1章 ジャポネーグ国 16 -クジャクの回想-
セッテ達が大海原へ出てから数時間後
「俺が見守っていたあいつは、俺を倒した父上を倒して行ったようだな…」
目が覚めた俺は、辺りを見渡しそう呟きながら能力を使い、縄を焼き切った。
「いや、昔から守られていたのは俺の方だった。だからあの時から俺は、あいつの事を…」
あいつに対してそう思い始めたのは、俺の12歳の誕生日の次の日だった。
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俺は、代々ジャポネーグ国という国の国主の護衛をしている、『シノビ』と呼ばれるセンニンショウ一族の末裔だ。
俺には兄弟がおらず、母上は3歳の時に亡くなった。
その時父上は、「後妻は娶らない。以降クジャクを男として育てる」と言ったため、男として育てられた。
この国では男女共に12歳になった時、1人で狩りに行く風習がある。
野ウサギを一匹狩って、その場で解体して持ち帰る、というものだ。
俺はこの風習に従い、山で狩りをしていたが、帰り道が分からなくなった。今は日が暮れる頃だ。
女の場合、日がくれる頃に迎えが来るのだが、男の場合は成人の儀式としての意味があるようで、不測の事態が起きない限り誰も来ない。俺は男として扱われてる。だから誰も来ないなだろう。
不測の事態が起き救助された場合、やり直しとかはなく、特に罰則もない。
それなら救助された方が早く家に帰れる。そう思った俺は、山の木々を伐採しまくることにした。
山を見張ってる者が異変を感知し、直ぐに誰かをよこすだろう。山の木々が倒れるって不測の事態が起きてるしな。
俺は木々を伐採して、その場から直ぐに離れた。その場に留まってたら俺がやったのがバレるしな。
数分後、父上がやってきた。
「クジャク!怪我はないか⁉︎」
「父上。どうなさいましたか?」
何も知らないふりをした。
「山で突然、木々が倒れるという異常を確認したのを、見張りの者から聞いた。強い魔物の仕業だったら、麓の村に降りて来る可能性がある。それに何よりもクジャクが心配で来た」
そう言うと父上は俺を抱きしめた。
「父上…。苦しいです」
「クジャク…すまなかった…」
「何故謝るのです?」
「………」
父は無言だった。今思えば父は、俺を男として育てた事を、この時から後悔していたのかもしれない。
「…とりあえず戻るぞ」