幼馴染み3人
「もう良いかーい?」
「もう良いよー!」
3月初旬、まだ少々の肌寒さを残しているが冬の終わりを迎えようとしている季節、公園にてかくれんぼをする子供たちの元気な声が響いていた。
「よーし!探すぞー!」
公園内の中央に設置されている大木にて右腕を目の前に置き、目隠しをしていた肩までかかった金髪をポニーテールで結っている女の子が自身を鼓舞して、公園内に隠れている2人を探し始める。
2人を探すこと約3分、入口近くの草むら周辺を探索してる際に何かが動く音が聞こえた。
「むー?」
女の子は目を細めて草むらを凝視する。
すると、草むらの茂みから少しはねた黒髮が飛び出しているのが目に映った。
女の子はそれを見て、満面の笑みを浮かべて大きく息を吸い、声を発した。
「太陽君!見ーつけた!」
その刹那、茂みから放たれる3発の打ち上げ花火。
「!?」
女の子は目の前の光景に驚きを隠せずに思わず尻餅を着いた。
「はーっはっは!」
すると、馬鹿でかい笑い声が響き渡り、茂みから1人の男の子が飛び出してきた。
「良くこの藍浦 太陽を見つけたな! 褒めてやる!」
ショート黒髪の先っちょが少しはねてお り、大きな目が特徴的な少し肌黒の男の子、太陽は鬼に見つかったくせに勝ち誇ったような笑いを浮かべていた。
「う、うわーん!」
太陽が目立った登場をした結果、女の子は驚きのあまり大きな声をあげて泣き始めてしまった。
「あ、あれ?」
突然の女の子の涙に戸惑う太陽。
「馬鹿」
その瞬間、太陽は頭の後ろを強めの力で叩かれた。
「痛って! 何するんだよ!? 青空!」
太陽は叩かれた頭が痛かったようでそこを抑えながら、耳にかかるほどのショートの黒髪で白い肌の黒縁眼鏡をかけた美少女ーー我妻 青空の方を振り向いて文句を垂れた。
「叶ちゃんは驚いて泣いた。太陽が悪い。あと、草むらで花火を打ち上げるのは危険」
青空は淡々と太陽に注意すると、尻餅を着いて泣き続けている大橋 叶の元に歩み寄った。
「叶ちゃん、大丈夫?」
「……うん。大丈夫。ありがと」
叶は青空から差し出された手を受け取り、少し落ち着きを取り戻した様子で立ち上がった。
「……へん! あれぐらいで泣くもんかね!」
「太陽」
太陽は気を悪くしながらも自分の非を素直に認めなかったが、被せ気味に自身の名前を呼んだ青空から鋭い眼差しで睨まれ、身体を萎縮させた。
「……す、すまなかったな。叶」
「ううん! 良いよ!」
太陽はそっぽを向き、ぶっきら ぼうに謝ったものの、叶は納得したのか少し顔を赤らめ満面の笑みを浮かべて太陽を許した。
「あ、僕、そろそろ帰らなきゃ」
青空は公園内の入口付近に設置されている高い時計台の時刻が14時30分を示しているのを確認すると、思い出したように呟いた。
「青空ちゃん、今日も卓球の練習?」
「うん。卓球の練習は5時からなんだけど、その前に見ときたい物があって」
「……なあ、青空。卓球って面白いのか?」
太陽は叶と青空の会話を聞いていて、少し疑問に思ったのか青空へ卓球の面白さを尋ねた。
「うん。面白いよ」
「ふーん。あんなチマチマした球を打つ、地味なスポーツが楽しいのかねぇ?」
この太陽の無神経な一言に青空の眉が少し動いた。
「もしかして、卓球を馬鹿にしてる?」
青空は表情こそ変わってはいないが明らかに不機嫌な様子。
「い、いや。俺の性には合わないかなーって」
太陽は青空の機嫌を損ねた事を感じ取り、必死に弁解した。
「良いよ。そしたら、今から2人共、僕の部屋に来て」
青空は太陽の弁解を聞いても機嫌が直らなかったようで背中を見せながら2人を家に誘った。
「卓球の面白さを教えてあげる」
青空はそれだけ呟くと足早に歩き始めてしまった。
「あ、待ってよ! 青空ちゃん!」
その後を追いかけ始める叶。
「ええ……ったく!」
太陽も青空の強引な態度に少し苛立ちを覚えながらもその後を追いかけるのであった。