雨が降ったのだった -2-
雨降り、傘さし
見上げれば、黄色
水滴が跳ねて、集まり、小さな川をつくる
川は傘端で、堪えようとしたが、遂には大きな粒となって
アスファルトへと落下する
パシャリ
ほんの小さな落滴が、そこらかしこで些細に空気を震わせる
それらが、響き渡っているものだから
僕のため息を隠してしまった
僕は、歩む
カーキ色のブーツは、黒くなったアスファルトを踏みしめ
時折、その隙間に溜まった水を低く弾いた
赤い車が後ろから、傍を通り過ぎた
その際に水溜まりを勢いよく弾いたものだから
僕の右半身へ、跳ねたそれらが着地する
追い越していった車を、ぼぉっと見つめる
やがてコートの右側を手で擦った
大いに濡れたことを確認すると、実家の犬を思い出した
雨の中ではしゃぎ回るそれを、抱き寄せた時の手触りに似ている
踵を返す。
コートのポッケから携帯電話を取り出すと、彼女にメールを書いた
“今日は、少し遅れます”
電話をポッケに戻す前に、それが震えて、着信を知らせた
“わかりました。待ってます”
それならば、と胸の辺りがほのかに温まる
この細やかな熱で、濡れた半身を暖めて参ろうか
カーキパンツの右後ろのポッケから、紺色のハンカチを取り出すと、その情熱を手助けさせた
雨が降ったのだった -2- 終