1章 ジャポネーグ国10 -出会い-
「曲者、出てきて話をしないか?」
「………」
俺とクジャク姉がやりとりをしている間、【状態確認】をずっと使用していたが、曲者は移動せずにその場に留まっていた。今もこの部屋の床下にいるのだが、返事はない。
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クリス・アンセマム
Level16 状態:疲労
体力:40/100
魔力:0/1123
攻撃力:55
防御力:82
素早さ:84
精神力:300
能力:分析不可能【分析不可能】Level:?
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本気を出したら、この国で俺はかなり強い方だと思う。そうは言っても、こいつが万全な状態だったら、まず勝てないだろう。
勝てない理由としては魔法だ。
俺はこの世界でまだ魔法を見たことがないから、魔法を撃たれたら対処できない。魔力の値がかなり高いという事は、おそらく戦闘では魔法主体でなのだろう。
クジャク姉の能力もそうだったのだが、《分析不可能》の能力に対して、【能力破壊】が何故か効かない。わからない上に破壊不可能というのは脅威だ。
できるだけ話し合いで解決したいと思う。
俺は人を殺す事や拷問なんてのは嫌いだ。だけど、自分の身を守るためなら話は別だ。話し合いに応じてくれればいいが…。
逃げられると面倒なので、とりあえ引きずり出し、一時的に拘束する事にした。音がならないように床に穴を開け、曲者を掴んで引きずり出した。
「きゃっ」
俺は曲者の口を手で塞いだ。
「とりあえず静かにして。返事もないし出て来なかったから、こうするしかなかった。あと悪いけど、拘束させてもらうね。逃げられても困るし」
縄で拘束しながら、曲者を観察する。ボサボサの金色の髪をした女性で、服はボロボロだった。年は同じぐらいで、スタイルは良い。そんな事を思い観察しながら手足を縄で拘束した。
「ジロジロ見るな変態!」
「ジロジロ見て悪かった」
「わかればいいのよ。それで私と何を話すつもり?」
「この城に侵入した目的はなんだ?」
「目的はないわ。ただ逃げてきたら迷い込んだだけよ」
「誰から?」
「商人からよ」
この国は建国以来、他の国とは交通・交易を禁じている。しかも人を売り買いする輩がいるとは…。
この娘は大方、拉致されて売られたのだろう。見たところ彼女は極悪人ではなさそうだし、被害者のようだ。とりあえずこの国から逃がす事にしよう。
「それで私をどうするつもり?慰み者にでもするのかしら?」
「どうにかしてこの国から逃す」
「やっぱり慰み者にす……え?今なんて言った?」
「この国から逃すって言った」
「あんた頭おかしいんじゃないの?」
命を助けようとして、頭がおかしい人呼ばわりされるとは思わなかった。