3章 錬金国家アルケミー30 -16日目・ギルドマスターの覚悟-
ー午後1時東門ー
回復薬の購入は無駄だったようだ。俺たち以外の冒険者は誰も来なかった。
「こんな事なら、条件を満たしてる奴全員を強制参加にすべきだった…」
ギルドマスターは頭を抱えた。むしろ想定してなかったのかよ、って俺は思った。仕方がない。この街に被害を出さずに護ろうとしたら、取るべき行動はひとつだけだ。
「更地に変えていいんだったら俺1人で行くけど?」
「なんかお前さんなら可能な気がするから、一応言っておく。俺が後で姫様から怒られるからそれは勘弁してくれ」
「…策はあるのか?」
「策はあったがこの人数じゃそれも無理だ。…お前達はここに残ってこの門を出ようとする奴を4人ほど止めてくれ」
「まさか…」
「…ああ、そのまさかだ」
ギルドマスターはいつになく真剣な表情だった。
「そんなの無茶よ。それだったらこいつが辺り一帯を更地にして、怒られた方がいいわ」
「嬢ちゃん、これは俺なりの責任の取り方だ。それに俺もこいつと同じく能力の都合上、1人の方が全力を出せる。無理にでも出ようとする奴がいたら、死なない程度に…」
ルーシェの言う事もごもっともだが、ギルドマスターなりの責任の取り方なのだろう。だから彼の意思を尊重する事にした。
俺は「承知した」と言うと、ルーシェが俺を引っ叩いた。そして涙を流しながら彼女は言った。
「あんたなら、無理にでも止めると思ったのに。あんたを倒してでもわた…」
ここで彼女は眠りについた。
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追加能力
耐性貫通(魔)【魔法耐性を無視できる】
魔法耐性を無視してダメージを与えられるようになる。
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「悪いなルーシェ…」
「仲間にも容赦が無いとはな」
「早く行った方がいいんじゃないか?」
「そうだな…。行くとしよう」
「戻ってきて能力の秘密を教えてくれよ。ギルドマスター」
ギルドマスターは、後ろを振り向かず手を高く上げサムズアップをした。
そして一瞬で消えた。
「そんで、他の4人はどうする?」
後ろにいる仲間たちの方を向き、俺は聞いた。彼らもルーシェと同じように思っているだろう。だから、どう行動するか次第ではこいつらも眠らさなきゃならない。
「俺はお前の命令に従う」
「私は貴方様に命を預けた身。貴方様の判断に従います」
「俺たちは、お前のおかげで今がある。従うしかないだろ?」
「そもそも闘っても勝てないしな…」
とりあえず眠らせなくて良さそうだ。
俺を除くと、今から来る人達を相手にできるのはクジャク姉ぐらいだろう。センティーレの護衛をしてなければの話だが…。
そう考えてると、俺達の目の前に人影が現れた。
「さて、足止めしなきゃいけない人達が来たぞ。それじゃ、クジャク姉は護衛しながら、2人は自分の身を全力で護れ」




