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名もなき異世界奇譚  作者: Section chief
3章 錬金国家アルケミー
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3章 錬金国家アルケミー15 -14日目・2つの書状-

書状に対して状態確認(ステータス)を使ったが、内容を読み取れなかった。何か細工が施されているようなので、普通に開けて読む事にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

セッテへ


親方様の書状で大体の事は把握できるだろうから、その辺は省かせていただく。


実は親方様の子息(セッテ)我が娘(クジャク)との縁談は、破談になっておらん。それにクジャクには『俺より強い奴にしか娘はやらん!』と言っていたしな。俺を倒したセッテになら、クジャクを任せられる。


我が娘と夫婦(めおと)となり、平和にそして末永く幸せに暮らしてほしい。

山の木々を薙ぎ倒すような豪快な娘だが、クジャクの事を頼んだぞ。



ハオウジュ・センニンショウ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「何て書かれてたんだ?」

「これはハオウジュさんが書いたもので、合流してから少しの間、クジャクの面倒を見て欲しいって内容だった」

「父上がお前に俺の面倒を()()見ろと書いたのか?」

() () () () () () ()



俺は嘘をついた。俺はクジャク姉の事、嫌いなわけじゃないけど…。


ハオウジュさんの書状によると、どうやらもう一つの書状は、この世界の父親(父上)からのようだな。

ハオウジュさんの書状を道具空間()にしまい、もう一枚の書状を開けて読んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

我が息子セッテへ


これを読んでいる頃には、ジャポネーグは戦場になり敗北し、儂達は処刑されているだろう。儂はお前を逃がそうとしていた。そう思っていた矢先、お前は国抜けをした。ちょうど良かったのかもしれん。


クジャクを部隊長にした部隊は、形式的にはお前を追跡し抹殺する任務をこなす部隊、という事になっている。

本当の任務は、この手紙をお前に読ませる事だ。彼女の狐面の呪いは、お前がこの手紙を読み終わった時に解かれる。

彼女達の処遇については、お前に任せる。


それと最後にもう一つ。

…決してジャポネーグに戦を仕掛けた国に報復をしようとするな。復讐をしたところで儂たちが戻る事はない。


国を守れなかった不甲斐ない父を許してくれ。


追伸:数年前のセンニンショウ家との縁談は破談になっとらんから、絶対にクジャクを妻に娶るように。



コンサイ・ネコヤナギ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺は無言で書状を道具空間()に入れた。

追伸になんて事書いてんだ…。ハオウジュさんも父上も、俺とクジャク姉をくっつけたいらしい。だが今のところ結婚する気はない。目的を果たすその日までは…。



「その狐面は、この書状を俺に読ませた時に呪いが解除されるようだな」

「やっぱりね」

「ああ、これで解決だ。それで追加報酬に何を要求しようとしたんだ?」

「そ、それは…。わ、私が解呪したわけでもないし、もうその話はいいんじゃないかしら?」


「そういうわけには、いかない。ルーシェが手紙の事を言わなかったら、クジャク姉は書状の事を忘れてただろうし。だから報酬を払おうと思う。可能な範囲で追加報酬も」

「あんたがそこまで言うんだったら…貰ってあげるわよ」

「その前に…」



そう言い俺は土下座をした。



「この前の事は、悪かった…」



ルーシェは状況が飲み込めていなかったようで、クジャク姉が「ジャポネーグの謝罪方法だ」と説明していた。



「私も悪かったわ…。だから、もう顔を上げて話しましょ?」



俺達は椅子に座りなおし、話の続きをする事にした。



「それで追加報酬に何を要求しようとしたんだ?」

「そ、それは…」

「それは?」

「私とけっ、けっこ」

「けっ?」

「私と結成して欲しいのよ、パーティーを!」



そう言い終わると、ルーシェは俺がいる方と反対の方向を向いていた。

結婚してくれって言われるのかと思って一瞬ドキドキしてしまった。むしろ『こ』って言ったような気がしたけど…

そんな事あるわけないよな。



「そんな事でいいのか?ワイバーン全部とか、大量の銀貨とかじゃなくて?」

「ワイバーン全部貰っても持ち運べないし、銀貨を大量に持ってたら危険じゃない。そもそもあんた、所持金の半分を私に渡したし、そんなにいらないわよ」

「それもそうだな」

「パーティー登録用の用紙はまだ貰ってないから、受付に取りに行くわよ」

「パーティーを組みたいのに、登録用紙を貰ってないのは何でだ?」



俺は疑問に思った事を言った。



「う、うるさいわね。細かい事気にしすぎなのよ。クジャクもそう思うでしょ?」

「確かに。セッテは細かい事を気にしすぎなところがある」

「悪かった。それじゃ用紙貰いに行きますか」


全員が立ち上がった時、ルーシェが突然、



「あっ、そうだ。こいつエランジェルイトに復讐しようとしてたわ。クジャクの仇をうつために」



と、ニヤニヤしながら言った。

俺の顔は、クジャク姉がつけている狐の面と同じく、真っ赤な色になった。

ルーシェあとで覚えてろよ。

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