4章 更に西へ64 -手紙-
モーブとセンティーレの結婚式が教会で行われた。前世で友人の結婚式に参加したが、その時とあまり変わりなかった。
式が終わった後、おっさんに冒険者ギルドにくるように言われていた。なので今は、冒険者ギルドのギルドマスターの部屋にいる。
「何故俺だけ呼び出したんだ?」
「クリス様から手紙が来た」
「そうか…」
ルーシェは手紙を出したみたいだ。
「詳しい事は書かれてなかったが、今はこの国にいて、婚約者と幸せに暮らしてるようだ」
「わざわざ、それを俺に報告する為に呼び出したんじゃないだろ?」
「これをクリス様に渡してほしい」
そう言うと、金貨数枚が入った袋と一枚の手紙を机の引き出しから取り出した。
「祝儀だ。お前さんなら居場所はわかるだろ?」
「まぁ、わかるけど…。もし受け取りを拒否されたら?」
「それなら、旦那になる人に渡して欲しい」
「…旦那になる人も受け取り拒否した場合は?」
「その旦那になるやつと話し合う。そん時はお前さんも同行してくれ」
「それは断る。もしかしたら、クリス様は、婚約者にも自分の出自を話してない可能性だってあると思うんだけど?それが原因で破談になったらどうする?」
「それもそうだな…」
婚約者が俺だと分かったら、クリス姫の正体がばれてしまう。絶対に名乗り出ない。
それと、話し合うと言っているが、この人の交渉の仕方はどちらかというと、交渉 (物理) だからな。
やはり名乗り出ない方が良いな。
「少し時間が欲しい。それと、報告はアズモディア国に行く日でもいいか?」
「…ああ、それは構わない。もし袋を受け取り拒否されたら、報告には…」
おっさんは変な条件を俺に言ってきた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日の夜
「ルーシェと少し二人で話をしたい」
俺たちは宿から出て、夜の街を散歩している。リリスとクジャク姉から、今回はしっかりと宿に戻るように念を押された。
「シードパンジー・グリコサイドから手紙を預かった」
「中身見てないでしょうね?」
「見るわけないだろ」
「…そう」
俺はルーシェに手紙を渡した。
ギルドマスターが書いた手紙だから、何かしらの細工はされてるだろうし、手紙を読んだのがバレたらあとが怖いからな。
「それと、祝儀だってさ」
そう言いながら預かってきた袋を渡した。彼女は中身を確認すると言った。
「流石に受け取れないわ」
「だよな。そうなると、 婚約者に渡さとらないといけないんだよな…」
「返してきなさい!」
「勿論、俺も受け取る気はないぞ」
「当然でしょ!」
「当人も婚約者も受け取りを拒否した場合、ルーシェも連れてくるように言われてる。どうする?」




