3章 錬金国家アルケミー5 -2日目・ドワーフの工房-
次の日、冒険者ギルドでワイバーンを10匹ほど売ってから『バニラ・ロボクルスの工房』を訪ねた。冒険者ギルドから西へ歩く事20分、そこに彼の工房があった。
「ごめんください。誰かいませんか?」
工房の持ち主と思われる、ドワーフの男が奥から出てきた。
「こんな所に人が訪ねてくるとは珍しいな」
「リョウ・ハナトリというものです」
「私は、ルーシェよ」
「バニラ・ロボクルスさんですか?」
「ああ、そうだ」
「ディスマントさんの紹介で来ました」
「ほう、あいつが…」
俺は紹介状を道具空間から出して渡した。紹介状を受け取ったバニラは、目をつぶり諭すように俺に言った。
「ハナトリと言ったか?あまりそれを人前で使うな」
「何故ですか?」
「ディスマントが紹介状を書くぐらいだ、お前さんが強いというのはわかる。だがこっちの嬢ちゃんを人質にとられたとしよう。お前さんはその力を使って、犯罪の片棒を担がされる事になるかもしれん…。ヤバイもんの密輸とかな…」
「私は、そこまで弱くないわよ!」
「例えばの話だ」
「それじゃどうすればいいんですか?」
「魔道具に『不思議な道具袋』ってのがある。『不思議な袋』とも呼ばれている。それに偽装すればいいだけの話だ」
「やり方はどうすればいいんですか?」
「空の袋の中にさっきのを発動させればいい。な、簡単だろ?」
「確かにそうですね」
「そうすれば、空の袋が狙われる事になる訳だ。盗られても袋代だけですむから損失が少ない」
「なるほど」
「あと俺に対して、その言葉遣いは辞めてくれ、堅っ苦しいからな。俺からのアドバイスは以上だ」
喋り方については、お言葉に甘えるとしようしよう。
「そんで、何を作って欲しいんだ?」
「ルーシェ用の武器と防具一式を作ってもらえないか?」
「了解した。お前さんはいいのか?」
「俺にはこいつがあるし」
と道具袋から、魔力を消費する弓を取り出した。さっき貰ったアドバイスを実践してみた。
「見た事も無い弓だ。しかもかなり素晴らしい…」
「防具の方は、ランクを上げる基準を満たすものを適当に見繕うから、今のところは必要ないかな」
俺が全力で戦うと、この弓以外の武器は一回で使えなくなるし、防具は装備してなくても能力値や能力でどうにかなってしまう。だから不要なのだ。
彼は弓を見て触れて観察していた。俺が何度か「バニラさん?」と言ったら我に返った。
「すまんかった。この弓がとても良いもんだったからついな」
と笑いながら、俺に弓を返した。俺は道具袋に弓をしまった
「武器はともかく、防具がいらないって事に関して色々言いたいが、何か事情があるのだろう。聞くのも野暮ってもんだしな」
「その方が俺も助かる」
この人に俺の能力について話したら、さっきの道具空間と同じように何か言われそうだしな。ギルドマスターにも言われたように、話さない方が良いのだろう。
「それで嬢ちゃんはどんな戦い方をするんだ?」
「魔法を使って戦うわ」
「魔法使いか。そしたら杖とローブだな。使う魔法の属性はなんだ?」
「闇と無属性以外なら大体使えるわ。1番得意なのは光属性ね」
「だとすると、杖はあれでいいだろう。ローブは闇魔法に耐性があった方が良さそうだな。そんで予算はどれぐらいあるんだ?」
「銀貨80枚ぐらいまでなら出せるぞ」
「銀貨⁉︎銅貨の間違いだろ⁉︎」
「間違えてないぞ」
ルーシェは「私の装備の為にそんなにいいの?」って顔をしていたので、「安全を買ってると思えば安い方だ」とルーシェに小声で言った。
俺は袋から銀貨を数枚出した。
「そんな大金どこで…、貴族なのかお前?」
「いや違う。遭遇した魔物の群れを狩って素材を売っただけさ」
「…一昨日冒険者ギルドに、良質な状態のワイバーンが10匹入ったと聞いたが、まさかお前さん達が…」
「その話はまた今度。今はルーシェの装備の話だ」
「お、おう。それもそうだな」
「これぐらいの予算だと、どんな装備を作ってもらえるんだ?」
「それぐらいあれば、杖とローブに複数の特殊効果をつける事ができる」
「そんな事できるのか」
「まぁ普通の装備師には無理だがな」
「装備師?鍛冶師じゃないのか?」




