第五話:【はじめての冒険の前の夜】
「ふぅ~・・。なんとか今日のお仕事終わったかな。」
電気をつけてはいたが調合の合成光のチェックをするために薄暗い部屋に調整していた私は手に持っている最後の錬金ポーションを作り終え部屋から出る。
あたりは既に暗くなっている。どうやらもう夜のようだ。
作業し始めたときはまだ明るかったからもう4時間は経過しているのかな?夕食の準備しないと!
私は調合室のドアを開けっぱなしにして、調合室の中のキッチンに行く。最初にきたときには本で埋もれていたけれどいざ片付けてみたらこの部屋はかなり広かった。
キッチンと大きな机と調合材料はあるし、本棚をどかしたらその後ろには扉があったけれどその先はシャワーとトイレだった。今まで塞いであったってことはおじいちゃんは一体どこで・・・。
いや、考えるのやめておこう。まさかね・・。
窓もないので常に解錠してあるドアを開けないと煙もこもるし、もう少しお金貯めたら改築して窓をつけてもらうのもいいかもしれない。じゃないといちいちめんどくさいもんね。
晩御飯の用意を終え、じゃがいもと干し野菜のスープとタコとイカの香草焼きを食べながら明日の予定を考える。
「そろそろ気付け薬の材料がなくなるわね・・。」
ここに来て、初めて学んだ気付け薬ポーション。
神経毒や麻痺等によって気絶状態になった人を覚醒させ、復活させるポーションだ。
冒険者が多いこの街では回復のポーションと同じように購入されていく方が多い。この街の周囲にはうごめく花と呼ばれる花の形をモンスターが群生している為だ。
その花が噴出する液体にかかると、そのかかった部位が麻痺し、動けなくなってしまう。しかも生命力と繁殖力が高い為、いくら駆逐しても数日後には生えてしまうのだ。
だけれども、このモンスターこそ実は気付け薬の材料となるのだ。花びらをむしり取り、ネギとニンニクを調合する事で気付け薬の完成だ。
ネギとニンニクは近くの市場で買えるが、もちろんうごめく花は店頭には並んではいない。錬金術師以外は使う用途などないからだ。
回復ポーションを作るのは市場で手に入る為、材料には困らなかったが、今回気付け薬を作り販売した事によって、祖父が蓄積していた材料がほぼ無くなってしまったのである。
「となると・・あしたは冒険者ギルドにクエスト募集をかけてこようかな。」
商会ギルドは商人の為にある。冒険者ギルドは冒険をする為にあるギルドだ。
通行手形にもなる冒険者証を手にすることができるギルドである。
証をもっていると各大都市は手形を見せればすぐに通過できるが、持っていないと並んで待たないと門番に通してもらえないのだ。もちろん商人にもある商人証は見せても、何を販売にしにきたか、何を目的に来たのか説明しないと入ることができない。
また、ギルドから依頼されたクエストを受注し、報酬を受け取ることができる。
主にモンスターの討伐を依頼される事の多い冒険者ギルドは多少なりともモンスターを倒せないとそもそも入会できないのだ。
だからこそ私みたいなモンスターと戦えない人が冒険者ギルドに依頼をするのだ。
この街のすぐ近くのモンスター退治ならそこまで時間を待つことなく受けてくれる人が要るはずだ。
ノブレスはそう思いながら晩御飯を終え、床につくことにした。