3章 錬金国家アルケミー34 -16日目・水泡の行方−
見えない手を使い、ルーフの亡骸を道具空間の中に投げ入れながら、闇の龍に話し掛けた。
「忘れてたが、可能な限り俺の方から報酬を出す」
闇の龍がいなければ、ギルドマスターとモーブを救出できなかっただろう。流石に彼女をタダ働きをさせるのはどうかと思うしな。
「妾にも報酬をくれるのか?そうだな…、それなら、其方は強いし、妾と…」
闇の龍が全て言い終える前に召喚を解除し元いた場所に返した。モーブとおっさんを見えない手で抱え、その場からできる限り遠くに離れた。上から巨大な何かが降ってきていたからだ。
それは勢いよく地面へと当たり、俺達がいた辺り一面は湖になっていた。
状況から大きな水の塊が降ってきたようだ。
俺はコレに心当たりがある。初めて使った魔法だ。あの時の魔法が、ここまで届いたのか…。
どうやって報告しようかと思いながら湖を眺めていると、騎士団が到着した。
「貴様!冒険者ギルドのギルドマスターと職員に何をした!」
「俺は何も…」
「怪しい奴め。こいつを拘束しろ!」
話をする間も無く、手足を縛られ目隠しをされた。拘束を解いて逃げようと思えば簡単だが、今回はそれをしようとは思わない。心象を害するだけだしな。
その後、馬車の荷台に放り込まれ、城の牢へと連れていかれた。
目隠しをされているのに、連れていかれた場所がわかっているのは、状態確認のおかげである。
牢の中に着くなり、あの場で起きた事を尋問された。俺は見たものと、自分自身の今日の行動を報告した。
この間、拷問は受けていなかったが、手足の拘束はされたままだった。
「嘘は言ってなさそうだが、Aランク冒険者2人が苦戦していたのに、その2人を守りながら、闘えるのか?しかも袋の中にギルドカードも無いし」
「手の拘束を解いてくだされば、取り出せるんですが…」
袋の中に見えない手を入れる事が出来ないので、取り出す時は、自分の手で取り出すしかないのだ。
「それは不可能だ」
「当然ですよね。ギルドマスターが目覚め次第、俺の能力について確認してもらえれば、可能な事は証明出来る筈です」
2人は数時間後に目を覚まし、彼らが国に報告した事により、俺の無実が証明され即解放された。因みに、水泡の事は、『空から水の塊が降ってきて湖ができた』とだけ言っておいた。
身元引受人が必要だったようだが、ギルドマスターが身元引受人になってくれた。俺はギルドマスターとともに城の外に出た。すっかり夜になっていた。
「モーブさんはどうしたんですか?」
「今日は直帰させた。それと話があるから、ギルドへと向かうぞ」
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ーギルドマスター執務室ー
「まずはじめに、助けてくれた事を感謝する。俺とモーブが、今生きているのは紛れもなくお前さんのお陰だ」
「モーブさんを行かせてしまった時点で、俺の役目は果たせてないし、その辺は気にしないでください」
「あいつが突破してくるのは想定してたがな」
ギルドマスターはそう言いながら笑った。そのあとすぐ、急に真面目な顔になり話始めた。
「さて、ここからが本題だ。今回の件だが、お前さんの…」
「俺の功績は全てなくる。今回あの大群を処理したのはAランク冒険者2人って事になるんだろ?」
「…話が早くて助かる」
Aランクの冒険者2人を救出して生き残った人間を国が放っておくわけがない。間違いなくSランクの冒険者にされる。そうなると、強制的に誰もが困難な依頼をやらされたりし、行動が制限されてしまう。ギルドマスターは、その辺を考えた上で俺の功績をなくしたようだ。
「それと魔物の亡骸だが、あれはどうした?」
「全部回収してあるぞ。ギルドマスターとモーブさんの取り分はどこに置いておけば良い?」
50匹は粉々に砕いてしまったので、その分の亡骸は無い。150匹は自分の分、200匹はモーブさん、663匹はギルドマスターの分だ。
その辺は状態確認で誰がどれだけのダメージを与えたかまでわかるので、しっかりと判別して各々が倒した個体を渡すつもりだ。
「その事なんだが、俺とあいつの分は、お前さんが全部持っててくれ。これはあいつも了承済みだ」
「流石にそれは悪いから、買い取る事にしよう」
「ルーフ、肉は美味しくないし、加工は難しいしで売り物にならない。要は殆ど価値がないんだ。それだったら、大量の亡骸回収を依頼した事にしておく。今回の討伐依頼もなかった事になる事だしな」
ギルドマスターは、魔物の亡骸回収の依頼を発行、報酬としてその魔物の亡骸を貰うという形にした。数も多いのでパーティ用の依頼として、しかも達成回数2回分としてくれた。
「それともう一つ。巨大な水の塊は、何者か分からない奴からの攻撃として処理された。国として魔法に対する対策を強化するそうだ」
ギルドマスターには、俺が撃った魔法だという事がバレているようだ。ため息をつきながら言ったし。
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その後、宿に到着してからも大変だった。
俺を見るなり、ルーシェが掴み掛かり殴ってきた。そして大泣きしながら言った。
「…なんで1人で行くのよ。あんたは不死身じゃないのよ?無茶をしたらあんただって…」
パーティーの他のメンバーは、誰1人としてルーシェを止めようとしなかった。みんな俺に対して同じ事を思っているのだろう。
「悪かった…」
そう言いながら彼女を抱きしめ頭を撫でた。
クジャク姉から頭にげんこつをされた。俺はルーシェを離し、頭を両手で抑えた。
「何すんだ、クジャク姉!」
「今度から俺は、一部命令に従わない。…お前を死なせたくないしな。1人で行った理由もわからないでもないが、俺達の気持ちも理解してくれ」
クジャク姉も泣きながら言った。彼女達の言う通り不死身ではない。前に一度死にかけたし。彼女達の気持ちを考えるべきだったと反省した。
もう無茶をしないと心に誓った。
「それでみんなは、何で宿にいるんだ?」
俺は、『もし日が暮れるまでに戻ってこなかったら、そこに転がってる奴らを連れて避難してくれ』と言って戦場へと向かった。何で避難しないで宿の入り口にいるんだ?
「私も含めた全員、貴方ならお二人を救出して、無事に帰ってくると信じていましたから。そうは思っていてもやはり心配です。無茶な事はするべきではないと私も…」
センティーレの説教は、ルーシェとクジャク姉が1時間後に泣きやみ、2人が彼女の説教を止めるまで続いた。因みにワカとシュンペイは説教の途中で出て行った。
自業自得とは言え、助けてくれないのもどうかと思った。




