2章 西の大陸13 -見えない手-
覗いた時、ルーシェはすでに服を着ていて、彼女は扉に手を掛けた。
俺は世界記録 (人)を使い風呂場への扉から、出入り口の方へとダッシュした。出入り口の扉の手前で、世界記録 (人)を解除。そして盛大に出入り口の扉にぶつかった。
「痛ってー」
「物凄い音がしたけど、何したのよあんた?」
風呂場の扉が開き、そう言いながらルーシェが出てきた。
「ちょっと能力の制御が効かなくて」
嘘は言っていない。実際解除するタイミングが遅すぎて激突した訳だし。
「今度は能力を制御する能力を作るべきじゃないからしら?」
「そんな感じの能力は作れないんだよな」
能力作成が勝手に能力を作るから、制御する為に能力を制御する能力を作ろうとした。だけど、何故か作れなかった。
「能力を作れるといっても万能じゃないのね」
「そうだな。危機的な状況を打開する為に作られる事が多いな」
少し間があり、ルーシェが喋った。
「…てっきり私の入浴を覗き見る為に能力を作り出して、壁越しに覗き見して、それで私が扉を開けた時に人外な速度で出入り口の方に行ったのかと思ったわ」
「そ、そんな訳ないだろ」
「そうよね。疑って悪かったわ」
そう言うとルーシェは俺に回復魔法を使ってくれた。
「お風呂に入らせてくれたお礼よ…」
と小声で呟いた。
罪悪感が生まれた。ルーシェ、ごめん…。本当は覗こうとしてた。俺は心の中で謝った。
その後、車を動かし錬金国家へとむかった。
状態確認を使い錬金国家の方角を確認し、魔物がいないか探知した。
探知しながら思ったのだが、初めて見る素材はできるだけ回収したい。
そうだな、ここにいながら対象物に気付かれず攻撃できたらな、しかもダメージを調整できるように、なんて思っていたら、
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追加能力
・見えない手【見えない手を作り出し操作できる】 Level:Max
他者には見えない手を作り出し操作できる。
この能力で作り出した手にダメージが与えられた場合、使用者にダメージは無い。
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作り出せる手の大きさ・数は俺が自由に変更できるようだな。
複数の見えない手を作り出し、素材になりそうなものを一種類ずつ掴み、道具空間へと投げ入れていった。
さっきゴブリンをそのまま道具空間に入れようとしたら、入らなかった。
道具空間には、生きているものは一つの例外を除いて入れる事が出来ないというルールがあるらしい。そのため魔物は掴んだ時に絶命させてから、道具空間へ入れている。
ちなみに、この能力で作り出した手に対して、手加減は強制発動するのではなく、俺の意思で発動するかしないか選べる。
あと、この能力で作り出した手は、俺には見えているので、ステータスには、手の絵で表示される。
「そういえば、さっきあんたが聞いてきた空間魔法、どうせ使えるようにしたんでしょう?」
「ああ、作った。今見せるよ」
そう言って、さっき解体したワイバーンの皮を道具空間から取り出した。
「…さっきのワイバーン全部持ってきてないでしょうね?ゴーレムに集めさせてたし…」
「え?当然全回収したよ」
肉は食料になるし、素材は換金したり加工して防具に使う予定だし。
「はぁ?空間魔法は、空間に出し入れする対象物の質量に比例して、消費魔力量も比例するって聞いたわ。あんたの魔力どうなってんのよ⁉︎」
「言ったろ?魔力0だって」
因みに道具空間から出し入れするときは、一時的に魔力を∞にしている。魔力の調整は苦手だしな。
「あんたが嘘をついているとは思えないから、能力でその辺はどうにかしたんでしょうね…」
「まぁそう言う事」
ルーシェはため息をつき、小声で言った。
「はぁ…。私の隣にいるのは人間なのかしら?」




