4章 更に西へ39 -この街では冒険者が一番危険-
冒険者ギルドの受付にルーシェ達3人がいた。
「随分と時間がかかったわね?」
「帰りは疲れが凄いからゆっくり帰ってきたんだ」
「本当かしら?ギルドマスターが仕事サボる為に付き合ったんじゃないの?」
「そんな事あるわけないだろ」
実際そうだけど、一応誤魔化しておく。ギルドマスターと敵対はしたくないし。
「やっぱりルーシェは素直じゃないね」
「さっきまで『心配だわ。すぐに探しに行くべきよ!』って言ってたしな」
リリスとクジャク姉が微笑みながら、ルーシェに言った。そしたらルーシェは突然叫び出した。
「う、うるさいわね!あんた達だって、心配で探しに行こうとしてたじゃない!」
「僕たちは素直だよ。そうだよね?クジャク」
「俺達は素直だぞ」
「と、とにかく、帰ってきてくれてよかったわ」
「心配かけてすまなかった」
俺が頭を下げて謝るとルーシェは横を向きながら、「…バカ」と小声で言った。
「何か言ったか?」
「言ってないわ。それで、試験はどうだったの?」
「試験は合格したぞ」
「それは当然として…」
3人は俺の背中で寝ているアムアートを見た。
「あんたの背中で寝てるその子は?まさか、私達以外に女が…」
「ルーシェ、たぶんそれはないと思う。クジャクもセッテを問い詰める前に…」
俺たちはクジャクの方を見た。
彼女は下を向いてブツブツと何かを言っていた。ヤバイと思った。そう思った時彼女は叫んだ。
「こ、この可愛い子は⁉︎」
「クジャクって…」
「…見ての通りだ」
突然クジャク姉は俺の背中からアムアートを奪い頭を撫で始めた。この行動にルーシェもリリスも引いている。
「こいつの名前はアムアート。ちょっと訳ありで、しばらくギルドマスターの元で保護される事になった」
「あの子って魔物でしょ?ちゃんと説明してほしいなー」
笑顔でリリスが俺に言った。目が笑っていなかった。魔物だと聞いたルーシェは驚いていたが、クジャク姉は気にせず頭を撫で続けていた。
「わかった。正直に話すよ」
隠してバレたら後が怖いしな。
テーブルの方へと移動し、椅子に座ってから試験の事を話した。話している最中も、クジャク姉はアムアートを抱き抱え頭を撫でていた。アムアート自身は目覚めた時にクジャク姉から離れようとしていたが、クジャク姉が離すことは無かった。
アムアートは、とにかく怯えていた。最終的に諦めて大人しくなった。
話し終えた時に、クジャク姉が笑顔で、「この子を俺とおまえの養子にする」と言った。
「もしもしー、クジャクさん?話し聞いてました?」
「ダメね…。頭がお花畑だわ」
クジャク姉に対して珍しく辛辣な2人である。今の所、養子にする気はない。養子にするにしても全てが終わった後だ。
「クジャク姉は置いといて、アムアートはどうしたい?」
「オレハ、ニンゲントシテセイカツデキルノウレシイ。イマハココニシバラクイタイ」
「それがいいと思う。魔族にも魔物への差別が酷い人がいるから、僕の故郷アズモディアには連れて行かない方がいいし…」
リリスは哀しそうな顔をしていた。
「そうね。この国の治安はかなり良いし、街の人も自分達に害をなす存在じゃなきゃ、魔物だろうと魔族だろうと気にしないから問題ないと思う。ただし、一部の冒険者は除くわ」
「よく冒険者ギルドの中で言えるな」
ギルドマスターが俺達の方にきていた。
「当然でしょ?冒険者ギルドに登録した日や、こいつの故郷が滅ぼされた事を知った日、この街で私達を襲ってきたのは全員冒険者じゃない」
「…」
人間は、ど正論を言われると黙る。
「俺も1人で行動していると、剣を持った冒険者によく襲われる。『珍しい剣を持っているな。是非手合わせを』って言われてな」
クジャク姉、それは剣士として闘いたいだけだ。これはこれで物騒ではある。
「僕は無いかな…。むしろナンパしに行くのに勧誘されるし」
リリス、多分それ女性として認識されてないよ…。




