2章 西の大陸19 -冒険者ギルドの事情-
「そんだけ強いんだったら、その大会に自分自身で出ればいいじゃないか?」
「俺たち職員は、大会規定で出れない」
運営側だから出場できないのか。まぁ当たり前だよな。
「それならランクの高い冒険者を出せばいいじゃない」
「このギルド所属で、今この国に滞在しているの冒険者は、職員を除くとCランク、しかもDランクの実力しかないやつばかりだ。他国はBランク以上5人で来るだろうから確実に勝てない」
「そもそも勝つ必要があるのか?」
俺はこの大会が親善試合的なものだと思っていた。
「大いにある。この大会を観に来る王族や貴族からの依頼が増える。特に護衛の依頼がな」
「どうして増えるの?」
「単純な事だ。強い冒険者がいる、それなら安心して護衛を任せられる、ってなるからだ。依頼が増えれば、このギルドにお金が沢山入るってわけだ。そうだろ?ギルドマスター」
「まぁ、そういう事だ…」
ギルドの運営も大変なんだろうな。
俺は何故こんなに高ランクの冒険者がいないのか気になったので、理由を聞くことにした。
「それはいいとして、なんでBランク以上の冒険者がいないんだ?」
「この国の騎士団の殆どは、実をいうと元冒険者だ。騎士団の入団試験資格に、『Cランク以上の冒険者で、Cランクの依頼を数十回達成してる者なら可』ってのがあって、大体の冒険者は、Bランクの試験を受けずに、そこで冒険者を廃業して騎士団に入団しちまう」
「なるほどな。この国の冒険者事情は分かった。それでも何人かはBランク以上の冒険者はいるんだろ?」
「数少ないBランク以上の奴らは、パーティを組んで遠征に行ってたり、他国を拠点にしていたりして、すぐに戻ってこれない」
「そうか色々分かったが、それでも俺は引き受けない」
俺達が引き受ける理由がない。そもそも得する事が無いしな。




