1章 ジャポネーグ国9 -護衛という名の…-
俺は曲者と聞いて、【状態確認】を発動させた。とりあえず、人名・状態・能力値・能力が分かるように。こうする事で俺の能力の範囲に入った人物が表示される。
曲者はすぐに見つかった。【状態確認】を使った瞬間、この部屋の床下に見知らぬ人物がいる事が分かったからだ。
相当な極悪人じゃなきゃ、助けようと思っている。見殺しにする気は今の所ない。
だけどこの状態は非常にまずいな…。放っておけば直ぐにとは言わないが、確実に死んでしまうだろう。
そう思い床下に呼びかけようとした時、【状態確認】のおかげで、この部屋に猛スピードで近いてくる人物がいるのに気がついた。とりあえず呼びかけるのをやめた。
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クジャク・センニンショウ
Level30 状態:普通
体力:539/539
魔力:11/11
攻撃力:496
防御力:168
素早さ:113
精神力:88
能力:解析不可能【解析不可能】Level:?
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クジャク姉だ。
ここに来る事は予想してたけど、思っていたより速く来たな…。
「曲者がここに来なかったか!?」
大声でこう言いながら、ふすまを勢いよく開けて入ってきた。
「クジャク姉、ふすまを勢いよく開けるのはやめて、びっくりするから」
と言いながら、彼女を部屋に入れふすまを閉めた。
とりあえず、彼女にはこの部屋から早く出て行ってもらわないとな。
「すまん…。だが、お前は唯一の後継者だ。命を狙われるやもしれん」
「クジャク姉は心配しすぎだよ。俺がこの城の中でそこそこ強いのは、クジャク姉も知ってるだろ?」
「まぁそうだが…」
一応この城の中では、俺はそこそこ強いとう事にしてある。そこそこの理由は、強すぎると怖がられたり警戒されたりするし、弱すぎると舐められてしまうからである。
「やはり心配だ。俺の方がお前より強い!だからお前の護衛を…」
「お 断 り し ま す!」
「何故だ⁉︎」
「厠、風呂、寝室の中というか布団の中に入ってきて護衛するのはどうかと思う」
「一緒に行動しなければ守れないであろう!お前は一度俺のせいで…」
「理屈は間違ってはいないけど、色々間違えてるから!あとあれはクジャク姉は悪くないから」
彼女が俺の護衛を命じられた初日に、俺は大怪我を負った。それ以来その事を気にしてなのか、厠だろうが、風呂だろうが、布団だろうが、24時間俺の側にいようとする。
これだけなら、俺も『こいつは忠臣の中の忠臣』とか『仕事熱心なんだな』って思った。
だけど、厠に一緒に入って来て、俺の雉を撃つところを凝視してきたり、風呂では服を脱いで入って来た。
布団の中では、彼女は何故か呼吸が荒くなっていた。
護衛というよりストーカーだよね、ここまでくると…。
彼女の事は嫌いではないが、流石に身の危険を感じたので、10日ほどで護衛の任を解いてもらった。
「と、とにかく、護衛はいらないから曲者を探してきて。お願いじゃなくて、これ命令だからね」
「そうか…わかった…。命令なら仕方ないな…」
彼女はがっかりしながらふすまを開けて出て行った。
俺は彼女が遠ざかっているのをしっかりと【状態確認】で確認して、開けっ放しになっているふすまを閉めた。
そして、大きすぎず小さすぎずの声の大きさで床下に向かってこう言った。
「曲者、出てきて話をしないか?」




