4章 更に西へ65 -アズモディア国へ出発1-
アズモディア国へと出発する日が来た。
最初に、冒険者ギルドへと挨拶に行った。
「今日が出発か。式が終わったら戻ってくるんだろ?」
「一応そのつもりだ。商人ギルドにしっかりと納品の報告もしなきゃならないしな」
「そうか。それなら、このギルドも安泰だな」
ギルドマスターは笑いながら言った。
「まぁ、俺も本当は行きたいが、長期間ギルドを閉める訳にもいかないからな。それと、俺からご祝儀だ」
金貨4枚が入った袋を俺に渡した。
「いいのか?」
「贔屓するのは良くないんだろうが、ギルドの規則にそんなもんはないからな」
俺達はお礼を言った。
「あと、例の件のだが…」
「リリスとクジャク姉は先に外で待ってて」
2人が入り口付近にたどり着いたのを状態確認で確認したところで、ギルドマスターは話し始めた。
「嬢ちゃんも残したって事は、姫様は受け取りを拒否したんだな?」
「ああ。婚約者もこんな大金受け取れないだってさ」
袋を道具空間から取り出して、机の上に置いた。
「それでどうして私は呼ばれたのかしら?」
ギルドマスターは目を瞑りながら言った。
「…可能性を考えた。嬢ちゃんが姫様だと」
「…根拠は?」
「最初にここに来た時の偽名の話、センティーレ様がいる時に必ず狐面をつけていた事、光魔法が得意だって事、それにどことなく面影を感じる」
「…私はクリス・アンセマムじゃないわ。ルーシェよ。冒険者のルーシェ。あの国は滅んだし、姫も死んだわ」
そう言うと、ルーシェは退出した。
その時、ギルドマスターは「俺は姫様としか言ってない。やはり…」と呟いた。
受け取り拒否をした場合、ギルドマスターが出した条件はもう一つあった。ルーシェとギルドマスターの会話に、俺は口出しをしないで欲しいと言われていた。だから静観を決め込んでいた。
俺はルーシェを追って退出しようとした。
扉を開けようとした時、「…クリス様、いや嬢ちゃんを頼んだぞ」とギルドマスターが言った。「ああ…」と答え扉を開け退出した。
扉を出たところにルーシェはいた。
「彼がシードだったのね」
「これで良かったのか?」
「…全て終わったら、ちゃんと話をするわ」
入り口に行くと、モーブとセンティーレが、リリスとクジャク姉と話をしていた。
「お待たせ」
「遅いよ!」
「待たせすぎると逃げられちゃいますよ?」
センティーレは冗談交じりで笑いながらこう言ってきた。俺は苦笑いしかできなかった。
「そろそろ出発しないと予定通りつかなくなりますよ?」
「2人とも、わざわざ見送りに来てくれてありがとう」
「向こうで会いましょう。センティーレと一緒に行きますので」
「行ってきます」と言い、ゴーレムに乗り、冒険者ギルドを後にした。次に商人ギルドへと向かった。




