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サルノテ  作者: アリアリア
第一冊 『朝陽ちゃんの物語』
9/95

お菓子とお化け

 午後2時57分、遅めのお昼ごはんに手を伸ばす、しかしここは夢の国、ごはんを食べるなんてもったいない、ここで評判なのがパンケーキ、三段重ねのスフレの上に、コミカルなキャラクターのイラストとたっぷりたっぷりの生クリーム、紅茶風味とシナモンのりんごのほのかな酸味が、口の中をさっぱりしてくれる。


 妹は妹でフルーツたっぷりのケーキタイプ、ベリーにりんごにリンゴベリー、甘くて甘くて酸っぱくて、きっと爽やかふんわり甘いんだろう、ちょっと食べたくなってきちゃった。


 目線を上げると妹も私のパンケーキをじっと見てる、しょうがないなぁ半分こ、酸っぱくて酸っぱくて甘くって想像以上においしくて、思わず顔もほころんで、妹の顔もほころんで、思わず二人で笑い合う、仲良く仲良く笑い合う。

 なんて楽しい時間なんでしょう、ああ、本当に早く終わればいいのになぁ!


 午後4時57分、遊園地に来たならば必ずこれに挑戦しないと、お化け屋敷と言ったら遊園地、遊園地と言ったらお化け屋敷!


 絶叫系は苦手だけれど、私はこういうのは得意なんです、暗い暗い廃病院、二人で仲良く進みます、お化けが出てくる? 当たり前! 怖くなんてありません。ガオーとゾンビが出てきても、ツンっと軽くあしらえます、だから妹ちゃん、私にちゃんとついてくるのよ、離れちゃダメよ、離れちゃダメよ……。


 あ、こら待って! ドンドン先に行かないで! お化け屋敷はゆっくりそろそろ行くものよ! ゆっくりゆっくり行くものよ!!

 なんで笑うのよ、夕陽ちゃん、怖くなんて全然ないわ。ずっとずっと恐ろしい物を見てきたもの、車に轢かれて潰れた頭も、電車に轢かれてバラバラも、飛び散る腸は咲き誇るように華やかで!


 こんなチープでギークな見世物なんかよりずっとずっと、恐ろしいもの。

だから私は全然平気、夕陽ちゃんは平気なふりなんてしないでいいわ、もっともっと私を頼りなさい。


 そうそう、どんどん勝手に進まないでゆっくりゆっくり進むのよ、しょうがないわね、そんなに怖いなら仕方ないわ、私が腕を貸してあげる。照れなくていいわ、しっかりしがみついてあげるから、これならもう怖くないでしょう。


 だから先に進みなさい、安心しなさい私は怖くないから、怖いお化けが出てきてもちゃんと追い返してあげるから。だから前に飛び出してきたお化けは貴方に任せるわ、いつだって殿のほうが危険なの、私のほうが大変なの、貴方の後ろに張り付いているのはそう、夕陽ちゃんが勇気を出して前にすすめるようにと願ったからよ。どんどん前に進みなさい、今だけ夕陽ちゃんの味方だからね!


 あ、どんどん前に進んじゃだめよ! 進んでいいって言ったけれど、私より早く進んじゃダメよ! ちゃんと私に合わせなさい!

 いい、ちゃんと私に合わせるのよ!? 合わせないとダメなんだからね、これは貴方のためなんだから!!


 ああ、良かった。安心していいわよ夕陽ちゃん。出口よ出口、やっと明るいところへ出たわ。よかったよかったこれで大丈夫よ。よし、後は私に任せなさい!

 出口まであと少し、はやくはやくはやくはやく、ああ、光って素晴らしい! そうしてそうして進む私の手が後ろの夕陽ちゃんに掴まれる、まったくもうこんな所まで来てまだ怖いの? 


しょうがないわね、まったくもう私は後ろを振り返って、後ろには2,3mほど離れた夕陽ちゃんがニコニコ私に手をふっていて……。


ならならこの手はダレの手でしょう、まさかまさかそんなのないわ、私の視界のほんの端、何かが写っている気がするけれど、そんなのきっと気のせいよ、気のせいだからこっちを見ないで、近づくな!!!


 絹を裂くような少女の悲鳴が響き渡る、それは一体誰の声? 私じゃないわよ、絶対よ!


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