3章 錬金国家アルケミー19 -15日目・虚偽記載と依頼主-
ギルドマスター執務室
「突然どうした?わざわざここまで来て」
「おっさん、さっき受けた猫探しの依頼の事なんだが…」
「ギルドマスターと呼べ。それで?」
「依頼内容に一部虚偽があった。1匹だけ猫じゃなかったぞ」
「…本当か?」
「ああ」
状態確認をこの町に対して使い、依頼書に書かれた猫の名前を探した結果、【種族:肉食目ネコ科ネコ属】と9匹は書かれていた。
だが、1匹だけ【種族:肉食目ネコ科ヒョウ属】となっていた。
種族を表示した理由は、名前だけでは本当にそれが猫かどうか判別出来ないからである。名前が同じ別の生物の可能性だってあるしな。
「おっさん、隠し事はなしにしてくれ」
「ギルドマスターと呼べ。俺は何も隠しちゃいないぞ?」
「最後の『捕まえた子猫は冒険者ギルドの受付に持っていく事』ってところが気になった。普通は依頼主の所に届けるじゃないか?
何か変だと思って、ペットショップ【ミステリアス・アニマル】って名前の店がどこにあるのか調べた。だけど、この町にそんな店はなかった。
それに、ペットショップなのに1匹1匹名前がついてるのはおかしいしな。本当は誰の依頼なんだ?」
「そこまで分かってしまうとはな…。仕方ない、話すとしよう」
と、トワノは言い両手を挙げた。
「実を言うと、依頼主はこの国の王族だ」
「なんで猫と偽って依頼が書かれてるんだ?」
「俺も数日前まで知らなかったんだ。虚偽があるから依頼の破棄をしようとしたんが、できなかった。その辺は察してくれ…」
「なるほど、権力には勝てなかったんだな」
そう言うとおっさんは黙った。まぁ仕方ないか。国を敵に回したくないしな。
「捕まえてここに運ぶ事自体は直ぐにでもできるけど、ここから城まで運ぶギルド職員の人員は確保できるのか?」
「今動けてライガーに対処できる職員は、モーブか俺だけだ…」
「ライガー⁉︎」
ライガーは予想外だった。
「並みの職員が対処できないものを、貼っておくなよ!」
「鑑定系能力を、持ってるやつなんざ、そうそういない。張り出しても、この依頼を受ける奴がいないから問題ない、と思ってな」
おっさんは笑った。
「笑ってる場合じゃないだろ!俺のように偶然、能力を持ってるやつもいるだろ?」
「この依頼は今日張り出したものだ。それにお前さんなら、ライガーぐらい対処できるだろ?」
「おっさん、はじめから…」
「何のことやら…」
はじめから俺にやらせようとしていたようだ。
「こっちをモーブに任せるとしよう。どっかの誰かさんのおかげで、冒険者の出入りが少ないし、こっちの方が楽だろう」
そう言うとおっさんは立ち上がった。
「今直ぐギルドの入り口に10匹運んでくれ。俺1人だと運べないから、お前さんにも同行してもらう。お前さんの話からすると、10匹をいっぺんに運ぶ方法があるんだろ?」
「あるけど、城まで運ぶのはこの依頼の範疇を超えているぞー」
依頼内容は冒険者ギルドの受付に持っていく、それで依頼は完了する。
それ以降の運搬については別の依頼を出して貰わないとな。
「王族から何かしら報酬が貰えだろう。それを全てお前さんに渡す。それでいいだろ?そんじゃ頼んだぞ」
半強制的にいく事になった。俺たちは王宮へと向かった。




