1章 ジャポネーグ国12 -ハオウジュさん-
考えが甘かった。普通に考えれば隠し通路の出口であるこの入り江を、探しに来ない訳がなかった。
クジャク姉と、クジャク姉の父で国主の腹心の部下、ハオウジュ・センニンショウと出会ってしまった。彼は昔、1人で100人を相手にして勝ったという噂話を聞いた事がある。
そんな彼はこの国で2番目に強いと、俺は思っている。因みに1番はこの世界の父親かな、色々かなわなかったし。
ルーシェはハオウジュさんを見るなり怯えはじめた。
「これはどういう事だ?セッテ」
「見ての通り曲者を逃がそうと思ってる」
この人相手に言い訳しても意味がない。
「父上、こいつにも何か事情がある筈です」
「国主の子息を”こいつ”呼ばわりするなと日ごろから言っておるのに、このバカ娘が!」
「父上、こいつが今の呼び方で良いと言っておりました」
「また”こいつ”と言いおって…。少しは女らしくしたらどうだ?」
「お言葉ですが父上…。俺を男のように育てたのはあんただろうが!」
クジャク姉はハオウジュ相手に刀を抜いた。
よし、親子喧嘩してる今のうちに逃げるとしよう。
俺はルーシェに「今の内に逃げるぞ」と目で合図をした。俺たちは小舟が置いてある場所めがけてダッシュした。
「逃げられると思ったか?」
気がつくと目の前に、ハオウジュさんがいた。
ハオウジュさんと対峙していたクジャク姉は倒れている。おそらく気絶させられたのだろう。一応【状態確認】で確認しとくか。
さっきのが芝居で、気絶したふりをして襲われるという最悪の事態は避けたいし。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クジャク・センニンショウ
Level 25 状態:気絶
体力:72/315
魔力:10/10
攻撃力:316
防御力:87
素早さ:83
精神力:60
能力:解析不可能【解析不可能】Level:?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気絶してるのを確認できた。あとはハオウジュさんをどうにかしないと…。
「逃げ切れなさそうなんで、捕まる前に一つ聞いときたい事があります」
「まぁいいだろ。それでなんだ?」
「どうしてこの入り江に?」
「ああ、そんな事か。城内を探してないとなると、偶然この場に辿り着いたの可能性があると思ってな。俺はここに着た。このバカ娘は、俺がここに着いたら既にいて、何故ここにいるのか聞いたら、『あいつは必ずここに来る。俺からは逃げられない』とかわけの分からない事を言ってたな」
ハオウジュさんの情報を見て打開策を考えようと話をして時間稼ぎをしたが、意味がなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ハオウジュ・センニンショウ
Level 85 状態:普通
体力:765/876
魔力:39/39
攻撃力:961
防御力:346
素早さ:315
精神力:283
能力:無し
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『能力:無し』と書いてある。
この人の能力は消した訳ではない。元々、”能力:無し”なのだ。噂話は本当だったのかもしれない。
能力値的に今の俺達には勝てないだろう… 。
あとハオウジュさんが言ってた事が本当なら、どこに逃げてもクジャク姉は、俺のことをどこまでも追ってきそう…。
俺からしたら、ハオウジュさんよりクジャク姉の方が怖い。