1章 ジャポネーグ国 14-使わなかった理由-
「ハオウジュさんは、とりあえず手当したから大丈夫だろう…」
俺は彼の手当をしたあと、【世界記録 (人)】の詳細をみた。
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・世界記録 (人):【人間に可能な事ができるようになる】Level:Max
攻撃力、防御力、素早さ、精神力の値を、世界最大(人間のみ)の値にできる。故に人間に可能な事ができるようになる。
※能力や魔法が使えるようになるわけではありません。
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素手以外で、【世界記録 (人)】の使用は絶対にやらないようにしようと思った。【手加減】無しだと確実にオーバーキルになる。そう心に誓った。
「この娘に外傷はなさそうね。気を失ってるだけみたいだわ」
ルーシェは追っ手の1人であるクジャク姉の容態を確認していた。追われているのだから放っておいて逃げればいいに、わざわざ容態を確認したあたり彼女は優しい人間なのだろう、と俺は思った。
「クジャク姉には悪いけど、このまま気絶しといてもらう。あと彼女は、縄で縛っておく」
「気を失ってる女性に対してそんな事をするなんて、あんたって結構酷い事するのね」
「追ってなんだから当然だろ?」
「それだったら、そっちのおっさんも同じようにするわよね?」
「ハオウジュさんを縄で縛る必要はない」
「なんでよ?」
「両手両脚を骨折してるから、目が覚めてもその場を動けないからさ」
「だったらこの人を縛らない方がいいんじゃないかしら?」
「自分の親なら助けを呼ぶのを優先して追うのを断念する。しかも小舟は俺たちが乗るこの1隻しかないから、海までは追って来れない。だから縛る必要がない、って言いたいんだろ?」
「そうよ。分かってるじゃない」
「分かっていても怖いものは怖いんだ…」
「私からしたらこのおっさんの方が怖いわ」
クジャク姉なら、どこまでも追いかけて来るだろう。縄で縛っておけば、自力で脱出するのに時間がかかるはず。とにかく今は彼女から逃げる時間が欲しい。そう思ったから、彼女を縄で縛る事にしたのだ。
「クジャク姉は縛ってくから」
「はぁ、それだったら跡が残らないように、優しく縛りなさいよね。相手は女性なんだから」
クジャク姉の手足を縄で縛っている時に、俺の背中の弓を見てルーシェが言った。
「そういえば弓を背負ってるのに、何でさっきの戦闘の時に使わなかったのよ?」
「使えないんだ」
「はぁ?弓を使った事がないのに持ち出したわけ?」
「弓が扱えなかったら死活問題だよ。狩りの時によく使うし」
「じゃあ何で使わないのよ?」
「………矢を持ってくるのを忘れた」
「あんたよく今日まで生き残れたわね」
ルーシェはため息をついて呆れていた。




