3章 錬金国家アルケミー79 -40日目・私は貝類になった-
俺は能力 停止 時計のボタンを押し能力を奪った。そしてもう一度ボタンを押した。
「おぬし、その姿は!」
味方であるはずの爺さんもこちらに武器を構えていた。
「ば、化物め!」
海賊達は、雷属性と火属性の魔法を放ってきたが、俺には効かない。
「こいつ、あの魔物なのか⁉︎」
「いや、違う。雷属性の魔法が効かないのはおかしい」
「怯むな!そいつは人間だ!イカの魔物でもタコの魔物でもない!」
どうやら俺はイカのようなタコのような魔物と人間を足した姿になっているらしいな。
この時計で奪った能力を使用した副作用なのだろう。
自分に対して状態確認を使い、どんな姿になっているのか見てみた。そして分かった事は以下の通りである。
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・心臓が3つある。
・身代わりを作り出す事ができる。身代わりを攻撃した相手は視力を一時的に失う。
・時速22.5kmの速さで泳げる。
・触手は、吸盤と鉤爪の機能を有している。
・腕は左右1本ずつあり、右に3本、左に3本、尻尾のように腕か足か分からない触手のようなモノが生えていて、吸盤みたいな鉤爪みたいなものがついてる。
・血が青い
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特徴からイカやタコに見えなくもない。
能力の欄には何も追加されていなかった。
さっさと片付けようと思い、見えない手を使った。
「お前達!早く助けろ!触手のようなモノが…」
状態確認で表示されている『見えない手』の形が触手になっていた。普段は殴るか叩くかで違うで表示される。見えない手は、現在の自分の手と同じ形をしたものが出るようだ。
「頭ー無理です!俺達も捕まりました」
能力を使い、俺たちが乗ってきた船を海賊達の船に乗せた。その後能力 停止 時計を再び使い、元の姿に戻った。
「…おぬしは人間か?」
「人間ですよ。この魔道具の効力でこうなっただけですから」
魔道具の効力などを説明した。
「…なるほど。色々な意味で凶悪な魔道具じゃの」
能力が奪える事と化物へと変質してしまう事を言っているのだろう。
「舟はワシ一人で操縦できるから、海賊達を見張っておいてくれ」
「分かりました」
捕まえた海賊は縄で縛り、全員甲板に座らせている。やる事がないので海賊と話をする事にした。とりあえず頭と呼ばれていた女性に話しかけた。
「なあ、どうして海賊になったんだ?」
「…話す気はない」
「そうか、お前達の故郷は戦場になるな」
「何故そうなる⁉︎」
「錬金国家の船を奇襲したから当然だろ?それに、俺は洗脳する能力を持っている。お前達に故郷を奇襲させてもいいんだぞ?」
後半はハッタリだ。そんな能力は持っていないし、持っていてもそんな事はしない。
「…なりたくてなった訳じゃないさ」
「…頭…」
観念したみたいだ。どうして海賊をしていたのか話してくれた。
この人達はこの国の近くの地図には載っていない島に住んでいるそうだ。魚以外取れるものがなく海賊をしていたらしい。しかもどこの国にも属していないので、貿易とかもできないようだ。
「人の命は奪ってないようだし、俺に任せてくれないか?」
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冒険者ギルドに戻ると、受付でギルドマスターに報告した。
「…無事に戻ってきたようだな」
「すぐに依頼完了の手続きをしてくれ」
「珍しく急いでるな」
「後で説明するから早くしてくれ」
冒険者ギルドで依頼完了の手続きをし終え、城へと向かった。姫様と話をする為である。
アポが無いから無理かなって思っていたが、入り口で貴族の証を見せて『姫様に謁見したい』って言ったら、謁見の間へと通された。
「わざわざ会いに来るとは、何のようじゃ」
姫様は、少し迷惑そうな感じでやってきて話しを始めた。
「海賊達の処遇について申し上げたい事があり、伺いました」
「そちの事じゃ。何か考えがあるのじゃろう。許可しよう」
「ありがとうございます」
俺が計画した事を姫様に伝えた。
「父上には話を通しておくから問題ない。しかし、そちは島民を説得できるのか?」
「海賊の頭と共に島へ行かせていただければ…」
「分かった。条件付きで許可しよう」
条件は今日中に海賊の頭と共に戻ってくる事。条件を満たさなかった場合、海賊は全員処刑するそうだ。




