4章 更に西へ49 -私達に対して、何でもするって…-
「言うの忘れてたんだけど…」
「なんだ?」
「姫様から採ってきて欲しいものがあるって、依頼を受けていたわ」
「すぐに言って欲しかったな」
「ごめんなさい。今思い出したのよ」
もちろん嘘である。私達には、鉱石を探す方法も擬態生物を見分ける方法もない。セッテ頼みになってしまうけど、そこは仕方ないと、私は割り切る事にした。
「それで姫様は、何を御所望なんだ?」
「えーと、金剛石、黒金剛石、紅玉などの装飾品になりそうな鉱石を少しばかりって言ってたわ」
「本当か?」
「…ええ、本当よ」
「それじゃ、契約な」
この言葉に対して、すぐにクジャクとリリスが反論した。
「それはあんまりじゃないか?」
「お前はルーシェを信用してないのか?」
「そういうわけじゃないけど…」
私は追撃をかける事にした。
「…ひどいわよ。あんたにとって私はなんなのよ」
「ルーシェ、俺が悪かった。だから落ち着いて…」
「『愛してる』って言われた事ないし…私は本当に貴方の婚約者なの?」
本音である。涙が自然と出てきた。彼はすぐに土下座し始めた。
「俺も言われた事ないな…」
「…僕もないかな」
クジャクもリリスも言われた事がないらしい。
二人の言葉を聞いたセッテは「愛してる」を言いながら、私達3人に土下座をする機械と化していた。
「…許すけど、条件があるわ」
「何でしょうか?」
「…お願いを聞いて欲しいわ」
リリスとクジャクは、今にも私に危害を加えそうな殺気を出していた。
目で『あとでリリスとクジャクにも見返りがあるようにするから』と合図を送ったら、納得したようで殺気は消えた。
「俺に出来る事なら何でもする」
「ん?今何でもするって言ったわね。明日、私とデートしなさい!」
「…そんな事でいいのか?」
「もちろん、よ、夜も…い、1対1よ!」
「…わかった」
リリスとクジャクの殺気が全開になった。想定内である。
「ルーシェ、それはやりすぎじゃないか?」
「何でもするって言ったのはこいつよ。問題ないでしょ?」
「それもそうだが…。それなら俺とも一日中一緒にいてほしい」
「僕もデートしたり、1対1の戦闘訓練したいかな」
「ちょっと待ってくれ。それは…」
「…何でもするって、言ったわよね?」
お願いは一つとは言っていない。
クジャクとリリスにも同じようにする事を、お願いすれば良いだけの事だ。
彼女達に独占される二日間は辛いが、それは二人も同じ事である。
必要な鉱石を回収してすぐに冒険者ギルドへと向かった。




