3章 錬金国家アルケミー26 -15日目〜16日目 センティーレの従姉妹-
「私は運が良かったのかもしれません。ですが、約束した報酬を渡せなくなりました。この場合、私はどうなるのでしょう?」
「はじめから報酬を払う気が無かった訳じゃないですから、即奴隷になるとかはないです。ただ約束した報酬と同等の価値のものを用意しないと…。こいつらに訴えられたら、まずい事になるとは言っておきます。まぁ、まだ書面化してないので、有耶無耶にする事はできますが…」
やっぱり書面化しないと有耶無耶にしようと思えばできるのか。
まぁ、王宮のもてなしに価値をつけるのは不可能だよな。報酬無しにするか。素材は全部貰った訳だし。
「俺たちはそんな事をしません」
「そうよ。そんなひどい事をする訳ないでしょ!」
「落ち着けルーシェ」
関係者だからなのか、ルーシェは酷く興奮している。
「…わかりました。この宝石をお渡しましょう」
「こんな高価なものを頂けません」
身につけていたネックレスを外し俺に渡そうとしたが、受け取る気は無い。
「これは我が家で代々受け継いでいるものです」
「なおさら頂けません」
「エランジェルイト国は終わりました。私が先に進むためにもこれを手放したいのです。それに本来これは私ではなく、従姉妹のものになるはずでした」
センティーレは悲しそうな表情をした。
「従姉妹?」
「はい。数年前、私の従姉妹は国王暗殺の罪…いいえ、あらぬ疑いをかけられ処刑されました…」
「要らぬ事をお聞きしました…」
「お気になさらず。正当な後継者はあの子でした。彼女が、クリスが生きていれば…」
なるほどな。それでルーシェは冤罪事件を調べようとしてたのか。なおさら本人が正体を明かす気がないのなら、俺も言うつもりは無い。
それと俺は見逃さなかった。おっさんが握りこぶしをつくり、何かを悔やんでいるという表情をした事を。
「…もしもなんてのはないよ。あんたが、生きて国を再建すればいいじゃない。たった1人生き残った王族として伴侶を見つけて…」
「ルーシェ、さっきから王族に対してその口の聞き方はないんじゃないか?」
「クジャクは引っ込んでなさい!私は可能性を示しただけよ。後悔したくなくないから失礼でも言うわ。人生一度きりなんだしね」
「…ルーシェさん。貴女と話していると彼女、クリスが昔、『人生一度きりなんだから可能性があるなら色々やらないとね』って私によく言ってたことを思い出します。…そうですよね。報酬はいつになるか分かりませんが、いずれお支払いします。あとこれからの事なんですが…」
彼女を一時的にパーティーに加える事にした。
おっさんがこの国の王族に話を通し、面倒を見てもらう事もできたが、彼女はそれを断った。自らの力で前に進んでいきたいと言って。
ちなみにパーティーに加える条件は『パーティーにいる間、ルーシェの素顔を見ない事。見た場合、即刻パーティーを離脱する事』である。ルーシェがつけた条件である。俺は同意した。他のメンバーは『リーダーのお前に任せる』と言って同意した。
そして次の日の朝を迎えた。
今日の朝食は、ミルクに野菜やソーセージを入れて煮込んだものとパンだった。
「ミルクの中にソーセージ、ミルクとソーセージ、ソーセージからミルク…」
センティーレは朝食を見てそう呟くと、目からハイライトが消え、顔は青ざめていた。
「まずい!」
俺はそう呟き、催眠術をセンティーレにかけた。彼女は眠りについた。
「危なかった…。クジャク姉、彼女を部屋に運んで、今日は護衛をしていてくれ」
「承知した」
食事にも気をつけてないとダメなのか…




