卓球場入室
「お邪魔しまーす」
太陽達3人が恐る恐る入室すると、目の前には卓球台が4台、横一列に並んでおり、こちら側には新入部員と思われる者達が10人程集まっていた。
そして、台の向こう側には相変わらず固い表情をしている卓球部主将の良示と、恐らく同じく2年生であろう茶髪をオールバックにしてカチューシャで止めている身長170㎝程の細長い男が隣りに笑顔を浮かべて立っていた。
「さて、新入生諸君。まずは、卓球部へ来てくれた事を感謝する」
良示は表情を変えずに頭を少しだけ下げて、新入生達へお礼の言葉を伝えた。
「しかし、我が卓球部は台が4台しか無く、はっきり言って全員を入部させる事は不可能だ。だから、今から入部テストを開始する」
「テ、テストだってーー!?」
太陽ら良示の言葉を聞き、思わず部室内に響く大声をあげた。
「む、お前も入部希望か?」
周囲もざわついていたが、良示は大声をあげた太陽の存在に気付き、恐らく入学式前の事を思い出しているのであろう明らかに不満そうに顔をしかめていた。
「あ、ど、どうも……」
太陽は良示に対して、まだビビっており腰を低くして軽く会釈した。
「入部テストって一体、何をするんですか?」
そんな太陽を余所に眼鏡をかけたおかっぱ頭の少年が良示へ質問をした。
「入部テストは俺と1セットマッチの試合を行い、1点取ることが出来れば合格だ」
この良示の言葉に太陽は顔を青ざめた。
無理もない。太陽は、まだ卓球経験はおろか、ラケットすら握った事も無い初心者中の初心者なのだ。
そんな太陽が卓球部主将から、たとえ1点と言えど、奪取は難易度が高過ぎる。
太陽は卓球部入部の時点で絶体絶命の状況を迎えていた。