入学式
「……」
入学式の最中、太陽はずっと暗い表情のまま校長や来賓の方々の話しを聞いていた。
これから先、毎日、あの堅物に叱られながら部活をするのかと考えると気持ちが沈んでしまって仕方ないのだ。
もう、この際、他の優しそうな先輩が居る部活へ入ってしまおうか。太陽の脳裏には卓球部入部自体を取りやめようという考えすら浮かんでいた。
しかし、青空のお家で見た世界卓球の熱気は未だに忘れられない。
一球一球決まる度に湧き上がる何万人という観客の歓声と拍手。そして、全てを出し切った両者の試合が終わった後の清々しい笑顔。
そうだ。俺はあの場に立つために卓球を始めるのだ。この程度で挑戦を辞めるわけにはいかない。
太陽の胸の中で再び燃え上がる卓球に対する熱意。
太陽は決心した。俺は卓球部に入部し、あの堅物にも勝って、夢を実現させると。
「あー、そこの新入生。着席しなさい」
「へっ?」
突然、アナウンスで注意され、太陽は我に返り、辺りを見渡すと自身に集められてる視線。
太陽は気持ちが入り過ぎて、いつの間にかパイプ椅子から立ち上がっていたのだ。
「ーーっ!」
太陽は恥ずかしさから赤面し、素速く着席した。普段は目立ちたがり屋な彼だが、自身が狙って行った行動で無ければ恥ずかしいらしい。
「……馬鹿」
その様子を見ていた青空は溜め息をついて苦言を吐き、叶は口元を手で塞ぎ、笑いを抑えていた。