3章 錬金国家アルケミー54 -23日目・紹介状-
準優勝した事で俺たちのパーティーは、この国の城に呼ばれた。王から話があるらしい。
ー謁見の間ー
待っていると、王ではなく姫が出て来た。
「そちは確か…ハナトリ男爵だったかの。そうか、そちのパーティーが…。さすが冒険者ギルドマスター・トワノが見込んだだけの事はある」
「男爵⁉︎」
ルーシェが驚いて声を発していたが、気にせずに俺は言った。
「王様、自ら話があると聞いていましたが…」
「父は観戦し終えた後、体調を崩してな。
まぁ、今はその事はどうでも良い。まずはじめに、嘘をついてまで棄権した事は不問とする。命は大事じゃからの」
冒険者ギルドの事とはいえど、国の代表だからね。何かしらの罰則があると思ってこの場に来たけど、不問にしてもらえたようだ。
「準優勝じゃったが、健闘をした褒美を与えてよう。この国はいつも初戦で負けていたからの。そうじゃな…」
姫はそう言いながら考えてから言った。
「ギルドマスター・トワノから聞いたのじゃが、そちは不思議な道具袋と似たような魔法が使えると聞いたが誠か?」
「はい。今何かを出せと言われてもこの場で出して良いものなのか、と考えなければならないものしか入っておりませんので、使用は控えさせていただきます」
「なるほど。ではその言葉を信用し、そちが商売できるように、商人ギルドへの紹介状を書こう。良いな?」
「はい、姫様の仰せのままに」
「ハナトリ男爵以外には別の報酬を用意しておく。何か質問はあるかの?」
「今回の事と関係のない事を質問させて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
「申してみよ」
「騎士になる試験はいつあるのでしょうか?」
「あんた騎士になるの?」
「俺じゃなくて…」
ルーシェの言葉に反応して、ワカとシュンペイの方を見た。
「昨日3人で話した結果、2人はここに残って騎士になるって決まった。姫様、お待たせしました」
「話しは終わったかの。今は冒険者を採用する試験をやっておらん。ギルドマスター・トワノから苦情があってな…。採用される可能性はかなり低いが、国民が受ける事のできる試験を受けるといい。確か1週間後から募集を始めるはずじゃ。法的に他国出身の者でも、冒険者ギルドに所属していれば国民としての権利があるはずじゃ。試験自体は2週間後だったかの」
彼らが騎士になると自ら言わなければ、俺は、新しく能力をどうにか作り出して、2人の思考を操作しただろう。この先の出来事に2人を巻き込まないように…
ー城の出入り口ー
「こちらが試験の申込書、こちらは商人ギルドへ紹介状にございます」
と姫の御付きの執事が、試験の申込書2枚と、中に書類が入っていて封のしてある封筒を俺に渡した。
「お気遣いありがとうございます。姫様にもそうお伝え下さい」
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城を出て俺達はギルドへと戻った。この後の予定はなく、各自自由行動にした。
俺はすぐに試験について調べてみた。
どうやら、筆記試験と実技試験、能力測定なるものを行うらしい。
実技試験対策は、次の日からルーシェとクジャク姉を相手に実技試験の模擬試験をすれば問題ないだろう。あの2人より強い試験官なんてそうそういないだろうしな。
能力測定をされても、騎士の平均値ぐらいの能力値はある。それに強力な能力も有しているから問題ないだろう。
ただ筆記試験の対策はどうしようか…
これだけが心配だ。




