない姿で」

「みっともない姿?少なくとも下の奴よりはまともだと思うぜ。でだ、お前は行きたいか?罪の意識とかそんなん関係ない、お前は姉と一緒に生きたいのか?」


 罪とか過去とか、そんなの今を生きるのには関係ない。

 今お前がしたい事を、考え、行動し、選べ。

 それにだ、このまま死なれたらすべてがパーだ。初対面の奴に向ける観賞なんてほとんどないでも目の前で死にかけてる人を見て見捨てられるほどの呵責もない。けど、生きる意志がないのに救い上げられるほどの力はない。

 返答を……、感覚的には数秒たったころ小さく唇が動き。


「ぃきたい。私は姉と一緒に生きて居たい」

「おせぇ、が。何とかしてやる……楔、手を握れ」

「わかりました」


 俺は楔に左手を握らせた後、近くに置いていたナイフの刃の部分を持ち自らで手のひらを切り裂いた。

 契約には、血液や体液など体細胞があればいい。もちろんここで契約したって、穴が開いた容器に水を注いだってなんも意味もない。

 が、穴が開いてるなら違うやつに繋げて循環させてやればいいんだよ。

 俺は、楔とエンゲージをして魔力を集中的に送る。さっきは複数に魔力を送らなければならない問題があったが、もうそれは事後だ。

 腕に、半透明な鎖が何処からともなく装備される。

 赤い血が流れる手のひらを装着された鎖部分が埋まるまで、翡翠の胸に腕を突っ込んだ!


「ぁっ!」


 本来、胸に根付いた宝石は半分に分かたれる事はない。が、今回は外的要因で切断されてしまっている。しかし、機械生命体の身体能力を舐めちゃぁいけない。

 マナがあれば自らの細胞増殖を活性化し、驚異的な再生能力で傷を治す。

 つまりだ、妹がない臓器を姉とつなげて代用させてしまえばいい。


「臓器の相性?んなもん、血が繋がってるなら移植出来るんだから問題ないだろ!それに、物理的な距離は関係ない。ドナーを生きながらえさせながらお前も生きれるんだ」


 ぐちゃぐちゃと胸の宝石の中を進んでいく。まるで、泥のように腕にまとわりつく体細胞を感じながら俺は赤い瞳でぽっかりと開いた穴に鎖を突っ込んだ。


「んっ」

「あっ」


 そのまま、マナを注ぎ込みラインが一体化するように……見えないけどきちんとあるものが繋がった感覚を捕らえ俺は腕を引き抜いた。

 楔に彼女から離れるように促す。

 容体は……大丈夫。


「わかる。私と翡翠のつながりが」

「おねぇちゃん」

「な、とかなったな」

「なるほどいいデータが取れましたね」


 俺は今まで存在を消していたタナトスに銃を向け振り向いた。

Q、つまりどういう事?

A、スマブラのアイスクライマーみたいになった。


 ブックマークは新着小説で投稿されたのがわかりますし、ポイントは作者のやる気にもなります。

 また、ご意見ご感想も受け付けていますよ!

 ブックマークは上部に、ポイントはお話を読み終わり『<< 前へ次へ >>目次』の下に入力案がありますよ!

 作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ