4章 更に西へ41 -試験官-
冒険者ギルドを臨時休業にしたぐらいだ。対戦相手はギルドマスターをはじめとした、ギルドの職員だろう。
メディー、ディスマント、バニラ、モーブにギルドマスターと、大体予想通りだった。
「お久しぶりです」
とりあえず、メディーとディスマントに挨拶をし、ルーフの群れが来た時の事を謝罪した。
「貴方が気にする事ではないわ。依頼をきっちりこなしたのだから」
「そうだ。俺達が逆の立場でも同じ事をしただろうからな」
2人は笑って許してくれた。2人との会話が終わった後、バニラが話しかけてきた。
「依頼された物は大まか作ってあるから、安心して全力を出してくれ」
「仕事早くないですか?」
「アレらのおかげで、かなり効率化したからな」
彼の為に【自動掃除機】と【運搬用ロボット】を作り出しプレゼントした。
彼の工房は結構広い。材料を運んだり掃除したりするのは1人だとかなりの時間が必要だ。
彼は人型のゴーレムを作り出しそれらを行なっていたが、ゴーレムの速度は遅く自分で動いた方が早かったので、非効率的だった。
【自動掃除機】と【運搬用ロボット】のお陰で、作業以外の事が効率化でき、道具の作成に時間を割けるようになったそうだ。
「本当は、モーブと俺だけで戦うつもりだったんだが、どこから聞いたのか、俺の所に来て試験官を志願した。本来は要件を満たしてないが、流石にホースタイガーの5匹を簡単に倒しちまう奴らを相手に、2人はきついからな。
『サポート役として他の職員に参加してもらう』って建前で書類を提出しておいた」
「酷い屁理屈でねじ込んできたわね」
「まぁそう言わないでくれ。ここにいる全員、今日を楽しみにしてたからな」
ギルドマスターが、1番闘いを楽しみにしてるのは気のせいじゃないと思う。
「一つ質問だ。職員でも冒険者でもないバニラ殿が何故参加できるんだ?」
クジャク姉が疑問をぶつけた。それに対してバニラが答えた。
「この街に着いた時、ものづくりをするにしても、資材もお金も無くてな。それで冒険者を一時期やってたんだ」
「叔父さんは今どのランクなの?」
「Eランクだ」
この人は装備を整えるより先に、材料を買っては道具を作り販売を繰り返していたようだ。だからランクが低い。
「そろそろ説明を始めたいのだが?」
「申し訳ない」
クジャク姉は謝罪した。ギルドマスターは咳払いし説明を始めた。
「今回の勝利条件は、俺達5人を4人で倒す事だ。その他の条件は、死者を出さない事、ここを破壊しない事、後方から支援魔法をかける姫様に危害を加えない事、姫様の支援魔法を妨害しない事」
支援魔法込みじゃないと、ギルドマスターとモーブ以外は数秒と持たないだろう。主に俺のせいで。
「後ろ二つは姫様が決めた事だ。特に守ように」
それに対して皆んなが思っただろう事を、ルーシェが言った。
「権力者の犬ね」
「俺達が試験を受けるためにギルドマスターも色々と苦労してるんだからな」
と、クジャク姉がフォローを入れた。
「確認なんだが、能力で、誰に支援魔法をかけてるか確認するのもダメなのか?」
知っている情報は出来るだけ彼女達と共有したい。そう思って姫様に確認した。
「ダメじゃ。妾はそれも攻撃とみなす」
「もう一つ。かけられた支援魔法を解除するのは…」
「もちろんダメじゃ」
完全に俺の能力の一部を封じにきてる。
「分かりました。それと審判は誰がやるのですか?」
「それは私がいたします」
センティーレがモーブの後ろから現れた。




