2章 西の大陸8 -闇の龍は去る-
俺と闇龍が契約を済ませると、ルーシェが物凄い勢いで走って戻って来た。あの速度は自身の肉体を魔法で最大限に強化しているから出せるのだろう。
「なんで私を投げ飛ばすの⁉︎」
と言いながら、闇の龍に対して魔法を撃とうとしている。
「やめろ!ルーシェ!」
「え?」
光の輪が闇の龍の真上から降りて来ている。
俺はとっさに弓を構えて、魔力で矢を作り放った。矢は光の輪に当たり、光の輪を消滅させ遥か彼方に飛んで行った。
「闇の龍、この場から立ち去ってくれ」
「わかった。去る前にそちにこれを渡そう」
「どういう事よ⁉︎」
闇の龍は俺に玉を渡すと、羽ばたき空を飛んで何処かへ行った。
「まず私の魔法を消滅させた理由を説明しない!」
ルーシェは物凄く怒っていた。
「今のルーシェが闇の龍を攻撃した場合、ルーシェが瀕死のダメージを負うから、消滅させた」
「意味が分からないわ」
ルーシェを投げ飛ばした後に起きた事を説明した。
「大体分かったわ。それにしても一方的な契約しないのは、何と言うかあんたらしいわね」
ルーシェは呆れていた。
「それで私を投げ飛ばした理由はまだ説明してないよね?」
ルーシェは笑顔で聞いてきた。この笑顔が怖い。
「本当に巻き込みたくなかっただけさ。それに、あんな状態でまともに戦えるとは思わなかったしな」
俺はルーシェの作った水たまりを指差した。
ルーシェは顔を真っ赤にした。
「う、うるさいわね。戦えたわよ!それよりあんたのせいで死にかけたんだからね…」
「やっぱり死にかけたか」
「わかっててやったの…?」
ルーシェはドン引きしていた。
「手加減はしたから、死ぬ事はないと思ってた。回復魔法が使えるし、どうにかなるとは思ってた」
「あれで手加減ですって⁉︎」
また怒った。表情がコロコロ変わるなこいつ。
とりあえず俺の能力について教えるか。まだ教えてなかったしな。




